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 8月に入ったある日のことだった。今日も今日とて暑いを超えて猛暑となっているこの頃、エースとデュースは賢者の島内にある海水浴場へ来ていた。

「いたか?」

「いや」

2人ともシャツはぐっしょりと汗で濡れ、表情は疲れ切っている。周りのお客さんは海を前にはしゃいでいるけれど、エースとデュースのテンションの低さはある意味目立つ。
 さて。2人は海に入りたくて海水浴場にやって来たわけではない。海水浴場には数多くのサーファーがいる。それに用があった。

「あの噂って嘘だったんじゃね?」

行き交うサーファーや海に飛び込む子供を見ては溜息を吐くエースに対し、デュースが顔を顰める。

「でも。実際にオンボロ寮には、」

デュースがそこまで言いかけた時だった。
 一際大きな波にサーファー達がこぞってそちらを見る。それからきゃっきゃっと男女問わずはしゃぎ始めた。

「ほら!あの子よ!」

「いい波乗りっぷりだ!!!」

「きゃあ!!!かっこいい!!!」

嫌な予感がしたエースとデュースは直ちに注目の人物がいるであろう場所へ走った。走りながらも、2人の視線は華麗に波乗りする人物を捉えた。
 大きな波に逆らわず颯爽とサーフボードに乗る水着の美女。しっかりと体幹を鍛え抜いたプロポーションにエースとデュースは絶句するしかなかった。

「最近噂の美女って、やっぱりあいつじゃん」

「まさかとは思ってたけど」

 実は、ナイトレイブンカレッジには夏真っ盛りになってから噂が出始めた。海に行くと、監督生に似た美女サーファーがいると。噂の本人に聞いても、人違いだよと笑って返されるが、日に日に小麦色に染まる肌に説得力がなかった。そのため、エースとデュースは噂の真偽を確かめるべくオンボロ寮へ行き、グリムとゴーストから留守と聞いてその足で海水浴場へ向かったのである。
 しばらくして、無事に波乗りを楽しんだ彼女がサーフボード片手に白浜に戻って来た。

「あれ?エースとデュースも泳ぎに来たの?というか、水着は?」

エースとデュースの姿を見て小さく笑う彼女の姿に2人はつい顔を見合わせる。

「あの美女の知り合い?」

「あの子にナンパする気か?許せん」

「変な気を起こしたら直ちに取り押さえるぞ」

美女サーファーの隠れファンと思しきギャラリーからの視線がすっごく痛かった。エースとデュースは、溜息を吐いて彼女に向き直った。

「おまえ。かっこいいな」

「ああ。かっこよかった」

力無く笑う2人に、彼女が小首を傾げるも、それから照れ笑いを浮かべたのだった。

「見つかっちゃったんだね。ちょっと恥ずかしいけど。でも、お褒めいただきありがとう」

 とっても暑い暑い夏は、まだまだ続く。

2023.08.11