
Bookso beautiful yet terrific.
本丸に戻ると、私の自室にチョコレートを被った鶴の置き物がいた。いや、正しくは、チョコレートに塗れた鶴丸の姿が。
「よっ!驚いたか?」
「うん。すっごく驚いたよ。何故そんなに服をチョコレート塗れにしちゃったの?」
「チョコレートマウンテンなるものをぜひやろうと皆で準備をしていたところなんだ」
「へー」
「さあ!もうすぐ大広間に揃ってるはずだ。主も行こう!今日はバレンタインデーだろう?思う存分、チョコレートを食べる日だ!」
「ちょっと、いや、だいぶ違うと思うけど」
「細かいことは気にしないことだ。ほら、皆が待ってる」
困惑する私を余所に、チョコレートだらけの鶴丸が私の背中を軽く叩く。確かに、大広間の方から、刀達の賑やかな声が聞こえてきた。
「あ。ちょっと待って」
私は現代から持ち帰ってきた荷物の中から大きな紙袋と小さな紙袋を取り出す。その内の小さな紙袋の方を、いつも私の留守を守る近侍に手渡した。
「いつもありがとう、鶴丸」
「これを、俺に?」
「うん」
鶴丸は、自分が受け取った小さな紙袋と、私が持つ大きな紙袋を交互に見る。大きな紙袋の中には、本丸の刀達全員分のチョコレートが入っている。
察しの良い鶴丸は、もう一度自分の貰ったチョコレートを見る。それから、勝手に私の部屋の棚にしまっては微笑んでみせた。
「あとで、きみと一緒にいただくよ」
鶴丸の言葉に、私は、そっかと頷いた。
そして、私達はいつものように談笑しながら大きな紙袋だけを持って仲間達が待つ大広間へ向かったのだった。
2024.02.16