Bookso beautiful yet terrific.

 私の心臓がうるさく高鳴った。何ともないと誤魔化したいのに心は正直で、背後から伸びて私の身体を抱きしめる長い腕を振り払うことができなかった。

「ずっと、あなたにこうしたかった」

掠れた低い声がとんでもなく近い距離で聞こえる。

「こんなことを、望んではいけないことは理解している」

言葉と共にさらに抱きしめる腕に力が込められた。鍛えられた逞しい身体が衣服越しでも伝わってくる。どんなに訓練して鍛えても、女の私とは全く違う身体つきを感じて頬に熱が集まった。

「この気持ちに応えて欲しいわけではない。だからどうか、今だけは許してほしい」

彼の切羽詰まった声音に私はどうすれば正解なのか分からなかった。自分の両手を動かし、彼の手に触れる前でぴたりと止まる。私は、彼のマスターという立場だ。一挺の貴銃士だけを特別扱いするわけにはいかない。
 それでも、今だけならば。

「私も、許してください」

 止まっていた両手を動かしてそっと彼の手に触れた。彼の身体がぴくりと動く。

「私は、あなたのマスターです。それなのに、私は、あなたに恋をしている。これは決して褒められた行動ではない。どうか、今だけは目を瞑ってください」

私の言葉を聞いた彼が深く息を吸って、ゆっくりと吐いた。二人の間に沈黙が流れる。
 先に沈黙を破ったのはどちらだったのだろう。気がつけばお互いに口を開き、愛しい人の名前を噛みしめるように呼んでいた。

2022.11.02