Bookso beautiful yet terrific.

 今日の体力育成の授業は全一年生合同で陸上競技だった。いつも以上に気合の入るバルガスの授業改めて鬼にような扱きにエペルは顔を顰めた。そのエペルの隣でジャックは立派に鍛え上げた筋肉を動かし準備体操に勤しんでいた。グラウンドの別の場所ではセベクがハードルを高々と飛び越えているし、デュースとエースが何やら言い争いながらトラックを物凄い勢いで走っている。ふと、高跳びの種目の場所でエペルの視線が一人の姿を捉える。エペルはジャックをその場に残してすぐにそちらへ向かった。
 エペルの視線の先にいた監督生はその場にしゃがみ込みながら足首の近くを摩りながら首を傾げている。

「大丈夫?怪我したの?」

監督生の側に走って来たエペルはそう尋ねながらしゃがんで監督生の足首に手で触れる。エペルの手が監督生の手の上から重ねるように監督生の足首に触るので監督生は驚きつつも苦笑いを浮かべた。

「高跳びした時に着地が悪かったみたいで捻っちゃったっぽいんだよね。でも、もう大丈夫かな」

「本当?平気?」

「うん。心配してくれてありがとう」

監督生がそう言うならとエペルが手を離すと監督生はその場に立ち上がる。少し足首を回すように動かしてから大丈夫そうと呟いた。

「でも、本当に無理しないでね」

心底心配そうに眉を寄せるエペルの姿に監督生が頬を緩めて頷いた瞬間だった。

「そうだぞ!!!無理してはならん!!!」

 鼓膜が破れそうな声と共に監督生の身体が宙に浮く。あっというまにバルガスによって俵担ぎにされた監督生の姿にエペルは目を大きく見開いた。

「さっきの着地は見てて危ういと思っていたが、やはりな!!!その様子だと問題はなさそうだが、万が一のことがある。保健室で一応診てもらってこい」

「え。ああ、はい」

監督生はバルガスの逞しい肩の上に身体を揺らされながら状況判断が追いつかずとりあえず返事だけした。しかし、エペルはそうもいかない。

「わーが!!!じゃなくて。僕が監督生サンを保健室に連れて行きますので、その手を離してください」

バルガスはエペルに言われ一瞬目を丸くする。それからいつものように自慢の白い歯を見せて笑ってから監督生の身体を地面に降ろした。

「フェルミエ!!!俺様は仲間思いのおまえに感動したぞ!!!あとは頼んだ」

エペルはバルガスに返事してからくるりと監督生に振り向く。監督生の手首を無理やり掴んでから保健室に向かって歩き出した。バルガスが監督生の身体に不用意に触れたことにもやもやしながら。
 一方バルガスは監督生とエペルの姿を見送ってから各々取り組んでいる生徒達の元へ行く。エペルの心の中なんぞ知らないバルガスは逞しい筋肉に気合を込めて今日もスパルタ指導に励んでいたのだった。

2022.10.14