
Bookso beautiful yet terrific.
いつか元の世界へ帰るから、恋をしてはいけないことくらい理解していた。だけど。勝手に入り込んだリリア先輩の夢の中で、リリア先輩の心の内を知ってしまい、ようやく目が覚めた気がする。覚めるも何も、まだまだリリア先輩の夢の中だけど。
もやもやしたまま夢の中のリリア先輩の背中を見つめることしかできなかった。夢ではなく、確かに過去にあった出来事の夢を見続けるということは、それがリリア先輩の人生に大層大きな影響を与えたからなのだろう。
ふと、リリア先輩が私に振り向いた。過去の姿をしたリリア先輩が私に近づき、じっと目を合わせてから話をした。その内容は、何故か聞き取れなかったけれど。
ゆっくりと目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。学園でも、リリア先輩の夢でもない、別の場所。先程まで一緒にいたはずのグリムとセベクとシルバー先輩もいない。ただただ、穏やかな森の中に私はぽつんと1人で立ち尽くしていた。
不意に、草木を踏む音が聞こえて私が振り向くと、そこには穏やかな表情を携えたリリア先輩がいた。リリア先輩の腕の中にはほぎゃほぎゃと泣く小さな赤ん坊がいた。
「こんなところにいたのか。そろそろ授乳の時間のようじゃ」
「授乳、ですか?」
「かわいい我が子がご飯を待っておるぞ」
と、冗談めかして言ってのけたリリア先輩が腕の中の赤ん坊をよしよしとあやしている。そこで、私はこの赤ん坊が私とリリア先輩との子供だということに気がついた。
これも夢だよね。今度は私自身の夢の中。それならば、一層のこと。
私はリリア先輩に近づき、リリア先輩の腕の中にいる赤ん坊の手を握る。今度はきゃっきゃっと笑う赤ん坊に対して、リリア先輩がくふふとかわいい笑顔を浮かべた。
「かわいいのう」
ね?と同意を求めるようにリリア先輩が私と目を合わせる。だから私も、はいと頷いて笑った。
とっても幸せな、夢だった。
どんどん暗闇に呑み込まれて行く彼女の姿に、シルバーとセベクとグリムは必死に呼びかけるしかなかった。
「起きろ人間!!!!!それは夢であって、現実ではない!!!!!」
どんなに戻って来いと呼んでも、彼女は目を閉じたまま暗闇に溶けていくだけだった。
何故なら彼女は、いつかのことより覚めない夢を見続けることを選んだのだから。
2023.09.18