Bookso beautiful yet terrific.

 10月31日。時の政府から呼び出された私は朝から出向き、政府庁舎からようやく解放されたのは夕方だった。これから時空の何処にある本丸へ帰ろかとうーんと伸びをした時、聞き慣れたというか聞き飽きた声が私を呼んだ。

「そこのかわいいお嬢さん。僕達とお茶でもいかがかな?」

私が振り向くとそこには柔和な笑みを浮かべる南海太郎朝尊がいる。その隣でめっちゃくちゃドン引きしている肥前忠広と、苦笑いを浮かべる陸奥守吉行もいるではないか。

「先生、それナンパってやつだろ」

「まあ、近いものではあるぜよ」

肥前のツッコミに対して南海先生はスルーだし、陸奥守は半笑いだ。三振り揃っている姿に私は首を傾げたくなるが、話の内容からしてお茶に誘ってくれたらしいことは確かだった。

「それじゃあ、ナンパされちゃいます」

私が思わず頬を緩ませると南海先生は手に持っていたパンフレットを手にるんるんと先を歩き出す。それを肥前が慌てて追いかけ始める。

「わしらも行くぜよ」

陸奥守に手招きされて私もついて行く。政府庁舎のある場所は時空の何処かにある本丸とは違いとても都会の雰囲気が溢れた場所だ。
 そのため、今日は何処もかしこもハロウィーン一色に飾りつけられていた。

「ここのカフェとやらが映えると加州くんに聞いてね。気になっていたんだよ」

とある一軒の店の前で南海先生が足を止めた。ちなみに、そのカフェはイートインコーナーが併設された洋菓子店だった。迷わず店の中へ足を運ぶ南海先生のあとを肥前がぎょっとしながら一緒に入って行く。陸奥守はお洒落な外観に感嘆の声を上げてから私も入るよう促した。
 店内に入ると流石ハロウィーンシーズンというべきか、内装もかわいいおばけやかぼちゃのイラストや飾りで溢れていた。ショーケースの中にはかぼちゃをふんだんに使ったハロウィーン限定の洋菓子が並んでいる。

「おい。こっち」

 肥前に呼ばれて振り向くと、先に店に入った南海先生と肥前がとっくに席に座っていた。というか、寧ろ肥前の方が表情には分かりづらいが瞳が輝いている。私と陸奥守も二振りがいる席につく。すると、勝手に注文したらしく私と陸奥守が席に座った瞬間に店員さんが洋菓子と湯呑みを運んできた。
 テーブルの上には、かぼちゃモンブランのパフェにかぼちゃのロールケーキ、かぼちゃのムースとレアチーズケーキ、パンプキンパイが並ぶ。そしてお供に湯呑みに入った玉露だ。

「さあ、食うぞ!」

「ちょっと待った肥前くん!まずは写真を撮らねば」

食べようとしたところを南海先生に止められた肥前が思いっきり顔を顰める。一方、南海先生は肥前を他所に政府から支給されているタブレット端末を使いパシャリパシャリと写真を撮り始めた。

「南海先生って、映えとか気にするタイプだっけ?」

「先生は新しいもんが好きじゃき」

私の疑問に特に表情を変えずに陸奥守が返すのでいつものことなのだろう。

「さて、調査は以上だ」

 うんうんと頷きながら南海先生が満足そうにタブレット端末の画面を指先でなぞる。これ調査だったのかあと心の中で思っていると、不意に、南海先生がタブレット端末を持ち上げた。パシャリ。シャッター音が鳴る。

「良い顔をしているね」

満足家な南海先生とは裏腹に私は口をぽかんと開け、陸奥守は苦笑い、肥前は眉を寄せている。しかし南海先生は私達の反応なんぞお構いなしに言ってのけるのだった。

「僕も悪戯がしてみたくなったんだ。今日はハロウィーンだからね」

その言葉に私と陸奥守と肥前はお互いを見て首を傾げる。一方、南海先生はそれはそれは楽しそうに小さく笑っていた。

「トリックオアトリート。なんて素敵な響きなのだろう」

ちょっとうっとりと言う南海先生のそれに若干怖いものを感じた。

2022.10.31