Bookso beautiful yet terrific.

 休み時間に監督生が一人で廊下を歩いていると正面からジェイドがやって来た。ジェイドは監督生の姿を見つけると表情を明るくさせてから足早に監督生の元へ向かう。ジェイドに進路を塞がれるように立ち止まられた監督生はとりあえず歩みを止める。

「これはこれは、監督生さん。奇遇ですね」

何が奇遇なのだろうと思いつつも監督生は会釈した。一方ジェイドは微笑みを貼り付けたまま監督生のことを見つめている。品定めするようなジェイドの視線に監督生は居心地が悪くなっていく。このまま黙ってじっと見られ続けても反応に困るので監督生は躊躇いつつも勇気を振り絞って声を出した。

「私の顔に、何かついてますか?」

「おや?何故でしょう?」

「ジェイド先輩にしてみれば自意識過剰だと笑うでしょうけど。その、なんか目が合うなあと思って」

監督生が恐る恐るジェイドを見上げると、意外にもジェイドは鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべていた。

「不躾に見つめてしまいすみません。あなたがとても愛らしいお顔をしていらっしゃるので、つい」

からかわれているのは分かってはいるが、異性にそう言われると僅かばかり頬を染めてしまうのは仕方がないことだろう。

「あれー?ジェイドと小エビちゃんじゃーん」

 ジェイドの後ろから歩いて来たフロイドが監督生達に気づき長い足を進めて一気に距離を詰めた。監督生の目の前には背の高いウツボの双子がそびえ立っている。

「おや、フロイド。どうされましたか?」

自身の隣にやってきたフロイドにジェイドはにこやかに声をかける。すると、フロイドは不満気に唇を尖らせた。

「うっわ白々しい。ジェイドが抜け駆けしようとしてるから牽制しに来たの」

「これはこれは。そんなつもりはありませんよ」

「とか言ってさー、普通に口説いてたっつーの」

監督生を目の前にしてさらりと口にする言葉の数々に監督生は困惑するしかない。冗談なのか本気なのか読めないウツボ達の行動に監督生は下を向く。監督生にしてみれば、正直、この二人の先輩が何を考えているのか分からず怖かった。
 しかし、この場から逃げ出したくて仕方ない監督生をウツボの双子が許さなかった。
 フロイドはジェイドから視線を外して監督生を見る。それからにんまりと笑みを浮かべた。

「ねえねえ小エビちゃん。俺とジェイド、どっちが好き?」

え、と思いながら監督生が顔を上げると、ジェイドもフロイドと同様に口元に笑みを作っていた。

「それは良い質問ですね、フロイド。それで、監督生さん。いかがでしょう?」

監督生の顔が一気に青褪めた。何故こんな質問をされるのか監督生には心当たりがないし、質問の答え次第ではあとが怖い。しかし、監督生を追い込むようにウツボの双子はさらに続けた。

「言っとくけど、同じくらい好きとか無しね」

「さあ監督生さん。お選びください」

逃げ場を失った監督生は必死で言葉を探すが、なんて返せばいいか分からない。
 あきらかに困り果てる監督生の姿をウツボの双子が愛おしそうに見つめていたのだった。

2022.10.12