Bookso beautiful yet terrific.

 ある日、お嬢様はまた突拍子もないことを言い出した。

「車が欲しいですわ」

至極真面目な顔で言ってのけるお嬢様の姿に八九は困惑する。そもそも、何故車がいるのだろう。お嬢様はまだ学生だし、しかも将軍家の人間であるお嬢様が望めば車だろうが馬車だろうが籠だろうが馬にだって乗れる。

「いや、なんで車?というか、上様の公用車にいつも乗ってるじゃん」

それを聞いたお嬢様は八九の顔をじっと見つめてから眉を寄せた。

「運転手なんていりません。わたくしが車を運転したいの」

むすっと頬を膨らませるお嬢様に八九は困惑する。いやいやいや、将軍家の人間に車の運転なんぞ幕府の重臣達が絶対に許さないだろう。

「アウディにJeepにベンツ。それにクラウンも捨て難いですわ。早くわたくしも免許を取得できる年齢になれたらいいのに」

はあと深く溜息を吐くお嬢様の姿を眺めながら八九はうーんと首を捻る。

「つーか、なんで車が欲しいわけ?別にお嬢様が運転する必要ないだろ」

「だって、好きな殿方と車デートしたいじゃない。それに、わたくしだって運転できるということをびっくりさせるのもおもしろいと思いますの」

ふふふと笑うお嬢様に八九は固まった。
 この会話が終了した直後、八九が教習所に通いたいと葛城に頭を下げに行ったのは言うまでもない。

2022.09.23