Bookso beautiful yet terrific.

 夏の暑い日。よく寝つけなかった私はベッドから抜け出して庭へ向かった。
 アモンが綺麗に手入れしている庭の一角にガゼボがあり、私はその中に設置しているベンチに座った。夜だというのに外の気温はずいぶんと蒸し暑い。ただ、時折吹く生温いけどそんなに悪い気はしない風のおかげで肩の力を抜くことができた。
 ぼんやりと外の景色を眺めていると、かさりと草木を踏む音がしてそちらを見る。すると、私と目が合ったハウレスは僅かに目を見開いたかと思えば、表情を曇らせてしまった。

「眠れないんですか?」

「うん。今日は寝つきが悪くて」

「あちらの世界で嫌なことでもあったのですか?」

「違うよ。蒸し暑くて眠れなかっただけ。心配してくれて、ありがとう」

私の言葉にハウレスが少し考え込む仕種をしてから私の座るベンチにやって来る。失礼いたします、と断ってからハウレスは私の隣に座った。

「本当に、思い悩んだりしていませんか?」

「してないよ」

「何か、考えごとでも?」

「ないよ」

「ですが、」

あまりにも心配してくれるハウレスに私はつい苦笑いを浮かべた。心配してくれるのは嬉しいけれど、心配しすぎだと思う。
 私は、これ以上ハウレスに誤解されないように先に返した。

「じゃあさ。何か悩んだり、考えごとした時は、ハウレスのことを頼るよ」

私の言葉にハウレスが瞬きした。だけどすぐに、ふわりとした柔らかい笑みを作ってみせた。

「俺にお任せください」

 ようやくハウレスの誤解が解けてホッとした私はハウレスから視線を外した。しかし、おもむろに手を伸ばしてきたハウレスが私の手を握ったせいで、私は再びハウレスと視線を合わせるはめになった。

「ハウレス?」

「あなたの心が俺でいっぱいになってしまえばいい。そうすれば、嫌なことも思い悩むこともなく、あなたはずっと俺のことだけを考えてくれるのに」

そう言ったハウレスが、私の手を自らの頬に当ててみせた。突然の行動に驚く私の顔を、ハウレスは曖昧な表情で笑っては、決して私から視線を逸らさず熱っぽく見つめてくるのだった。

2023.09.10