Bookso beautiful yet terrific.

 2月14日、バレンタインデー。世間では、チョコレートを相手に渡すのは愛を贈るのと同義語と思われている。勿論、私だって、普段から危険と隣り合わせのアウトレイジャー討伐に向かう貴銃士達に心からの感謝と愛情を贈りたいと思っているし、というか、先程までその感謝と愛情の証であるチョコレートを配って来たところだ。
 1人を除いて。


 自室のテーブルの上にぽつんと置かれたままのかわいいラッピングから目を逸らした。そして、とりあえず無意味にベッドの中へ潜り込んでは固くぎゅうと目を瞑る。
 今頃、自分だけチョコレートが貰えてないことをカールは気づいているに違いない。きっと、優しい皇帝様は、自分だけチョコレートが貰えない理由を冷静によーく考えては、最終的には僕がマスターに何かしたかなー?に辿り着いているのだろう。いや、カールに何かされたわけでもないし、ましてやカールに問題があるわけがない。問題なのは、私だ。
 普通の顔して渡せばいい。分かってはいるけれど、できない。だいたい、バレンタインデーなんぞ、今まで異性に渡したことがないのだから。

「お邪魔するよー」

 前触れもなく、トンッと軽やかな音を立てて床に靴音が鳴った。というか、部屋の扉の鍵はしっかりと締めてある。ならば、何処から現れたのかと疑問に思った私が毛布から顔を出そうとした時、それよりも先に毛布が強引に退かされては、きらきらと輝く小さな皇帝様が私の顔を覗き込んだ。

「何故か僕だけ、君にチョコレートを貰ってなくてねー。取りに来たよ」

「鍵は締まってるはずなんだけど」

「窓の鍵は開いてたけどねー。あ、僕の分のチョコレートはあれかな?」

さらりと返しながらカールは私から離れてテーブルの上にあるかわいいラッピングのチョコレートに手を伸ばしては頷く。私が渋々ベッドから出ようとすると、カールは何の遠慮もなく私の隣に座った。

「僕だけ君からチョコレートを貰えない理由を考えたのだけれど、僕が君に何かしちゃったかなー?と思ってね」

カールの言葉に、やっぱりそう思ったんだと私は口篭る。だけど、カールの言葉の続きは、私の予想をしないものだった。

「僕が君の心を奪ってしまったのは理解したよ。だからこれは、君から僕への本命チョコということだ」

カールが手に持つチョコレートを示しながら言うそれに、図星をつかれた私は何も言えずただ顔を赤く染めることしかできなかった。そんな私を余所に、カールは楽しそうな表情を浮かべてはラッピングを開けてぱくりとチョコレートを食べる。そして、自らの指でチョコレートを摘んだカールは私の唇にちょんと当てたのだった。

「僕もね。とっくに君に心を奪われているよ」

2024.02.16