
Bookso beautiful yet terrific.
ある日のお昼休みのことだった。昼食を終えたセベクが中庭に行くと、その中庭のベンチに座りスマホの画面を見つめて笑いながら話すエペルの姿を見つけた。セベクがエペルに近づいても、エペルはおしゃべりに夢中になっているらしく気づく様子もない。ちなみに、エペル口から紡がれる半数以上の言葉はセベクにとって何を話しているのかさっぱり理解できないものだった。
セベクに悪気があるわけではないのだが、興味本位が勝り、セベクはついエペルの背後に立つ。そのおかげで、エペルのスマホの画面にはエペルと共にセベクの姿も写り込んだ。それに気づいたエペルが驚いてセベクに振り向く。エペルは思いっきり顔を顰めながらセベクに小声で言った。
「今、電話中!」
早口でそう言ってからエペルは再びスマホの画面に向かって笑顔を向ける。セベクにしてみれば、何故自分が怒られなければならないのか納得できなかった。電話の邪魔をされたくないのなら、寮の自室でかければいいのに。
「あれ?エペルのお友達?」
ふと、散々呪文のような会話をしていた相手が、セベクにも分かる言葉で話し出した。エペルはちらりとセベクに再度振り向き、諦めたようにスマホの画面をセベクにも写るように向けた。
「そう、セベククン。クラスは違うけど」
画面越しにセベクに視線を合わせたかわいらしい顔立ちの女の子がひらひらと手を振ってみせる。
「はじめまして。いつもエペルがお世話になってます」
にっこりと微笑む彼女の姿にセベクは若干戸惑う。初対面の女の子と何を話せばいいのかと必死に頭の中を巡らせるが、残念ながら案は思いつきそうにない。
「僕の幼馴染だよ」
硬直するセベク対しエペルが画面の向こうの人物を紹介してくるのでセベクは我に返った。
「は、はじめまして!!!!!」
勢い余ってとてつもない大きな声で挨拶したセベクに隣にいたエペルは勿論、画面越しの彼女も目を丸くして驚いた。
やがて、彼女は表情を緩める。それから先程のようにかわいらしい笑顔を浮かべてから二人に声をかけてきたのだった。
「エペルにお友達ができてよかった。セベクくん!これからもエペルのこと、よろしくね」
彼女はばいばーいと手を振ってから一方的に通話を終了してしまった。
残されたエペルは通話が終了したスマホの画面を見つめてから溜息を吐く。それからセベクに向き直った。
「ところで。セベククンは僕に用事?かな?」
「あ、いや。そういうわけではない」
そっかと頷いたエペルとセベクはそれぞれ足を動かした。適当に世間話をしながら並んで歩きながらも、セベクの頭の中には先程のエペルの幼馴染の顔が残っている。
エペルと二人でいれば、仲の良い女子同士にしか見えなかったのだろうな。と、こっそりとセベクが思ったのだった。
2022.11.08