Bookso beautiful yet terrific.

 金曜日の夜、外出届けを出したルークは箒一本だけを持って出かけた。当然ヴィルはルークの行き先が気になった。外出届けまで出して荷物が箒だけなんて不思議だわ。そう思ったヴィルだったが、特にルークに尋ねることをしなかった。
 そんなこんなで日曜日の昼間のこと。撮影がオフの久々の休日にヴィルは羽を伸ばそうと麓の街へやって来た。最近流行りのブティック店に入ったり、オーダーメイドが売りの宝飾店に目移りし、自身がイメージキャラクターを務める化粧品店に招待がバレないようにしながら気になっているスキンケア商品を購入する。ヴィルの充実した休日の時間があっというまに過ぎようとしていた。だから、視界に捉えた人物にヴィルはぎょっとした。
 街行く人々がみんな着飾っている中、流れに逆らうように颯爽と歩くルークの服装はずいぶんと汚れが目立ち異様だった。相変わらずルークの持ち物は箒一本だけ。そして、ヴィルをさらに驚愕させたのはルークの隣で笑う女性の存在だった。彼女もまた、汚れの目立つ服のまま歩いている。そして、仲睦まじく歩く二人は一軒の店の中へ入っていった。
 ヴィルは親友のプライベートよりも自身の好奇心の方が上回ってしまい、つい、二人が入った店に向かった。本当ならそっとしておくべきなのだろうけれど、ヴィルだってまだまだ年頃の男の子だ。色々言い訳しても気になるものは気になるものである。
 というわけで、ヴィルは店の看板を見上げた。店の雰囲気からしてここはアウトドアグッズ専門店らしい。ヴィルはどきどきしつつも表情には出さずドアを開けて店内に入る。入口付近にはアウトドア用品がずらりと並ぶが、奥の方の棚には雰囲気ががらりと変わり猟銃や動物捕獲器が並んでいた。

「ああ!愛しの毒の君!私の帰りが遅くて心配になって迎えに来てしまったんだね。私はなんと幸せ者なのだろう」

 ヴィルが店内の品々を見回していると聞き飽きるほど聞かされている声に呼ばれた。呆れた顔を隠しもせずにヴィルがルークに振り向くと、ルークはいつもの調子で汚れた服のまま微笑んでいる。その服、どうにかならないの?と言おうとしたが、やめた。代わりにヴィルの視線がルークの隣にいる女性に向いた。

「別に迎えに来たわけじゃないわ。たまたま見かけたからよ。それよりも、」

ヴィルは視線だけでルークに問いかける。こちらは?という意味を込めた視線を瞬時に察したルークはにこやかに彼女を手で示した。

「彼女はこの店主の娘さんで、私のバディさ」

「バディ?」

ルークの言葉にヴィルが首を傾げた。彼女はルークの説明に補足するよう遠慮がちに口を開いた。

「ルークさんとは狩り仲間なんです。ルークさんは狩り専門、私は狩り道具の調整を主にしています」

ヴィルは納得する。どうやら二人とも狩りを終えて帰ってきたらしい。それは二人とも汚れているわけだわとヴィルは内心思う。

「あ、あの!ヴィル様のお話はルークさんから窺っています。実は、その、」

彼女はあわあわとしたかと思えば、物凄い勢いで店の奥の方に引っ込む。それから数秒もしないうちに戻ってきてはヴィルに向かって何冊もの写真集とペンを差し出した。

「私!ヴィル様の大ファンなんです!ご迷惑を承知でお願いします!サインください!!!」

勢いよく頭を下げる彼女の姿にヴィルは呆気に取られる。だけど、彼女の手が小刻みに震えていることに気づいてヴィルの頬が緩んだ。

「ええ。いいわよ」

写真集とペンを受け取ってから、ヴィルは彼女に向かって手を差し出す。驚いた表情を浮かべる彼女にヴィルは笑ってみせた。

「アタシの大ファンなら、次に会う時までに肌荒れを治しなさい。ざらざらした手を握るのは嫌だけど、今日は特別よ」

彼女はぱあっと表情を明るくさせながら首をちぎれそうな勢いでぶんぶん縦に振る。それから緊張した両手をなんとか動かしてヴィルの手を噛みしめるように握手した。

「実にボーテ!!!素晴らしいよ!!!」

 そんな二人の姿を見ていたルークが、大層嬉しそうに微笑んでいたのだった。

2022.11.19