Bookso beautiful yet terrific.

 そろそろ夕陽が沈むかなあと思いながらオンボロ寮までの帰路を歩く。エースとデュースは部活に行き、グリムはラギー先輩に猫語で何やら誘いを受けたらしく私とは別行動だった。
 そんなこんなで私は1人帰路を歩いている。放課後のグラウンドや校舎からは部活動や委員会などで忙しむ生徒達の賑やかな声で溢れていた。しかし、オンボロ寮に近づくにつれて、当然グラウンドからも校舎からも離れて行く。すると、段々と賑やかな声も聞こえなくなり、静かになった。
 夕陽はまだ沈みそうで沈まずに空を染めている。正直なところ、毎日見慣れた光景に特別何か思うわけではない景色の中、ようやくオンボロ寮の門の前に辿りついた時だった。
 オンボロ寮の前庭にある小高い丘に白いベンチがある。そのベンチに座りながらぼんやりと空を見上げる客人がいることに気がついた。私は門を開けて前庭に入り、小高い丘の白いベンチを目指す。私がベンチの前に立った頃には相手も空から視線を外して私の顔を見てはふにゃりと笑ってみせた。

「おかえり。今帰りか?」

「はい。リリア先輩、今日の部活はいいんですか?」

「部活は休みじゃ」

「そうですか」

会話がそこで途切れた。リリア先輩は再び空を見上げてしまう。私はその場に立っているのも変に思ったのでリリア先輩の隣に座った。
 リリア先輩はベンチに座ったまま沈みそうで沈まない夕陽を見続けている。その表情はいつもの優しくかわいい笑顔ではなく、真剣だった。
 私も、リリア先輩にならって空を見上げる。お互いに何も言わず静かな空間で見る沈まない夕陽といのは、時間が止まったかのような錯覚に陥るものだ。もう一度、リリア先輩の横顔を盗み見た。リリア先輩の表情からは何も読めない。ただ、何か悲しいことを思い出しているのは雰囲気で分かった。
 だけど、私はそれに触れず再び空を見上げた。リリア先輩の心にズカズカと土足で踏み込むことができないから。
 いつか、その悲しい表情の理由をリリア先輩が話してくれるまで、待っていよう。

2023.09.10
泥む|女監督生受け版ワンドロワンライ