Bookso beautiful yet terrific.

 任務が終わり、士官学校へ戻って来た私は中庭のベンチに腰かけた。本当なら、今すぐ報告書を纏めてラッセル教官に提出しなければならないが、どうもやる気が起きない。ベンチの背もたれに体重をかけながら報告書に記入する文章を頭の中に浮かべるが、考えるのも嫌になって瞼を閉じた。

「どうしたの?マスター。電池切れ?」

私の隣に座る気配を感じた。だけど、振り向く気にもなれない。声からして、エルメだというのは分かる。

「しばらく待って。そうしたら、ちゃんと動くから」

「いいんじゃないかな。ゆっくりで」

そう言って柔らかく笑うエルメの姿が目に浮かぶ。

「何もしないでただ一日中ぼーっとするのも悪くないよ。そうだ。俺がマスターのお世話をしてあげようか?」

「いつかね。お願いするよ」

なんて返しながら濁す。私はエルメほど酷くないのでご遠慮しておこう。ドライゼの負担を増やすことになるのはかわいそうだ。
 さて、と瞼を開けてその場から立ち上がる。ようやくエルメの方を見ると、エルメはやっぱり穏やかに笑っていた。

「ありがとう、エルメ。少しだけやる気になった」

「少しだけなんだ?」

エルメが苦笑いする。それじゃあとエルメに背を向けると、エルメは間髪入れずに私を呼んだ。

「俺も今、やりたくない気分なんだよね。だから、暇潰しに付き合ってよ」

私がまたエルメを見ると、エルメはぽんぽんとベンチの上を叩いている。要するに、まだ休憩していなよという意味なのだろう。

「うん。そうする」

すっとベンチに座る。エルメと私の間には一人分の距離がある。
 その距離感のまま、私達は適当に世間話を始めたのだった。

2022.11.16