Bookso beautiful yet terrific.

 休日のある日のこと。今日はあたたかいし、せっかくのお休みだからと私は1人で麓の街までやって来た。
 ナイトレイブンカレッジの門の前に立つバス停からバスに乗車してはゆらゆらと揺られるのは案外楽しいものだった。窓から見える景色を理由もなくボーっと眺めるのも良いものだし。
 さて。バスを降りた私は、真っ先に麓の街で1番大きなショッピングモールへ向かった。何かお目当ての物を購入したいわけではないが、雰囲気を楽しむくらい許してほしい。
 ルンルンで歩く私に、不意に、後ろから肩を掴まれたせいで私の足が止まる。何事かと驚いて振り向く私に、私の肩を掴んだ張本人はバツの悪い表情を浮かべた。

「すまない。おまえが1人で出かけて行くのを見かけて、つい」

そう言って、ほんの少し眉を下げるシルバー先輩の姿に、私は瞬きするも特に不快な思いはしなかった。びっくりはしたけれど。

「シルバー先輩も、私を追って同じバスに乗ったんですか?」

「ああ。後をつけるような真似をして、すまない」

「それなら、最初から声をかけてくれたらいいのに」

「おまえがあまりにも楽しそうだったから、誰かと会うのかと思って」

もう一度瞬きする私に、シルバー先輩は私の肩から手を離しては自らの頬をかいた。それから、軽く息を吸って吐くを繰り返し、私の手を取った。

「遠慮はもうしない。さあ、行こう」

私の手を引いて先を歩くシルバー先輩に釣られて私も歩き出す。繋がれたままの手をどうしたらいいか分からず、解こうとしてもシルバー先輩の手がそう簡単に離れてはくれなかった。


 シルバー先輩に手を引かれたままショッピングモールへ辿り着くと、そこは休日だけあって混み合っていた。

「足下、気をつけた方がいい」

周りの喧騒にかき消されないように私に耳打ちするシルバー先輩に、私の心臓が早鐘を打つのは言うまでもない。

「シルバー先輩。その、もう少し離れませんか?」

「何故だ?おまえから離れたら、万が一があった時に俺がおまえのことを守れなくなる」

何を言い出すのだ、この人は。そう思いながら私は赤く染まった顔を隠すために下を向くしかない。私の行動を疑問に思ったらしいシルバー先輩は、すぐに足を止めては私の顔を覗き込んでくる。

「どうした?具合が悪いのか?」

シルバー先輩の無意識の行動に、私がいっぱいいっぱいになりつつある時、物凄い見知った声が割って入ってきた。

「シルバー!!!貴様!!!さっさと離れろ!!!」

 即座に、私の手とシルバー先輩の手が無理やり離されていく。そして、私とシルバー先輩の間に強引に身体を滑り込ませたセベクはシルバー先輩を睨んだ。

「抜け駆けは卑怯だぞ!!!」

「抜け駆けではない。彼女の供をしていただけだ」

「手まで繋いでか!?言い訳はみっともないぞ!!!」

「この人混みの中、彼女と逸れては大変だからな」

「お、おまえというやつは!!!」

しれっと言い返すシルバー先輩と、顔を真っ赤に染めては怒るセベクの姿は、行き交う人々が興味本位で見るには十分だった。
 ちらちらと注目を集めることに恥ずかしくなった私は、遠慮がちに2人の袖をそれぞれ引っ張った。

「あ、あの!目立つので、喧嘩はしないでください」

おろおろする私を、シルバー先輩とセベクが見る。それから2人はお互いの顔を見合わせてから太い息を吐いた。

「おまえが言うなら、仕方がない」

「納得はできないが、今日は我慢してやる」

そう言った2人は、私の右手をシルバー先輩の左手が繋ぎ、私の左手をセベクの右手が繋ぐ。そのまま、ゆるゆると指を動かしては私の指まで絡めてしまった。

「な、何して、」

抗議しようとシルバー先輩とセベクの顔を見上げると、2人は私と目を合わせは吹き出すように笑った。

「今日は、俺達2人分の想いを受け取ってほしい」

「少しは鈍い自分自身に反省するんだな」

 強引に繋がれた2人分の手に引かれながら私は何も言えずに口篭る。これじゃあ、色んな人の目に晒されるだけだと私は項垂れるしかなかった。

2024.07.17
ふたりぶん|女監督生受け版ワンドロワンライ