
Bookso beautiful yet terrific.
昼食を終えて、私は食後のデザートを買いにMr.Sのミステリーショップへ向かった。何故なら今日は、期間限定ブルーベリーソフトクリームが販売される日なので。期間限定で、尚且つ曜日は不定期で販売するため、ブルーベリーソフトクリームの情報が耳に入った日のミステリーショップは凄く混む。とっても人気商品なのは私も知っているので、買えたらラッキー程度に思っていた私はミステリーショップに着いた瞬間びっくりした。
すっかり混雑しているだろうミステリーショップはまさかのがらがらだった。売れ切れちゃった?それとも今日は買いに来る生徒が少ないだけ?と疑問を抱きながら私はミステリーショップの戸を開ける。すると、そこには全員手にブルーベリーソフトクリームを持ったディアソムニア寮生の友人達がいた。
「人の子。1人か?」
真っ先に私に声をかけてくれたツノ太郎に私はうんと首を縦に振る。
「ああ、うん。ブルーベリーソフトクリームを食べようと思って」
「僕と同じものだな」
そう言って、ツノ太郎が持っていたブルーベリーソフトクリームを私に見える位置で掲げてみせた。ツノ太郎の表情は誰が見ても嬉しそうに緩んでいる。それからツノ太郎はレジに立つサムさんに向かって声をかけた。
「人の子に、同じものを」
「セーンキュッ!!!」
ツノ太郎の言葉にいつもの調子で答えたサムさんはパパッとコーンの上にブルーベリー味のソフトクリームを巻き、そこにブルーベリーソースを飾る。
「はい!小鬼ちゃん!」
「あ。ありがとうございます」
サムさんにブルーベリーソフトクリームを渡されて私が受け取るのをしっかりと見届けたツノ太郎は、ブルーベリーソフトクリームを持っていない方の手で私の背中を軽く叩いた。
「外の椅子に座って食べよう」
「待って!お会計してくるから」
「その必要はない」
私の言葉に間髪入れずに答えたツノ太郎は自身とはほんの少しだけ離れた距離にいる面々に顔を向ける。
そこにはニンマリと笑うリリア先輩と、ブルーベリーソフトクリームを持ったままうつらうつらしているシルバー先輩と、今にもコーンを握り潰してしまいそうなほどぐぬぬと唸るセベクがいた。
「これはマレウスの奢りじゃ」
「いや、でも、」
「のう?マレウス。かわいい友と一緒に早く食べるがよい」
「だけど、」
リリア先輩に私が戸惑いながら返すと、ふと、ツノ太郎が私の顔を覗き込んだ。
「僕からの贈り物は受け取れないのか?」
あからさまに、しゅーんとされるので私はますます困ってしまう。
すると、大きな咳払いが離れたところから聞こえてきた。
「人間!!!マレウス様のご厚意を断るなんぞ無礼がすぎるぞ!!!というか、マレウス様の奢りをいただくとはなんと図々しいんだ!!!!!」
「それ。結局のところ、私はどうすればいいの?」
きゃんきゃんと騒ぐセベクに対して私は苦笑いをするしかない。それを察したリリア先輩はにんまりと悪戯を思いついた表情で笑った。
「そうじゃ。皆で食べよう。外のテラス席は確か5人掛けだったぞ。彼女の両隣にはマレウスとセベクが座ればいい。名案だと思わぬか?シルバー?」
リリア先輩が隣にいるシルバー先輩に同意を求めるが、先程まで夢の中に行きかけたシルバー先輩は何のことやらと首を傾げている。
そんなこんなで、紆余曲折あったがミステリーショップの前に設置したテラス席に私達5人は座り、例のブルーベリーソフトクリームを食べることになった。丸いテーブル席に、私の両隣にはツノ太郎とセベクが、私の向かい側にはリリア先輩とシルバー先輩がそれぞれ座っている。
「おお!そうじゃった!先程から思っておったのだが。おぬし、頬にソフトクリームがついておるぞ」
談笑しながらの食事中に、ふと、リリア先輩が前の席から私に手を伸ばしてきたかと思ったら私の唇の左端を指でなぞり、そのままぺろりと自身の指を舐める。それに気づいたシルバー先輩も、固まる私なんぞ気にせず同じくテーブル越しに私に手を伸ばしてきた。
「こっちにもついてる」
シルバー先輩の指が私の下唇をなぞり、その自身の指をぺろりと舐めてしまう。
「またついたら俺が指で拭ってやろう。だから、気にせず食べるといい」
そう言いながら僅かにシルバー先輩の頬が緩む。リリア先輩はシルバー先輩の顔をちらりと見てから私に向き直ってくふふとかわいらしく笑った。
「無論。わしも拭うぞ」
リリア先輩とシルバー先輩にされたことを理解した私は当然ボンッと顔が赤く染まった。2人とも、他意は無いのだろう。だけど、私には刺激が強過ぎる。
突然、私の両隣の椅子がガタンッと鳴る。勢いよく席を立った張本人であるツノ太郎とセベクは何故だか分からないが、わなわなと肩を震わせた。
「リリア。シルバー。悪戯にしてはどうかと思うぞ」
「りりりりリリア様まで!!!!!そしてシルバー!!!!!おまえというやつは!!!!!」
ずいぶんと騒がしいミステリーショップの前を、他の生徒達が視線だけ送る。それから、若様とドラコニアン御一行が楽しそうだなあと微笑ましく思いながらみんなミステリーショップから遠ざかって行くのを彼等は知らずにいた。
2023.07.04