Bookso beautiful yet terrific.

 私は困ったなあと思いながら魔法薬学準備室の奥にある真っ暗な薬品庫の中にいた。
 日直だった私は、クルーウェル先生から次の時間に使う薬品を昼休みのうちに準備するよう命じられていたので言われた通りこの場所に取りに来たのだが、数ある薬品を保管してあるこの保管庫は不正に持ち出し防止のため扉を一度開けたのちに再度閉めると自動でロックされる仕組みである。そして、私のストッパーのロックの掛け方が甘かったらしくうっかり扉が閉まってしまい現在に至るというわけだった。
 私は溜息を吐きながらその辺に腰を下ろす。薬品庫の中を照らすために持参していたLEDライト式のランタンのおかげで室内は明るい。とりあえずスマホを取り出してエースとデュースに助けを求めるメッセージを送っておいた。
 それにしても、危険な薬品もあるだろうから無闇やたらに動くわけにもいかずじっとしているのは暇だった。本でもあれば読みながら時間を待つのになあと思う。
 ふと、スマホに着信が入る。相手はジャックだ。

「監督生!?閉じ込められたって聞いたけど無事か!?」

「ああ、うん。うっかりね」

「うっかりですまねえだろ!」

通話口の向こう側のジャックの声音が苛立っていた。というか、ジャックに怒られる筋合いないし。

「今助けに行くから待ってろ!!!」

ぷつっと乱暴に電話を切られたので私は眉を寄せる。これ、ジャックと顔を合わせた瞬間お説教されるのだろうなあと思い憂鬱になった。
 ジャックと通話を終えてからそんなに時間も経たないうちに薬品庫の扉の向こうからガシャンと鍵を開ける音がなった。扉が開かれたので私はその場から立ち上がる。ランタンとクルーウェル先生に指示された肝心のいくつかの薬品を入れた籠を持って外に出るとそこにはジャックだけではなく何故か眉間に皺を寄せて怖い顔をしたレオナ先輩がいた。というか、助けを求めたはずのエースとデュースの姿が何故かいないのだけど。

「よお。元気そうだなあ」

レオナ先輩の眼光がさらに鋭くなった。一方、レオナ先輩の一歩後ろにいるジャックも臨戦態勢である。私は二人の顔を交互に見てからとりあえず頭を下げた。

「助けていただき、ありがとうございました」

しかし、依然としてレオナ先輩とジャックの表情は怖いものだった。

「で?誰にやられた?」

レオナ先輩が再び口を開く。私は意味が分からず視線だけをレオナ先輩の後ろにいるジャックに向ける。すると、ジャックも喉の奥を鳴らしながら言ったのだった。

「庇う必要なんかねえ。こんな卑劣な野郎、俺が許さねえから」

いやいやいや。許すも何もその卑劣な野郎なんぞいないし。

「私がストッパーのロックを掛けるのが甘かっただけなんだけど」

 は?とレオナ先輩とジャックの声が重なった。私はそもそも何故こうなったのか経緯を二人に説明する。話を聞いたレオナ先輩とジャックはお互いに顔を見合わせてから気まずそうに目を逸らした。

「おい。ちゃんと話聞いてなかったのか?」

「すみません。俺はエースとデュースから監督生が一大事だって聞いて」

ジャックの言葉にレオナ先輩が深々と溜息を吐く。それから私の頭を無造作にぐしゃりと撫でた。

「無事ならいい。次からは気をつけろよ」

私の頭から手を離したレオナ先輩が今度はジャックの肩を数回叩く。ジャックがレオナ先輩に視線を向けるとレオナ先輩は肩を叩くのをやめて準備室から出て行った。

「なんかごめんなさい。紛らわしいことをして」

「いや、まあ。俺の早合点だったわけだし。俺の方こそ悪かった」

そう言ったジャックは私の手にあった薬品が入った籠を持った。

「これ、実験室か?」

「うん。クルーウェル先生に言われて」

「他にも運ぶのあるのか?俺も手伝う」

「ありがとう」

教材をいくつかと薬品の入った籠を持って歩くジャックの後ろを私も追いかける。準備室を出て二人で廊下を歩きながらジャックはレオナ先輩が如何に心配して魔法薬学準備室まで駆けつけてくれたのかを話してくれたのだった。

2022.10.24