
Bookso beautiful yet terrific.
先日、日本に一時帰国した。日本で造られた銃の貴銃士とそのマスターということもあり、帰国してからは幕府やら自衛軍やらのお偉いさんとの挨拶続きで気疲れした。
そんなこんなで、7月7日の夜。おもしろくないお偉いさんとの食事会を終えて宿泊先のホテルへ戻るところだった。
移動中の車の窓から外を眺めていた彼女が急に俺に振り向き、そして不思議そうに首を傾げてきた。
「今日って、何かのお祭り?」
「なんで?」
「いや、だってさ。さっきから着物を着た人達や屋台が並ぶのをよく見るから」
彼女の疑問に俺も彼女が覗いていた窓の外を見る。すると、そこには老若男女問わず浴衣を着て歩く人達が屋台で買っただろう綿飴やかき氷などを持って楽しそうに笑っていた。街の至る所に電気を灯した赤い提灯も飾られている。さらに先の人々が多く集まる開けた広場には大きな笹が用意されていた。笹には、5色の短冊がたくさん括りつけられている。
「そっか。今日、七夕だったな」
俺はようやく今日が七夕だったことを思い出した。日本から離れてイギリスで暮らしていると、どうしたってイギリスの行事や文化の方を頭の中に入れて日本の行事を忘れてしまう。
「お祭りってこと?」
日本の文化を知らないイギリス人の彼女は聞き慣れない単語にさらに首を傾げていく。俺はどう説明しようか悩みつつも、とりあえず見た方が早いかと思い車を運転する自衛軍の1人に声をかけた。
「悪い。ここから歩いて戻ってもいいか?」
「ここからホテルまで、だいぶ距離ありますよ?」
「祭りを見ながら行くから。まあ、大丈夫だろ」
「そういうことでしたら」
「ありがとな」
快く了承してくれた自衛軍の人間は、邪魔にならない場所の道路脇に車を停めて、俺と彼女を降ろしてから一足先に宿泊先へ戻って行った。
一方彼女は、突然車から降りるはめになり益々困惑するけれど、それよりも祭りの雰囲気が気になるらしく視線は正直でそちらを見ていた。
「なあマスター。空、見てみ」
「空?」
素直な彼女が俺に言われた通り夜空を見上げた。
「真ん中にいっぱい星が集まってるのあるじゃん。日本では、あれを天の川って呼ぶんだ。で、天の川を挟んでよく目立つ2つの星が織姫と彦星。今日は七夕というお祭り行事の日なんだよ」
「あまのがわ。星で作られた川というかな?」
「まあ。そんな感じ」
「確かに川に見える。凄く綺麗」
夜空から視線を外した彼女が俺を見て笑う。そんな彼女は大層楽しそうに行ってのけるのだった。
「私。日本の屋台にずっと行ってみたかったの。たくさん周ろうね」
「屋台?え?」
「邑田と在坂が、日本の屋台ではラーメンを食べたり焼きそばを食べたりあんず飴を食べたりすると話してくれたから。ずーっと楽しみで」
「それ食い物ばっかりじゃん」
「八九。お祭り、案内してくれる?」
ふふふと笑う彼女に、食い気しか無いのかよとツッコミたいが我慢する。というか、さっき会食してきたばかりだというのに。彼女の胃袋はどうなっているのやら。
「まあ。いいか。七夕関係ないけど、屋台巡ろうぜ」
「そういえば。たなばた?ってどういう意味なの?何を食べる行事なの?」
「勝手に食べる行事にされちゃうの笑う」
こうして、俺と彼女は七夕祭りで賑わう街へ足を踏み入れたのだった。
2023.07.08