Bookso beautiful yet terrific.

 士官学校の一角にある庭に設置されたベンチで私は本を開いたままぼーっと座っていた。少しずつ肌寒くなっていく秋の気配を感じながら何もする気力が湧かずとりあえずそこにいるだけ。すると、一際目を引くピンク色の影が私の目の前を陣取った。

「おまえ。好きなやついるって本当?」

何の話だと思いながら顔を上げるとライク・ツーと目が合う。不機嫌そうに歪んだ表情で見下ろしてくる大層整った顔立ちに私は眉を寄せる。

「いたらいけないの?」

つい意地の悪い言葉を返すと、ライク・ツーがさらに表情を歪ませる。それから荒々しく私の隣に座った。

「別にいけないとは言ってねえ。だけど、おまえの立場を考えると賛成はできねえな」

ライク・ツーにしてみればそうなのだろう。私は小さく息を吐く。ろくに読んでもいない本を閉じてから隣にいるライク・ツーを見た。

「それで。わざわざ噂の真相を確かめに来てくれたの?」

「まあ、今はおまえの銃でもあるし。一応聞いといてやるかと思っただけ」

ライク・ツーは私を見ないまま答える。その横顔は素直で、表情は暗かった。

「いないよ。そんな人」

私がそう言った瞬間、ライク・ツーが首を動かしてこちらを見た。僅かに揺れた色の違う二つの瞳からは不安を感じ取る。

「だいたい何処で流れていたの?その噂は」

「噂が流れるのは大なり小なり事実があるってことだろ」

私が苦笑いを浮かべるとライク・ツーは眉を寄せる。

「間違いでもないかな。ずっと前から好きな人がいるし」

「いるのかよ」

「ヴィヴィアンも、その忘れ形見も一生好きだよ」

本を持ってベンチから立ち上がるとライク・ツーは視線だけで私を追いかける。だけどすぐに、瞼を伏せた。

「そりゃあどーも」

それからすっと立ち上がったライク・ツーは私の肩を軽く叩く。緩く唇に弧を描いてみせた。

「俺もさ、ヴィヴィアンもその忘れ形見ってやつも嫌いじゃねーよ」

それに対して私も頬を緩める。ライク・ツーと同じように返してやったのだった。

「それはどーも」

2022.10.12