
Bookso beautiful yet terrific.
「一期一振、参る!!!」
そう言った彼は時間遡行軍に向かって一振りで飛び込んで行った。彼に庇われてその場にただ一人だけ残された私は両手を握って祈ることしかできない。荷物でしかない自分の存在が情けなかった。
それでも彼は、荷物でしかない主人を守るために自らの身体が傷ついても戦うことをやめなかった。
やがて、数ある時間遡行軍を倒し終えた彼は祈ることしかできない私の元へやって来た。彼の背後に見えるのは赤黒い血で作られた水たまりだけだった。
「主殿がご無事で何よりです」
そう言って微笑む傷だらけの彼に私は口を引き結んで頷く。
「さて、帰りましょうか。私達の本丸へ」
彼は今までの激闘を嘘のようになかったことみたいに私に接した。
「一期一振。お疲れ様でした」
労いの言葉を彼にかけると彼は一瞬だけ目を真ん丸とさせてから、すぐにやんわりと細めた。
「では、褒美を望んでもよろしいですな」
彼は血みどろの白い手袋を外してからすっと手を伸ばして私の顎を軽く摘む。
「本丸へ帰る前に、いただけますね?」
にこりと微笑む彼に私は口を引き結ぶ。酷い有り様の戦場のど真ん中で言ってのける彼の望みに私は苦笑いを浮かべてから目を閉じるのだった。
2022.10.24