Bookso beautiful yet terrific.

 宣戦布告とも取れる宣言をしてから、ハウレスの態度があからさまにぐいぐい来るものに変わった。朝起きればハウレスは私の顔を既に覗き込んでいるし、食事の時も私の側に陣取りお茶をどうぞデザートはこちらですと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。そして、私がデビルズパレスにいる間は、ほぼ四六時中と言っていいほど私に着いて回るのだ。
 そんな日々があの日から何日も続くと、私の感覚は麻痺してきた。ハウレスが常に側にいるのが当たり前になり、私もついついハウレスの姿を探すようになった。

「あれ?ハウレスは?」

 今日もデビルズパレスに行けば珍しくハウレスの姿が無く、代わりにベリアンが私を出迎えてくれた。

「ハウレスくんなら、グロバナー家へ使いに行っております。本日は、私が主様のお世話をさせていただきますね」

そう言って、にこりと微笑むベリアンの姿に、私はベリアンの顔を見るのがずいぶんと久しぶりであることに気がついた。もっと言えば、ハウレス以外の他の執事ともあまり話してなかったと思う。

「そっか。今日はよろしくね、ベリアン」

「はい」

そうして、ベリアンと一緒に私の自室へ行き、久しぶりの談笑を楽しんだ。ベリアンは私に紅茶を淹れながら最近あったおかしな話や楽しい話をして、私はそれを聞いてはクスクスと笑う。
 ベリアンと話していると、時間が過ぎるのがあっというまだった。
 気がつけば、時刻は私が元の世界へ戻る時間となっていた。それに気づいた私は慌てて自身の指から指輪を外そうと手にかける。

「今日はありがとう、ベリアン。とても楽しかった」

それじゃあ、と指輪を外そうとした時だった。私の両手が素早く伸びてきたベリアンの両手に絡め取られていく。私の目の前には、ベリアンの美しい顔が間近にあった。

「ベリアン?」

「私、ハウレスくんの仰っていた意味がようやく分かったのです」

ベリアンの形の良い唇がそう言ったかと思えば、その唇が絡め取った私の指に触れる。驚いて飛び退こうとする私を逃がさないように絡む手にさらに力を加えたベリアンは自らの唇を私の額と頬に押しつけてみせた。

「ここ最近、ハウレスくんと一緒にいる主様を見て、ずっともやもやしていました」

ベリアンの両目がじっと私を見つめてくる。その瞳には、覚悟を決めた色をしていた。

「私は、あなたを愛しています。他の誰にも触れさせたくない」

ベリアンからの宣言に、私は何も言葉が出なかった。
 ちょうどその時だった。廊下をバタバタと走る音がしたかと思えば、ノックも無しに私の自室の扉が勢いよく開かれる。私の部屋に飛び込むように入ってきたハウレスの姿は、ずいぶんと荒い息の呼吸を繰り返し、さらにローブを来たままだった。

「っ、ベリアンさん」

私とベリアンを交互に見ては唇を噛むハウレスに対し、ベリアンはそっと私から離れてハウレスに向き直る。
 そして、凛とした迷いのない声でハウレスに告げるのだった。

「ハウレスくん。私も、負けません」

2023.08.20