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 いつからだっただろうか。気がついた時にはヴィルの視線はいつも監督生くんに向いていた。

「まったく。危なっかしいわね」

 実験室の前を通った時も、飛行術の授業を見学している姿を見つけた時も、食堂で友人達とふざけあっている時も、ヴィルは監督生くんの様子を眺めては眉を寄せる。それは面倒見の良いヴィルが年下の後輩を気にかけているように見えるだろう。しかし、私はヴィルの瞳の奥に熱が込められていることを知っている。
 だから私は、ヴィルの密かな恋を応援している。本当は監督生くんに想いをぶつけたいくせに、自身がカリスマ人気俳優ヴィル・シェーンハイトであることを理由に二の足を踏むいじらしさが見ていてもどかしい。恋とは、時として人を臆病にさせるものだ。

「ねえ、ルーク。アンタ、監督生のこと、好きなんでしょう?」

 ある日のこと、唐突にヴィルが言ってきた。オーララ。私の密かな想いを見抜かれていたとは。私は常々考えていた。こうなってしまった場合、どうすれば良いのだろうかと。結果的に私から出た返事は否定はしないことだった。

「それはヴィルだって同じことが言えるだろうね」

私の言葉を聞いたヴィルは瞼を伏せる。一拍置き、再び開けたその瞳には強い光が宿っていた。

「ええ。そうよ。だから、アンタには負けないわ」

堂々と言ってのけるヴィルの姿に、私は心が踊った。
 親友が恋敵なら、正々堂々戦うのが筋ってものなのだろうね。


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 いつからだっただろうか。気がついた時にはルークの視線はいつも監督生に向いていた。

「トリックスターは今日も元気だね。ヴィルもそう思うだろう?」

 そうやってアタシの恋を後押しするくせに、ルークの瞳の奥には隠しきれない熱を帯びていた。今日の監督生くんは顔色が悪いとか、監督生くんは王子様とのキスに憧れているとか、監督生くんが笑うとこちらも元気を貰えるとか、なんだかんだでルークが口を開くと出てくる言葉は監督生に関するものだった。
 だからそれが正直いじらしい。監督生のことが好きなら、アタシを欺いてでも狩に行けばいいのにと何度も思った。だけど、それをしないのはルークの優しさというのも理解している。
 ある日のこと、アタシは思いきってルーク自身が監督生に好意を持っていることを知っていると突きつけた。ルークは否定はしなかった。やんわりと曖昧に返そうという魂胆が見え見えだった。それが逆にルークが監督生に恋している証になったし、やはりというべきかルークがアタシに気を遣っていることも確信した。

「我等が美しき女王の前では正直になるべきだね。だから私も、本気で行くよ」

 アタシが宣戦布告してやると、ルークは腹を括ったようだった。
 親友が恋敵だからって、手を抜くなんてことはこのアタシが許さないわ。

2022.10.09