
Bookso beautiful yet terrific.
梅雨はまだ明けない。
というか、ツイステッドワンダーランドにも梅雨があるのかと疑問に思っていたけれど、私がいた元の世界と大きく変わったことが無いこともあるし違うこともある。国ごとに違う文化は異世界共通なのだろう。
さて。私は、地面を叩きつけるようにまだまだ降る雨を教室の中から窓越しに睨みつけるしかなかった。今朝の天気では雨が降る予報ではなかったのに、下校時間に合わせるように雨が物凄い勢いで降り始めたのである。魔法士の卵であるナイトレイブンカレッジ生達は叩きつける雨に対し、あーあと溜息を吐いてから手早く自身に防水魔法をかけていく。それから土砂降りの中を傘もささずに全く濡れず難なく帰って行くのだった。
周りの生徒達が次々と帰る中、魔力がない私は1人教室に残って窓の向こうを見続ける。頼りの親分はこういう時に限ってトレイン先生の補習を受けに行っていない。
このまま雨が止むことがあるのだろうかと溜息を吐いた時だった。
「お友達を待っているんですか?」
その問いかけに私が教室の入口に顔を向けると、そこにはアズール先輩が立っていた。
「いえ。そういうわけでは。雨が止むのを待っているところです」
「雨?」
アズール先輩は私の答えにちらりと教室の窓の向こうの景色を気にしながら私がいる席までやって来る。私の目の前に立ったアズール先輩が僅かに首を傾げてみせた。
「この降りの雨だと止まないと思いますよ」
「やっぱりそうですよねえ」
アズール先輩の指摘に私はつい苦笑いを浮かべた。薄々感じてはいたけれど、現実は厳しい。
私はカタンと音を立てて席を立つ。それから鞄を肩にかけてアズール先輩に一礼した。
「お先に失礼いたします」
「帰るのですか?傘をさしてもこの雨では濡れてしまいますよ」
「帰ったらすぐに着替えて、制服をドライヤーで乾かせばいいかなあと」
もう自分の不運に笑うしかない。一方のアズール先輩は私の言葉に目を丸くする。そして、小さく息を吐き出したのだった。
「そんなことをしたら風邪をひきますよ」
おもむろに、アズール先輩が自身の胸ポケットの中からマジカルペンを取り出す。それから私に向かってマジカルペンを一振りしてみせた。途端に、私の頭の先から爪足まで光の粒子が降り注いでいく。私が光の粒子を目で追いかけていると、アズール先輩の柔らかい声が耳に届いた。
「これで雨に濡れません。気をつけて帰ってください」
「あの。この魔法は?」
「防水魔法をあなたにかけました。他の生徒達もやっていたでしょう?」
慌ててアズール先輩に目を合わせると、アズール先輩は眼鏡の奥の瞳を細めて柔らかい表情を浮かべていた。私はアズール先輩に対して感謝を込めて頭を下げたのだった。
「ありがとうございます!とても、助かります」
「あなたのお役に立ててよかったです」
窓の向こうの雨はまだ止まない。だけど。アズール先輩に心強い魔法をかけてもらったので、土砂降りの中でも足取りは軽くなった。
2023.07.15