
Bookso beautiful yet terrific.
本丸を抜け出して、何処までも真っ暗な世界を真っ白い刀の手を取って走る。怖くなって何回も後ろを振り向くけれどそのたびに握られた手から力が加わった。
「ねえ、鶴丸」
「なーに、心配いらないさ」
決して振り向かず前しか見ていないのに根拠がないだろう気休めにもならない気遣いがどうしようもなく私の心をあたためた。
だから私は、もう一度決意して彼の手を握り返す。怖くても、今度は振り向かない。
「ねえ、鶴丸」
「なーに、心配いらないさ」
「違う。そうじゃないの」
彼は何も言わず走り続ける。真っ白い背中からは余計なことを聞きたくないと告げていた。
「あと何回、時間を遡行すれば逃げ切ると思う?」
「それを知ってどうする?」
いつもとは違う声音で返された言葉に私は少しだけ間を置く。だけど、考えてもこれ以上言葉は出てこない。
「鶴丸がいれば、何処に行っても楽しそうだなあと思って」
私の手が僅かに震える。その震えに気づいた彼はさらにきつく手を握り直した。
「勿論さ。何処に行っても、俺がきみにとっておきの驚きを贈ろう」
また時空が歪む。政府が私と彼が本丸にいないことに気がつくまで、残り僅か。
2022.09.22