
Bookso beautiful yet terrific.
「困りましたね。これでは士官学校へ戻れそうにありません」
小屋の窓から外を眺めるエンフィールドは大層困った様子だった。
任務帰りに、土砂降りに見舞われた私とエンフィールドは山奥にある古びた小屋へ勝手にお邪魔することにした。おかげさまで雨は凌げるけれど、だいぶ使われていないらしく所々床に穴が空いている。身動きは取りづらいが、贅沢は言ってられない現状だ。
私はエンフィールドから目を逸らし、今にも壊れそうな長椅子に座った。すると、エンフィールドも窓から離れて私の隣の席に座った。
「戦闘続きでしたので、お疲れでしょう。今のうちに、治療しておきましょうか」
「同行した貴銃士がエンフィールドしかいなかったから、薔薇の傷口は何ともないよ。だから、大丈夫。それよりも、エンフィールドの方が疲れてるでしょう?少しでもいいから休んで」
そう言いながらエンフィールドの方を見ると、エンフィールドの両手が私の身体を引き寄せて両腕で抱きしめたところだった。突然のぬくもりに私は目を見開くも、すぐに状況を理解して両手でエンフィールドの胸板を押す。だけど、エンフィールドの身体はびくとも動かず、私を抱きしめる腕にさらに力を加えるだけだった。
「愛しています」
噛み締めるように囁かれた言葉に私の心臓がドッと鳴る。そんな私の反応を知ってか知らずか、エンフィールドは構わずさらに続けた。
「早く雨が止んで士官学校へ戻らなければ。でないと、あなたと2人きりのままなんぞ、耐えられません」
少しだけ私と距離を取ったエンフィールドが私を見つめる。その瞳には、余裕がなかった。
「僕は、あなたが欲しい」
ドッ、ドッ、ドッ。心臓の音がこんなに大きな音を発するのは初めてだった。私は、ゆっくりと目を閉じる。その瞬間、エンフィールドの喉が大袈裟なくらい音を鳴らした。
「後悔しても、知りませんから」
紳士とは程遠い仕種で、エンフィールドが私の唇をがぶりと噛みついた。
2023.07.02