1回目
赤月(あれ、ここってどこなんだろ?なんだか妙に時代掛かった家並みが続いてるんだけど…。)
(それに、なんで私ったら、こんな格好してるの!?この浅葱色にダンダラ模様って。)
(う〜ん…。)
(…あっ、思い出してきた!私は、とある事情から新選組に入隊してたんだっけ!)
(なんで今まで自分の設定を忘れちゃってたんだろ?…ま、いっか!)
赤月(…よし、あとちょっとで完成。いっぱい食べてもらって、頑張ってもらわなくちゃ!)
(…って、もちろん私も頑張んなきゃいけないんだけど。)
桃城「よう、おはようさん。今朝の料理当番は赤月か。」
赤月「おはようございます、桃城先輩。もうできますから、つまみ食いはダメですよ。」
桃城「…へへっ、ばれたか。お前の作るメシ、うまいんだよな。男にしとくの、もったいねぇや。」
赤月(黒船がやってきたのは10年前…。ずっと鎖国政策を続けてきた幕府が開国をしてもう9年たつ…。)
(これまで300年も日本を支えてきた幕府を倒そうって人たちが現れたのは、たぶんその頃からだったと思う。)
(『討幕派』って呼ばれてるその人たちも日本を良くしたいと考えているんだろうけど…。)
(でも、そのために、江戸や京で大きな争いになってたりする。)
(その関係で、街の雰囲気も悪くなって、治安も悪くなってきちゃった。)
(だから幕府は、そんな討幕派に対抗する組織として、新選組を作ったんだ。)
(都に入ることを禁止されている討幕派を、見つけて捕まえるのが私たち新選組の役目。)
(どちらもこの日本を良くしたいって気持ちは一緒だけど、やっぱり幕府がって考えの新選組と…。)
(幕府じゃ無理だって考えている討幕派じゃ、対立するしかないみたい。)
(仲良くやっていけばいいのにって思うのは、私が女の子だからかな?)
(…実は新選組って女人禁制なのよね。世のために役に立ちたかったからそのことを隠して入隊してる。)
(今日まで女の子だってこと、バレずにやってきたけど、これからも気をつけなくちゃ!)
(でも、昨日もケガして先輩たちの足を引っ張りそうになって、助けてもらっちゃった。)
大石「あ、もうケガはいいのか?赤月も大事な戦力だ。気をつけてくれよ。」
赤月「はい、大石副長。ご心配ありがとうございます!」
手塚「あまり足を引っ張るようなら、他の者と交代させるまでだ。」
→「いままで以上に気をつけます。」
赤月「手塚局長!いままで以上に気をつけますので私も一緒に戦わせてください!」
手塚「…そうか。わかった。」
→「足なんか引っ張ってません!」
赤月「手塚局長!私、足なんか引っ張ってません!私も一緒に戦わせてください!」
手塚「…いいだろう。」
→「私の代わりなんていません!」
赤月「手塚局長!私の代わりなんていません!」
手塚「うぬぼれるな。慢心は身を滅ぼすぞ。」
赤月「す、すみませぇん。 (トホホ…叱られちゃった。)
赤月 (手塚局長…きびしいなぁ。でも、当然だよね、大石副長にまで心配かけてる場合じゃないよ。)
(みんな、幕府を守るために一生懸命なんだから!)
乾 「…今夜ここに討幕派が集まっていることは調査済みだ。」
「ヤツらの計画が知りたい。逃がすことなく、捕まえてくれ。じゃあ手塚、指示を頼む。」
手塚「河村、乾、海堂は裏へまわれ。逃げたヤツをまかせる。あとの者は俺につづけ。」
「捕まえることも重要だが、刃向かう者には容赦するな。では、油断せずに行こう。」
一同「はいっ!」
赤月(容赦するな、か。…私に、そんなことができるかな。)
→(なるようになれ、だ。)
赤月(なるようになれだ!いざって時は適当に切り抜けよう。)
→(人は倒したくない。)
赤月(人は倒したくない…。けど、それじゃここにいる意味がなくなっちゃうもんね。)
→(もちろん、できるよ。)
赤月(もちろん、できるよね。今度は足を引っ張らないようにちゃんとやらないと。)
手塚「新撰組局長、手塚国光だ。旅券をあらためさせてもらう。」
宍戸「新撰組!?」
滝 「…くっ。どうして、ここがわかったんだ?」
☆菊丸
リョーマ「いま、窓から2、3人逃げたっス。」
大石「追うぞ、英二!」
菊丸「ほいっとね。」
赤月「菊丸せんぱ〜い、私も行きます!」
菊丸「え〜〜〜?大丈夫かにゃあ?」
赤月「え?…きゃああああっ!」
菊丸「もう、だから言ったのにさ。あそこが2階だってこと、赤月、忘れてただろ。」
赤月「いったーーーい。おしり、打っちゃった〜。」
菊丸「女の子でもないのに、おしり打ったくらいで騒ぐなよぉ。」
赤月「は、はい。(女の子ですよぉ!…とは言えないし。)」
菊丸「残念、無念、また来週〜!」
赤月「右の木の影にも2人います!」
菊丸「うんにゃ。見ぃ〜えたっ!」
「サンキュー。ナイスサポート!」
赤月「菊丸先輩、まだ後ろにいます!」
菊丸「ほいっとね。」
赤月(で、出た!菊丸印のステップ!)
菊丸「ふ〜〜〜。これで、だいたい終わったかにゃ?」
「お前、2階から飛び降りただけでもうバテバテさん?」
赤月「…菊丸先輩って、」
→「すごい、かっこいいですね!」
菊丸「やっぱりぃ?にゃはははは。」
「…でも、できればそういうことは女の子に言われたいなぁ。」
赤月「…すみません。(本当は女の子なんですけど…。)」
→「サポートなしで戦えるんですか?」
菊丸「う〜〜〜。腰抜かしてたヤツに言われたくないぞぉ!」
赤月「こ、腰なんて抜かしてないですよ!立てなかっただけです!」
菊丸「おんなじことじゃんか。」
赤月「…はい、すみません。」
→「戦うの、怖くないですか?」
菊丸「そりゃあ、怖いよ。相手だって必死だしさぁ。」
「でも、俺たちの信念をつらぬきとおせない方がよっぽど怖いって。」
「…な〜んて、全部大石のウケウリだけどねん。」
赤月「プッ…。菊丸先輩ったら。」
菊丸「…ひょっとして赤月、まだ誰とも戦ったこと、ないのか?」
赤月「…ないです。」
菊丸「それで、よくこれまで無事だったなぁ。すっごい強運だぁ。」
赤月「あははは、そうかもー。」
菊丸「もう大石たちも行っちゃったみたいだな。みんなのところに戻ろうぜい。」
赤月「はい。」
乾 「…ヤツら、都に火をつけるつもりだったようだ。騒ぎに乗じて天皇を都から連れ出すという計画だった。」
赤月(…ひどい。都に火を放つ計画なんて!)
→(都の人々はどうなるの!)
赤月(ここに暮している人たちがどうなるのかは、おかまいなしなの!?)
(先手を打って、計画を潰せてよかった。)
(やっぱり、私たちがしていることは正しいことなんだよね。)
→(自分たちも危ないかもしれないのに。)
赤月(自分たちも火事に巻き込まれるかもしれないのに。)
(そうか。討幕派は、なりふりかまっていられないくらい焦ってるのかも。)
→(これで討幕派も大人しくなるかな。)
赤月(この計画をバラしちゃえば、討幕派の評判はガタ落ちだよね。)
(そうすれば、少しは大人しくなるかもしれないな。)
越前「阻止できた…ってことっスね」
乾 「ああ。数人逃がしたが、4人捕まえて、37人倒した。俺たちの方はケガ人が2人だけだ。」
手塚「よし、屯所に戻るぞ。みんな、よくやった。胸を張れ!」
一同「はいっ!」
手塚「…ん?お前は…『氷帝軍団』の跡部!」
跡部「ア〜ン?手塚、急進派のヤツらを倒したか。ご苦労なこったな。」
「だが、討幕派最強の志士は俺たち『氷帝軍団』だ。そうだろ、樺地?」
樺地「ウス。」
跡部「どうやら何人か急進派と遊んでたらしいが、無事に逃げてきたようだな。」
宍戸「激ダサだぜ。」
日吉「幕府を倒して下克上だ!」
忍足「なぁ…。こいつらホンマに強いんか?」
桃城「ああっ!あいつら、さっき逃げたヤツ!」
跡部「滝、お前、つけられてたようだぜ。藩に戻って大人しくしてろ。代わりにジローを呼び寄せる。」
滝 「…!」
跡部「返事はどうした?」
滝 「……わかった。」
赤月(すごい、言葉一つで簡単に人を動かせるなんて…。)
→(相当腕が立つんだろうな。)
赤月(敵わないから従ってるんだろうし、相当、腕が立つんだろうな。顔をよく覚えておこうっと。)
→(エラそうな人!)
赤月(エラそうな人!こんな上司じゃ、苦労してるんだろうな。)
→(この人がまとめ役なんだ。)
赤月(この人がまとめ役で間違いないね。手塚局長とは違う威圧感といい油断できない相手だ。)
跡部「いずれお前たちを倒し、幕府を倒してやる。それまでせいぜい急進派を捕まえてるんだな。」
海堂「フシュウゥゥ…。いずれ、だと?今すぐ決着をつけてやるぜ。抜け!」
乾 「待て、海堂。いまやっても負けるだけだ。ヤツら、鉄砲を持っている。」
乾 「(やはり、死の商人・グラバーから新兵器を買っているという噂は本当だったのか。)」
海堂「鉄砲だとぉ?」
跡部「熱くなるなよ、ア〜ン?今日のところは挨拶だけだ。行くぞ、樺地。」
樺地「ウス。」
赤月(『氷帝軍団』…。)
(スチル)
赤月(…今日の相手よりもっと強い志士がいたんだ…。)
(怖い…。これからは、すごく大変な戦いになりそうな気がする…。 2回目
赤月(うん、このくらい絞ればいいかな?)
「はい、海堂先輩。」
海堂「うっ…。よせ、自分でやる。」
赤月「あ、ごめんなさい。しみましたか?」
海堂「大丈夫だ。俺より、桃城の方が重傷だ。アイツを診てやれ。」
赤月「はい。」
(討幕派にはカゲキな急進派と、話し合いでやろうっていう慎重派がいたんだよね…。)
(急進派は、あのあと天皇の住まい、御所に大砲を撃っちゃったし、京の都にも火をつけて…。)
(強風で火事が広がっちゃって、都は半分焼け野原。大変なことになっちゃった。)
(賊軍・長州を征伐する…なんて私たちも駆り出されたけど…。)
(跡部さんがまとめ役になっている『氷帝軍団』が加わった討幕派はどんどん勢いを増している。)
(この前、とうとう対決したけど…私たち新選組は、討幕派の新兵器の前にあっさり敗北。)
(多いときは100人をゆうに超える隊士がいた新選組なのに、いまは70人もいない。)
(入隊試験が厳しいから、なかなか増えないのかな…あれ?私、入隊したころのこと覚えてないよ?)
(ま、いっか。私の剣術の才能…可能性を見抜いた手塚局長が入れてくれたんだよね!)
大石「ああ、ケガ人の看病か?赤月1人で手は足りてるのかな?」
赤月「はい、大石副長。私は戦いでは、みんなに助けられてばかりですから…。」
「だから、みんなのお役に立てるならこのくらい!」
手塚「少しは安め。あまり張り切りすぎて、戦いのときに役に立たないのも困るぞ。」
赤月「はい、手塚局長!気をつけます!」
手塚「わかっているようだな。なら、みんなのことはまかせる。」
赤月「はいっ!あとで手塚局長も、来てくださいね。ひょっとして、肩が痛むんじゃないですか?」
手塚「…よく気が回るようになったな。だが、俺はなんともない。お前の気のせいだ。」
赤月(いろいろ大変だから肩がこってるかなって思ったんだけど。)
(もしかして手塚局長、本当に肩の調子が悪いのかな?)
→(軽いケガしてたのかも。)
赤月(ひょっとして、ケガしてるのかな。軽くても手当は重要だし、後できちんと聞いてみよう。)
→(もしかして、古傷?)
赤月(もしかして、古傷があるとか。大丈夫なのかな?まあ、あんなに強いんだしあるとしても、完治はしてるだろうけど。)
→(やっぱり肩こりだよ。)
赤月(ううん、そんなことないよね、だって、あんなに強いんだし。でも肩こりはありえるなぁ。…ま、いっか。)
桃城「あいててててて…。もうちょっと優しくしてくれよ。こう、羽で触るように…な?」
赤月「ご、ごめんなさい。…こうですか?」
河村「桃、ムチャな注文つけてないでガマンしなよ。赤月、困ってるじゃないか。」
桃城「ま、しょうがねぇか。医者じゃねぇんだしな。」
「…けど、タカさん、あんな新兵器、アリっスか?」
河村「うん、驚いたよ。鉄砲だけじゃなくて、大砲まであんなに持ってるなんてね。」
菊丸「もう、いまや槍や刀で戦う時代じゃないのかにゃあ。どう思う、おチビ?」
リョーマ「別に…。勝つためなら、俺はなに使ってもいいっスよ。」
不二「刀で戦う時代じゃない、か…。」
手塚「…?不二…?…気のせいか。」
乾 「みんな、集まってるな。ちょうどいい。」
「ヤツらの鉄砲や大砲に対抗するために、準備を進めていた新兵器があるんだが。」
「導入するべきかどうか、意見が聞きたい。赤月、どうだろう?」
→「武士はやっぱり刀ですよ!」
乾 「そうか、やはり俺たちはどこまでも武士だからな。じゃあ、この話は忘れてくれ。」
→「新兵器を導入しましょう!」
乾 「そうか。好奇心の強いお前ならそう言うと思っていた。じゃあ、これから使い方を説明しよう。」
・菊丸
乾 「菊丸、これがお前の新兵器、『バズーカ』だ。」
菊丸「うおぉ、でっかいにゃあ。鉄砲みたいなものかな?」
乾 「そうだな、扱い方は同じだ。城の石垣でも崩せるぞ。」
赤月「あの〜〜〜。私のは、ないんですか?」
乾 「お前に扱わせると、誤作動を起こしそうであぶないからな。」
赤月「そんなの、やってみなくちゃ、わからないですよ〜。」
(…でも、たぶん…きっと…図星…!)
手塚「みんなも知っているとおり跡部率いる討幕派のために幕府は存続もあやうくなっている。」
「一気に形勢を逆転させるために、ここで直接対決をしかける。」
「今回はかなり無謀な戦いになる。参加を強制するつもりはない…。」
「戦いが怖い者はこの場から立ち去ってもらってかまわない。」
リョーマ「!」
不二「!」
菊丸「!」
桃城「!」
海堂「!」
乾 「!」
大石「!」
河村「!」
手塚「聞くまでもなかったか…。」
不二「手塚、ボクたちは仲間だろ?置いて行かれたって、ついていくよ…どこまでも。」
リョーマ「無謀かどうか、やってみなくちゃわかんないっスよ。」
→(やるしかない!)
赤月(そうだよ!ここまで来て、後戻りなんてできないよね。)
(私だって新撰組の一員なんだ。最後まで、戦い抜くぞ!)
→(…抜け出しちゃおっかな。)
赤月(抜け出しちゃおうかな…。そんな命がけの場所に私がいたら邪魔になるだけかも…。)
(って、ダメダメ!弱気になってる場合じゃない。私は私なりに、戦い抜こう!)
→(無謀だよ!)
赤月(無謀だよ!氷帝軍団の新兵器と直接対決なんて。)
(…でも、これは避けられない戦いなんだ。逃げるわけにはいかない!)
手塚「よし、各自、最終決戦にそなえて充分な休息をとっておけ。ケガ人は置いて行く、いいな。」
一同「はいっ!!」
赤月(はあ…なんだか疲れちゃったな。やっぱり、ケガ人のお世話で張り切りすぎちゃったのかな。)
(でも、あとはお風呂に入って、それからお風呂そうじをするだけだから、大丈夫。)
(明日の朝には、ばっちり元気が戻ってること間違いなし!)
(…っと、中にはもう誰もいないよね…?)
(スチル)
☆菊丸
菊丸「巴、今日は看病で大変だったろ?風呂そうじはこのオレにおっまかせー、なのだ。」
「済んだら教えて…………。あれぇ?えっ?…うそだにゃあ!?」
赤月「きゃあああああああっ!やだ、みんなもう入ったと思ったのに!」
「なんで菊丸先輩…!」
菊丸「話はあとあと!とにかくいまは着物を着てくれよぉ!」
赤月「あの…その前に、あっち向いててください!」
菊丸「うぉおっ!…ゴメン!」
菊丸「はあ〜〜〜。巴、女の子だったんだ。びっくりしたなぁ。」
赤月「ごめんなさい、私ずっとみんなを、だましてました。」
「虫のいいお願いですけど…みんなには黙っていてください!お願いします!」
菊丸「お、おう、わかったよん。」
赤月「…よかった。」
菊丸「わああっ、大丈夫かぁ?」
赤月「安心したら、めまいがしちゃって。」
菊丸「そっか、こんな男所帯で頑張ってきたんだもんな。」
「刀ふりまわすのだって大変だっただろ?」
「どうして…とと、これ以上は聞かない方がいいよな。事情はみんないろいろあるし。」
赤月「すみません…。ありがとうございます。」
菊丸「いいってこと。仲間だろ?できれば、もうちょっと早いうちに言ってほしかったけど。」
「ひょっとしたら〜、でもまさかな〜って思ってたんだよな。お前、俺の姉ちゃんたちみたいなんだもん。」
赤月(う…お姉さんがいるんじゃやっぱりそう思うんだ。)
「仲間…ですか、私。女の子なのに。」
菊丸「関係ないじゃん。男でも、女でも。一緒に戦った仲だろ?」
赤月「はい!」
菊丸「ここで見張っててやるから、風呂入れよ。あったまるぞ。」
赤月「はい。じゃあ、お願いします!」
(仲間かぁ…一緒に戦った仲…。…あれ?嬉しいのに、なんかさみしいような…。)
(なんだろう。菊丸先輩…女の子だってわかって、私のことどう思ったんだろう…?)
(どうして、そんなこと気になるのかな。いいじゃん、仲間って言ってもらえたんだし。)
(…違う。私…女の子として見てもらいたいんだ、菊丸先輩に。好き…みたい、菊丸先輩が。)
(先輩の気持ちを確かめたい…。すごく…気になる。…どうしよう!)