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 授業の合間の休み時間、同じクラスのカリムとシルバーは揃って教室の窓の外を覗いていた。窓の向こうにある運動場には次の時間使う運動着姿の生徒達が続々と集まって来ている。その中にはカリムとシルバーが良く知る監督生もいた。

「なあなあシルバー。おまえは好きなやつ、いる?」

 何の前置きもなくカリムから言われた質問にシルバーが運動場から目を離さないまま悩む。好きな人物というのは親類縁者もしくは友人知人関係のことを示すのだろうか。あるいは恋愛感情を持つ相手のことを言っているのだろうか。答えに困ったシルバーがカリムの横顔を盗み見る。当のカリムはシルバーのことを見ずに運動場に視線を向けたままだった。カリムの表情を見るに後者を示していると察したシルバーはカリムにならって運動場に視線を戻す。そして、おそらくカリムの視線の先にいるだろう人物を視界に捉えた。

「いる」

短い一言で返したシルバーに対しカリムはそっかあといつものように明るい声音で反応した。

「シルバーの好きなやつってさ、俺と同じ子なんだろうなあ」

 今度はカリムがシルバーの顔を盗み見る。運動場を見つめるシルバーの横顔が少しだけ柔らかいものだった。シルバーがカリムの視線を感じて振り向く。カリムもまたシルバーと同じ表情を浮かべていた。

「シルバーはさ、どういうところが好きなんだ?」

カリムからの問いにシルバーは少しだけ考える。頭の中に浮かべた想い人の姿に自然と頬が緩む。

「全部だ。そういうカリムは?」

シルバーに返された問いにカリムが大袈裟なくらい首を捻りながら考える。だけど、カリムもまた想い人のことを考えただけで笑みが溢れた。

「俺も全部かな」

あははと明るく笑ってからカリムは再び運動場に視線を向ける。シルバーもカリムにならってまた運動場を見た。
 もうそろそろ授業が始まる時間なのでそこには先程よりもたくさんの生徒達が集まっている。その中の一人である監督生は笑顔を浮かべながら誰かと楽しそうに話していた。

「たまに思うんだよなあ。監督生といつでも同じ授業を受けられる1-Aのクラスメイト達が羨ましいって」

 それはカリム自身が思うよりもずっと嫉妬を孕んだ声音だった。シルバーはカリムの切なる感情に同意するように頷く。それからシルバーもまた軽く拳を握ってから口を開いたのだった。

「俺もそう思う。できることなら、彼女が笑いかける相手が」

そこまで言ってからシルバーは口を閉じる。この先はカリムだって常に思っていることだろう。
 チャイムが鳴った。授業が始まる。運動場にいる生徒達が慌てて整列する。一方、シルバーとカリムがいる教室でもまた生徒達がバタバタと席についた。

「お互いに、頑張ろうぜ」

カリムがシルバーの背中を叩く。シルバーは僅かに目尻を下げながら頷いた。

「ああ。共に頑張ろう」

シルバーの返事を聞いたカリムが歯を見せて笑う。
 それから二人はそれぞれの席についたのだった。

2022.10.21