・自由の森TS
赤月「ふわぁ〜、今日もいい天気だなぁ。」
早川「春眠、暁を覚えずとは、よく聞くけど、初めて目の当たりにしたわ。」
赤月「あっ、早川さん。私は別にサボってた訳じゃなくて、体調を整えてたんだよ。」
早川「確かにアスリートに休息は必要ね。…でも、他人にあまり、スキを見せない方がいいわよ。」
赤月「私って、スキだらけなのーっ?」
早川「私から見ればね。…そんなにスキだらけじゃ、他人からナメられるわよ。」
→「気をつけなくっちゃ!」
赤月「なるほど、今度から気をつけなくっちゃ。ナメられたらイヤですもんね。」
早川「そうね。」
→「気にしすぎですよ〜。」
赤月「早川さんったら、気にしすぎですよ〜。」
「だって、周りにはそんなイヤな人って、いないじゃないですか。」
早川「…ま、田舎者のあなたにはわからないかもしれないけど、渡る世間には鬼だっているのよ。」
赤月「鬼かぁ…?うーん、練習の鬼ならいっぱいいるけど…。」
早川「ああ、もうっ!同じスクールに通う者として忠告してあげてるというのに!」
赤月「スクールって言えば、早川さんって、昔から自由の森でやってたんですか?」
早川「……。」
赤月(…あれ?私ってば、なにかマズイこと、聞いちゃったのかな?)
早川「…いまのスクールは2ヵ所目よ。」
赤月「2ヵ所目?」
早川「それより前に通っていたスクールは妙な縦社会ができていて、なじめなかったわ。」
「強くなれば強くなるほど、風当たりは強くなって行くしね。…いじめや中傷も味わったわ。」
赤月「いじめ!?…じゃあ、靴の中に画バリ、入れられちゃったとか?」
早川「…ガバリってなに?」
赤月「えっ?掲示板に紙とかを止める、丸くて小さいアレですよ。」
早川「…もしかして画鋲のこと?」
赤月「あっ、そうとも言いますね。」
早川「そうとしか言わないわ。少なくとも東京ではね。」
赤月(私の田舎だけなのかなぁ?)
早川「…靴に画鋲なんてこともあったけど、何より堪えたのは精神的な嫌がらせだったわ。」
「コーチのお気に入りだとか、根回しをしてるとかっていう、根も葉もない噂。」
赤月「そんな、イヤな人、テニスでねじ伏せちゃえばいいんですよ!」
早川「もちろん、叩きのめしたわ。そして、スクールの代表として大会に出られるまでになった。」
「だけど、その大会の決勝で、今まで経験したことのないような屈辱的な敗北を味わったのよ。」
赤月「まさか、その相手って、…那美ちゃん!?」
早川「ええ。…そのとき悟ったの。このスクールにいては強くなれないって。」
赤月「それで、今のスクールへ移ったんですか。」
早川「…結局、彼女とは小学生時代、通算で5度当たって、1度も勝てなかったけどね。」
「6度目の対戦はスッポカされてしまうし…。きっと、運命の女神に嫌われてるのかもね。」
赤月「…イヤなこと、思い出させてごめんなさい。」
早川「別にいいわ。」
「運命の女神がそっぽを向いてようと髪の毛、鷲掴みにして、実力で振り向かせてやればいいことだし。」
赤月「はは…そうですね。(相変わらず、ノリが違うな、この人は。)」
赤月「あっ、そろそろ練習の準備をしないと!じゃあ、ここで失礼します!」
早川「じゃあね。」