
Bookso beautiful yet terrific.
ツイステッドワンダーランドにもバレンタインデーはやって来る。彼女の世界ではチョコレート菓子を国ごとに、女性から男性に贈ったり、または男性から女性に贈ったり、様々らしい。それはツイステッドワンダーランドも同じで国によって文化は異なるものだ。
さて。彼女からは、今年のバレンタインデーは平日なので今週の土曜日にオンボロ寮でお待ちしてますね!と言われたボクは、こうしてオンボロ寮の門の前にやって来た。
いや、ボクは別に彼女からの手作りのバレンタインデーのチョコレート菓子をぜひ欲しいわけではない。そもそも、ボクは常日頃彼女の手料理をいただいている、謂わばお食事仲間だ。だから、決してやましい下心があってオンボロ寮に来たわけではない。それに、最近は彼女も作りすぎちゃうこともなく正常な量を作っているし、しかし、まだまだ心配な面もあって様子を見ないといけないと思う。つまり、ボクは他の男性諸君と違って彼女にチョコレートを強請りに来たわけではない!!!!!
「リドル寮長、さっきからなんで百面相してるんですか?」
「カシラがウギりそうって、敵襲ですか!?」
いつのまにかボクの目の前に現れたエースとデュースを前にして、ボクはハッと我に返る。というか、何故2人がオンボロ寮の門の前にと思うが、彼女が自分の親友に料理を振る舞うのは何もおかしいことではない。てっきり、ボクだけ誘われたのかと思ったのに。いや、違う!!!ボクは彼女とはお食事仲間であって、一体何を期待しているというのだ。
無意識のうちに、眉間に皺が刻まれていくのをエース達は見逃さなかった。エースは慌てて門から少し遠くに見えるオンボロ寮の玄関を指差した。
「お、俺達!!!寮長達の邪魔しに来たわけじゃないですって!!!あれを受け取ったら帰りますから!!!」
エースの言葉に、ボクも釣られてオンボロ寮の玄関を見る。開けっ放しの扉の前にはずいぶんと長い列ができていた。
「さあさあ!紳士のみなさんいらっしゃいませ!本日限定でオンボロ寮の監督生さんお手製のチョコレート菓子を販売中です!無くなり次第終了です!しかも!全品どれでもおひとつ500マドルです!!!」
その長蛇の列の最前列にはとても大きなショーケースがあり、そこにはガトーショコラやチョコレートパイなど手の込んだチョコレート菓子がずらりとたくさん並んでいた。何故か、販売しているのはアズールだけど。
当然、ボクは列を掻き分けてアズールの元へ大股でズンズンと向かう。それから声を張り上げて抗議した。
「何を勝手に彼女の手料理を販売しているんだい!!!ボクは許可を出してないよ!!!」
「おや。これはこれはリドルさんではありませんか。お供のトランプ兵を連れてあなたも買いに来たんでしょう?我がモストロ・ラウンジのシェフ監修のチョコレート菓子を」
「ボクは純粋に彼女の招待を受けて来ただけだ!!!下心満載のキミと一緒にするんじゃないよ!!!だいたい、誰がモストロ・ラウンジのシェフだ」
「ご本人の許可を得ているので何も問題ないんですけどねえ。ね?監督生さん?」
白々しく言いながらアズールはオンボロ寮の室内に向かって声をかける。すると、奥からひょこっと顔を出した彼女はエプロン姿のまま恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。
「リドル先輩!来てくれたんですね!実は、試作を作り過ぎちゃって、アズール先輩に相談したらこのような展開になりまして。落ちつくまで談話室でお待ちいただけますか?グリムも食べ過ぎて談話室のソファで転がってますので」
早口で言ってのけた彼女が再び奥へ戻っていく。この場所に残されたボクに対し、何故かアズールが勝ち誇った表情を浮かべてみせた。理由は分からないが、アズールに腹が立ったのは間違いない。
「えーと。とりあえず、俺達はケーキ買って帰りまーす」
「あ、えっと!ローズハート寮長!僕達はお先に失礼します!」
色んな意味で立ち尽くすボクにエースとデュースは声をかけたかと思えば、アズールからチョコレート菓子を買ってさっさと帰って行った。
ボクは、深く息を吐く。それからニヤリと笑うアズールを無視して談話室の中へ向かった。事情はどうであれ、この騒ぎが終われば、彼女お手製のボク宛てのチョコレート菓子が振る舞われることを願って。
2024.02.16