Bookso beautiful yet terrific.

 世界中の夢の支配者騒動(仮)が無事とは言い難いがなんとか解決したその後。イデアは食堂で昼食を食べながら目の前の席で繰り広げられるバカップルを死んだ目で見ていた。

「ねえねえ監督生さん!ご飯、おいしい?」

「うん!すっごくおいしいよ。オルトくんも食べる?」

「わーい!嬉しいなあ!ちょうだい」

食堂の椅子にオルトが座り、その膝の上に彼女が座って昼食を食べている。後ろから彼女のお腹に両手を回して抱きしめるオルトに、彼女が首だけを動かして後ろにいるオルトに顔を向ける。そのオルトの口を覆うマスク型のギアはなく、かわいい口元が曝け出されていた。そして、彼女は何の迷いもなくオルトの唇にちゅっと音を立てて自分の唇を重ねていく。

「どう?おいしい?」

「うん!君からのキスはすっごくおいしいよ」

「もう。オルトくんったら!」

「次は僕から行くね!」

「えー。恥ずかしいよ」

「ほーら!目を瞑って!それとも、君の唇が僕の唇に食べられるところが見たいの?」

「オルトくんの意地悪」

再び、目の前で唇が重なる。イデアはエナジードリンクの入ったグラスを掴みストローで勢いよく吸った。

「何故だろう。オルトくんにキスをされると、私の身体がオルトくんに食べられちゃう錯覚を感じるの」

「君の本能が僕を欲しがってるということもかもね。ほら、男は狼とも言うしさ。僕も、君限定で狼になっちゃうもん。がおー!食べちゃうぞー!」

「きゃあ!オルトくんのえっち!」

食事そっちのけでいちゃくつく2人に、たまたまその場に居合わせアズールの眼鏡が割れた。アズールは眼鏡が割れたまま何も言わず足早にその場から立ち去って行く。
 彼女の親友や親分もバカップルに近づかない中、1人その場に現れた人物がいた。

「ふむ。やはり、妬けるものがあるな」

イデアの隣の席に許可もなく座ってきたマレウスの姿に、イデアはツッコミを入れる気力すらない。

「小さいシュラウドと人の子が恋仲なのは微笑ましいが。人の子は僕の友だというのに。複雑な気持ちとはこれを言うのだろう」

しみじみと言ってのけるマレウスをイデアはつい盗み見る。いっそ、人の子は僕の友だ!とこの2人の間に割って入ってほしいとイデアは思う。
 ふと、彼女が食堂に設置してある時計を確認して小さく声を上げる。それから慌てて残りの食事を平らげてオルトの膝の上から降りた。

「ごめんなさい、オルトくん。私、日直だから早めに行って次の授業の準備しないと」

「そんなあ」

あからさまに、しゅーんとオルトが項垂れる。そんなオルトの細い首に彼女が両手を回して抱きしめた。

「私もオルトくんとまだ一緒にいたい」

「僕もだよ」

オルトの両手も彼女の細い背中に回る。椅子に座ったままのオルトの顔がオルトに合わせて屈んだ彼女の胸にめり込むように埋もれている。それをたまたま側をカリムと一緒に通りがかったジャミルが二度見した。

「授業終わったら、私に会いに来てくれる?」

「勿論!それじゃあ、行ってきますのキスしよう」

「うん」

周りなんぞお構いなしに2人で目を閉じてちゅーっとやる様に、いよいよイデアがキレてその場から勢いよく立ち上がった。

「公衆の面前でいいかげんにしてくれますう!?こちとらずーっと食事中に君達のいちゃいちゃを見せつけられてメンタル削られてるんですけどお!!!」

「僕のメンタルは削られてないぞ。妬きもするが。僕は2人を祝福しよう」

「マレウス氏は黙ってて!!!!!」

イデアの説教を気にせずいちゃついたままのオルトと彼女に、その2人に指を鳴らすたびに花をぽんぽんと贈るマレウス。そんな彼等を遠くから眺める彼女の親友と親分は溜息を吐くのだった。
 平和だからまあいいか、と。

2023.05.26