白紙

           

貴族

1回目 ・初日
赤月「…ふ、ふわ〜ぁあ、よく寝たなぁ…。いま何時だろ?」
  「…って、ここどこ!?なんだか、すごくゴージャスな部屋なんだけど…。」
  「それに、なんで私ったら、こんなおしゃれ、かつ、恥ずかしいパジャマを着てる訳?」
  「う〜ん…。まさか私って、実はフランスの王女様だったとか?」
  「…あれっ、なんだか、そんな気がしてきたかも!」
  「そうだ!フランス王女だったんだっけ、私!」
  「なんで今まで自分の設定を忘れちゃってたんだろ?…ま、いっか!」
  (あ、こんな町の娘みたいな話し方してたら、またお父様やばあやに叱られちゃう!)
  (王女たる者、ひとりでいるときも、立場を忘れちゃいけないのよ!)
  (とは言え、連日遅くまで舞踏会だと神経が参っちゃうよ。作り笑いって結構、疲れるんだよね…。)
  (はっ!いけない、いけない!王女の私がにこやかに笑うのも、国が安定してる証拠になるのよ。)
  (王家に生まれた私のお仕事みたいなものなんだから、ガマンしなくちゃ!)

・2日目以降
赤月「…ふ、ふわ〜ぁあ、もうお昼ぅ?まだ眠いよぉ。」
  「夕べも遅くまで舞踏会だったから、仕方ないかぁ。さて、今日のブランチはなにかな〜?」
  (あ、いっけない。こんな町の娘みたいな話し方してたら、またお父様やばあやに叱られちゃう!)
  (私はフランスの王女だもん、ひとりきりでいるときも、立場を忘れちゃいけないのよ!)
  (でも、パーティーで笑ってるのってけっこう疲れるんだよね。それも、ほとんど連日なんだもん…。)
  (はっ!いけない、いけない!王女の私がにこやかに笑うのも、国が安定してる証拠になるのよ。)
  (王家に生まれた私のお仕事みたいなものなんだから、ガマンしなくちゃ!)

赤月「あら、跡部伯爵。ごきげんよう。やはり今夜は、あなたもいらしていたのね。」
  (この人は侯爵家の跡取り息子なんだけど、まだ家を継いでいないから本人の身分は伯爵なのよね。)
  (お父様のお供で外国に行くことが多くて、その功績で伯爵の位をもらってるんだから、すごいわ。)
跡部「王女様にはごきげんうるわしく。…みなが、お声が掛かるのを待っております。さあ…。」
赤月(そうなのよね。私より身分が低い人が、先に私に声をかけてはいけないの!)
  (おかげで、名のある貴族には、みんな声を掛けないという訳。…疲れるわぁ。)

  「そうね。みなさんにご挨拶しましょうか。」


→「エスコートは結構よ。」
赤月「エスコートは結構よ。」
跡部「そういう訳には参りません。」
赤月「…わかったわ。では、跡部伯爵、エスコートのほど、よしなに。」
跡部「はい。」
→「エスコートしてくださるわよね?」
赤月「もちろん、エスコートしてくださるわよね?」
跡部「仰せのままに。」

赤月「ありがとう。」


赤月(今夜は遊学中の外国の王子も来てるし、国中のほとんどの貴族が来てる…。)
  (はぁ、ユウウツだなぁ…。だって事実上のお見合いなんだもん。)
  (あっと、いけない!…笑顔、笑顔っと!)
  「ごきげんよう、宍戸様。お国はデンマークでしたわね。フランスはいかがかしら?」
  (この人がデンマーク王子で、フランスに遊学中。何人目の王子だっけ?ヤバッ、忘れた!)
  (…でも外国に遊学出来るなんて、いいなぁ。うらやましい。)
宍戸「たいへん豊かな国ですね。国土が広くて、うらやましいです。それに、王女様がお美しい。」
赤月「まぁ、お上手。王宮主催の今夜のパーティー、楽しんでくださいね。」
  「鳳先生、今夜の曲はあなたが作曲したのかしら?」
  (彼は宮廷楽士…王宮で雇っている作曲家で、指揮もするし、自分で楽器を演奏することも出来る。)
  (これってポイント高いよね。女性のピアノに合わせたヴァイオリン演奏は貴族男性のたしなみ、だも
の。)
  (私もたまにピアノを教わってるから『先生』なのよね。)
鳳 「こ、これは、王女様。なにか、お気に召さない音がありましたでしょうか?」
  「この前お教えしましたが、これはウィーンで最近はやり出したワルツという音楽ですが…?」
赤月「ふふっ、誉めているのよ。ダンスのワルツはあまり好みではないけれど…。」
  「曲だけ聞くなら悪くないわね。(ワルツって身体を密着させるから私にはまだ…ねぇ?)」
鳳 「ありがとうございます。」
赤月「あら、近衛連隊長の忍足准将。ごきげんよう。いつも警備、ご苦労さまです。」
  (王族の護衛をするのが近衛連隊の仕事で、この人は隊長さん。)
  (まだ若いのに准将なのは、貴族だから、なんだけどね。)
忍足「もったいないお言葉です、王女様。」
赤月「今日は誰かの護衛?それともあなたもパーティーに招かれていらしたのかしら?」
忍足「ホンマ、お答えしにくいことを聞きますなぁ。…ここはご想像にお任せいたします。」
赤月「あら、教えてくださらないの?まぁいいわ、許してあげる。」
  「向日子爵、ごきげんよう。今日はとりまきは一緒じゃないのね。」
  (この人は伯爵家の長男で、いわゆる『かわいい』タイプだから、年配のご婦人に大人気なのよね。)
  (ウワサはいろいろ聞いてるけど、まぁウワサだもんね。)
  (それでも、本人が子爵の位をもらってるのは、伯爵家が由緒正しいから…なのよ。)
向日「みんな、王女様にお声を掛けていただける身分ではないので、逃げて行ってしまいましたよ。」
赤月「あら、私のせいだっておっしゃるの?」
向日「これは失礼いたしました。でも、あなたの美しさに負けを認めて去ったのは事実です。」
赤月「くすっ。そういう甘い言葉で、みんなをとりこにするワケね。」
  「あら、樺地中将。もうフランスに戻っていらしたのね。久しぶりの故郷はいかが?」
  (海軍将校の彼は、カリブ海まで行くこともあるから、長く国をあけているのよね。)
樺地「…ウス。少し…街の雰囲気が変わりました。」
赤月「あら、そうなの?あまり街には出してもらえないから知らなかったわ。」
  (さて、と。どうしても今日、挨拶する必要があったのは今の人たちだけよね。)
  (はぁ…。この人たちのうち誰かを夫に選びなさいだなんて、お父様ったら…。)
  (まだ結婚なんて考えられないよ。それに、お隣の国イギリスと違ってうちは女王の前例がないんだし。)

  (つまり、次の王様を選べってことになるのよね〜。)


→(結婚なんて早いよ。)
赤月(まだ結婚なんて考えられない。でも、私の立場上、そうも言ってられないし。)
→(難しい問題よね。)
赤月(いまの人たちのうち、誰がこの国を治めるのにふさわしいか。…難しい問題よね。)
→(さっぱりわかんない!)

赤月(もう、責任重大すぎ!誰を選んだらいいのかさっぱりわかんないわ!)


赤月(他の貴族の娘だと、親の決めた相手と結婚するのが当たり前だから選べるだけまだマシだけど…。)
  (も〜〜〜、ど〜しよ〜〜〜!王族の宿命とは言っても…。私の好みで決めていいのぉ!?)
  「きゃっ!」
日吉「危ないっ!」
跡部「貴様、王女の体に触れるとは!身分をわきまえろっ!」
赤月「ねぇ、跡部伯爵。よそ見してぶつかったのは私の方ですよ。彼は助けてくれたんじゃない。」
跡部「ですが、こやつはたかだか1代男爵。王女様と口をきける身分ではありません。」
赤月「あら、じゃあ私があのまま床に倒れて、ケガをした方がよかったっておっしゃるの?」
跡部「そ、そんなことは…!」
芥川「あははははっ。跡部、オメェの負けだろ。王女様を助けたんだから褒美をやったらどうだ?」
跡部「ジロー!?お前、家を捨ててどこぞの画家に弟子入りしたんじゃなかったのか?」
芥川「ああ。お師匠様が宮廷画家として招かれたんで、弟子の俺も王宮に置いてもらってるんだ。」
赤月「あら、ふたりとも知り合い?ジローさんって、もともとは貴族だったの?」
跡部「王女様、ジローをご存じでしたか。」
赤月「この前、肖像画を描いてもらったわ。まぁ、私が練習に付き合ってあげた、ということね。」
芥川「おかげさまで、いい絵が仕上がりそうです、王女様。」
赤月「そう?期待して待っていてよ。あ、そうそう。男爵、え〜っと…?」
日吉「日吉と申します。」
赤月「ありがとう、日吉男爵。おかげでケガをしなくてすみました。」
日吉「もったいないお言葉です、王女様。」

跡部「王女!軽々しくお声を掛けていい相手ではないと、先程から…!」


→「跡部伯爵をさとす」
赤月「落ち着いてくださるかしら、跡部伯爵。この者を許すのも、貴族の器量かと。」
跡部「……はぁ。」
→「跡部伯爵をたしなめる」
赤月「ねぇ、跡部伯爵。あなた、ばあやよりも、うるさいわ。私って、お礼も言えないのね。」

跡部「ば、ばあやより!?…王家の権威が損なわれると申し上げているのです、王女!」


忍足「王女様、おケガがなくてなによりでしたな。」
跡部「忍足、お前がついていながら、どういうことだ?」
忍足「目を離したんは近衛兵です。あとでキツく叱っときますからそこまで声をあらげんでも…。」
赤月「ケガしてないのだからいいわよ。忍足准将、叱ると言ってもほどほどにね。」
忍足「ありがとうございます、王女様。」
赤月(ふぅ、せっかくのパーティーなんだし、どうせなら楽しくやらないとね…。)

跡部「フランス王国の栄華を祝して、乾杯。…そして、王女様に永遠の忠誠を!」
一同「永遠の忠誠を!」
跡部「おや、お疲れですか?お顔の色が、冴えないようですが…。」
赤月「少し、ひとりになりたいわ。テラスにいるから…」

赤月(あー、疲れちゃった。王女するのも大変よねー。)
☆鳳 鳳 「こんなところにいらしたんですか?風にあたりすぎると毒ですよ。」
赤月「あ、鳳先生…。少し、人いきれで気分が悪くなってしまって…。」
鳳 「…先生はよしてください。俺はただの地方貴族の息子です。」
  「それより、ジュースをお持ちしましたが、飲みますか?」
赤月「あ、ジュース!ありがとうございます。もう、喉カラカラで。」
  「ふぅ。少し落ち着きましたわ。ありがとうございます。」

  「…それで、さっきの話ですけど。」


→「先生は先生よ。」
赤月「ピアノの先生だから『先生』ってお呼びしてるんです。」
  「やめてほしいのなら、鳳先生もレッスンのときみたいに話してください。」
→「身分は関係なくてよ。」
赤月「これには身分は関係なくてよ。貴方は私の先生だから『先生』ってお呼びしてるんです。」
  「やめてほしいのなら、鳳先生もレッスンのときみたいに話してください。」
→「他の呼び名がよろしくて?」

赤月「他の呼び名がよろしくて?貴方だけの、特別な。」


鳳 「女官や兵に聞かれます。されごとはおやめください。」
赤月「今をときめく有名作曲家の先生が、どうしてこんなに腰が低いのかしら?」
鳳 「みんなの要求どおりの曲を書いているだけです。だから、気に入られている…。」
赤月「…先生が書きたいのはもっと違う曲なんですか?」
鳳 「前にザルツブルグから来た作曲家がいたでしょう?彼のような天上の音楽を書いてみたいよ。」
  「俺にそこまで才能があるかどうかわからないけど…。」
赤月「ザルツブルグから?ああ、かなり前に来たあの人…。雇ってあげられなかったけど。」
  「すごく子供っぽい人だったわ…。大声で笑って、下品で。買いかぶりすぎじゃない?」
  「ザルツブルグに戻ってから、最近は低俗なオペラばっかり作ってるって言うじゃない。」
鳳 「…子供っぽい態度で、人と折りが合わずに損をしているだけですよ。彼は神がつかわした奇跡です。」
赤月「まぁ、単純なメロディだけど、きれいな曲ではあるわね。ピアノの練習曲も悪くないし。」
鳳 「いずれ、バッハと並ぶ大作曲家だと世間にも知れわたるようになると俺は確信していますよ。」

赤月「天上の音楽…天国の音楽かぁ。」


→「そんなの、ある訳ないですよ。」
赤月「そんなの、ある訳ないですよ。今まで書き上げた人がいないし、…歴史が無理だって言ってます。」
鳳 「確かに…でも、諦めたらそこで終わりです。俺だって、いつかは書いてみたい。」
→「どんな音楽なんだろう?」
赤月「どんな音楽なんだろう?きっと素晴らしいんだろうなぁ。」
鳳 「そうですね。まだ、今の俺には想像すらつきませんが、いつかはそんな曲を書いてみたい。」
→「本当にあるのなら聞いてみたいな。」
赤月「本当にあるのなら聞いてみたいな。先生、頑張って書いてよ。」

鳳 「努力は…していますよ。いつだって。」


赤月「あ、でも、もし王様になったら作ってられないですね。」
鳳 「俺が王にだなんて、冗談じゃないですよ。」
赤月「それって、私と結婚するつもりはカケラもないってことですか?」
鳳 「そうじゃなくて!俺は、そんな器じゃないって言ってるんです。」
赤月「別にいいじゃない。外交や国内の政治は、やれそうな人に任せれば。」
  「跡部伯爵なんて、喜んでやると思うわ。」
鳳 「王女、本気ですか?本気で相手は俺がいい…とおっしゃるんですか?」
赤月「え?その…そこまでは…。まだ結婚なんて、よくわからないし。」
鳳 「…だと思いました。人をからかわないでください。いや…男をなめないでください。」
赤月「…鳳先生。(あっちゃぁ〜。怒らせちゃった?ち、違う?なんだろ…?)」
  「ごめんなさい。」
鳳 「いえ、俺こそキツい言葉をつかって大変失礼なことを…。」
  「…俺が候補に上がっているとは聞いていました。だから、王女さえその気なら…。」
  「それに、今おっしゃったように俺では足りない分を誰かが補えるというのであれば…。」
  「真剣に考えていただきたいと思います。俺とのことを。」
赤月「はい。からかうつもりはなかったんです。…真剣に考えます。」
鳳 「そんなに、おびえないで。すっかり怖がらせてしまったかな。」
赤月「いいえ、怖がってなんか…。私、中に戻ります。風にあたり過ぎたみたい。」

赤月(あ、あらら…?追いかけてきてくれないんだ。)
  (う〜ん…。もうちょっと、付き合えばよかったかなぁ?)
  (…ま、いっか。次のパーティーのときにでもまた話せばいいよね!)
  (疲れるパーティーもあの人と話せる場所だと思えばちょっとは楽しみかな…。)

2回目 赤月(…なんの音かしら?夜中なのに…外が騒がしいわ。)
芥川「王女様、大変です。民衆の反乱が起きて…王宮に火を持った群衆が!」
赤月「な、なんですってぇ!?なによ、それっ!?冗談にしちゃタチが悪いわ!」
忍足「ホンマの話です。彼らはパンすらろくに食べられへん生活やっちうのに王宮では毎晩がパーティーで…。」
  「彼らは、そんな税金の無駄づかいをするなと騒いどるんです。」
赤月「そ、そうだったの?私はてっきり、国民も私のように充分、食べてると思ってたわ。」
忍足「…時として、知らないっちゅうことが、罪になる場合もあります。それを覚えといてください。」
鳳 「そんなことより、王女。今はまず、逃げることです。」
跡部「そのとおりです。先程、王が暴徒に捕らえられました。」
  「俺たちも近衛兵と協力して戦ったんですが…あまりに人数が多く、力が及びませんでした。」
  「あなただけでも、逃げなければ!」
赤月「逃げるったって、どうやって?王宮は囲まれてるんじゃない?」
向日「王女の部屋に、隠し通路があるはずだ。地下道を通ってかなり遠くまで行けるはず!」
赤月「そういえば、なにかのときには使えって教わったことがあるような…。」
  「向日子爵、どうしてそんなこと知ってるの?」
向日「俺の家は、よく王女が嫁いで来るんだよ。家柄が古いからな。」
赤月「あ、そうだったっけね。でも、どこへ向かえばいいの?」
跡部「王女、落ち着いてよく聞くんだ。あなたは本当はロシアの王女。そう、王が言い残しました。」
赤月「はあ…って、ええっ!?今いきなりそんなこと言われても…!」
跡部「王女、ロシアへお逃げなさい。」
樺地「…一刻の猶予も…ありません。早く…逃げてください。」
宍戸「…はあっ、はあっ。いったい、なにが起きてんだよ。誰か説明しろっ!」
日吉「民衆の反乱…いえ、革命です!」
忍足「革命?…いや、今は気にしとる場合やないか。とにかく王女を無事に国外へとお連れせんことには…。」

赤月(国外へ逃げる!?)


→(そんなの嫌!)
赤月(そんなの嫌!この国を、離れるなんて…。)
→(行ったこともないのに?)
赤月(いままでこの国を出たこともないのに!?…ム、ムリよ〜。)
→(少しだけワクワク。)

赤月(国外なんて初めてだわ。少しだけワクワク…なんて場合じゃないわ!)


日吉「この人数では気付かれるだけです。王女だけでは無理だ…。誰か1人はついて行かないと。」
(親密度が1番高いキャラが立候補)
日吉「決まりだな。すぐに出発した方がいい。」
芥川「王女、これを持っていくといいよ。」
赤月「なに、この包み?」
芥川「デッサンの消しゴム用に、厨房からパンをもらって来たトコだったんだ。」
  「少しは腹の足しになるだろ?…それから、これも。」
赤月「ひょっとして、お金?」
芥川「執事に用意させた。みんなフツー、お金のことは執事に任せっきりだろ?」
赤月「そ、そうね。持ち歩いたこともないわ。」
芥川「金貨ばっかりだから、絶対1枚ずつ使うんだぞ。騙されないようにな。」

赤月「ありがとう、ジローさん。」


→「また会いましょう。」
赤月「また会いましょう…必ず。…だって、借りたものを返さなくちゃいけないものね。」
→「絵が見られなかったわね。」

赤月「完成した絵が見られなくて残念だわ…。」


芥川「さあ、ぐずぐずしないで行って!」
赤月「はいっ!」

赤月(…はあっ、はあっ。どうして?どうして反乱なんて起きるの?)
  (…はあっ、はあっ。革命って、なんなの?)
  (お父様…無事だといいけど。…神様!お願い、お父様をお守りください!)
  (でも…本当の父親じゃないなんて…。信じられないよ。どうしてなの?)
☆鳳 鳳 「俺が王女を守ります。悪いけど、みなさんはおとりになってください。」

鳳 「迫ってくる気配もないし、このあたりで休もうか。息が上がってることだしね。」
赤月「すみません。お父様の目を盗んでやってたテニスで、運動はしてるつもりだったけど。」
  「さすがに男の人の足について行くのは…大変…。」
鳳 「やっぱり速過ぎた?ごめん。…速いって言ってくれてもよかったんだよ?」
赤月「いいえ、このペースでいいです。だって、もし捕まったら、おとりになってくれたみんなに悪いもの。」
  「…もう宮殿には戻れないのかなぁ。」
鳳 「きっと戻れるよ。だから、いまはロシアに無事に着くことを考えよう。」
赤月「そうですね。どうやって行けばいいのかしら?鳳先生、わかりますか?」
鳳 「急いで行くならケルンからベルリン…それからポーランド王国を通り抜けるルートだね。」
  「本当は途中で南に向かって、ウィーンに連れて行ってあげたいけど…。」
  「そんな時間もお金もないからね。」
赤月「もう、鳳先生ったら…。(こんなときでも、音楽の街に行きたがるなんて…。)」
鳳 「とにかく、ロシアに行くってことでいいんだね?」
赤月「それは…出来ればお父様を助けたいですけど。私では何も出来ないですから。」
  「軍を動かすことも、地方貴族を説得して協力を得ることも…。どうやったら出来るのか…。」

  「私ではできない、ってことだけはわかるのに。」


→「自分が恥ずかしい。」
赤月「自分が恥ずかしい。もう遅いとはわかっているのだけど…。」
→「とても悔しいです。」
赤月「いま、とても悔しいです。もう遅いとはわかっているのだけど…。」
→「どうしてこんなことに。」

赤月「どうしてこんなことに…。」


赤月「もっと、色んなこと勉強していればよかった。」
鳳 「勉強はした方がいいと思うけど、反乱はキミのせいじゃないよ。」
  「もう、かなり前から、フランスは財政難だったんだから…。もっと建設的な考え方をしようよ。」
赤月「建設的…ですか?」
鳳 「やってしまったことを嘆いてないで…これからやれること、やるべきことを考えようよ。」
赤月「やるべきこと、ですか。お父様の望みどおり…ロシアに行くことかしら?」
  「…ま、いっか。それしか選択肢がないし…。運命ってことだよね。…あ!」
鳳 「どうかしたの?」
赤月「ロシアに行きましょう!逃げるために行くんじゃなくて、助けを求めるの!」
鳳 「助けを求める…?」
赤月「私がフランスの王女じゃないことはまだ誰も知らないんだから、ロシアにはロシアの王女として向かって。」
  「フランス王女が助けを求めたってことで、外国は納得すると思うんだけど…ダメかなぁ。」
  「フランスを差し出すってことになっちゃうけど、援軍を出してもらえればお父様を助けだせる!」
鳳 「いいと思うよ。俺よりよっぽど外国のことがわかってるじゃないか。」
赤月「なんとか、なりますよね?」
鳳 「なるよ。頑張ろう。」
赤月「はいっ!そうと決まれば…すぐにロシアに行きましょう!」
鳳 「ええっ?もう少し休まなくて大丈夫?」
赤月「平気です。じっとしてなんか、いられないもん!」
鳳 「あ、待てよ。よそ見してたら危ない…!」
赤月「え?なんですか?…あ、きゃあっ!」
鳳 「ああ、声をかけたの、かえってマズかったか…。」
赤月「あっちゃあ〜、失敗、失敗…。」

赤月(王宮にいた頃は、色んなとりまきがいたけど…。)
  (本当に私を大事に思ってくれてるのって、この人だけなんじゃないかなぁ…。)
  (一緒に来てくれたの、すごくうれしかった。)
  (鳳先生…ううん、長太郎さん。…ありがとう。あなたがいてくれて、本当によかった。)

3回目 赤月(…結構歩いたなぁ。)
  (さすがに街道は馬車も人もたくさん通るから、王女だってバレたりはしなさそう。)
  (かなり疲れてきたけど、今日はもう少しぐらいは歩いておきたいよね。)
  (う〜ん、さっき乗合馬車を降りちゃったからなぁ…。ガマンすればよかった。)
☆鳳 鳳 「ここで少し休もう。顔色が普通じゃないよ。」
  「具合、さっきより悪くなってるんじゃないか?」
赤月「平気、平気。まだ行けるよ。あ、あれぇ?」
鳳 「ほら、やっぱり。危ないよ。無理しちゃダメだ。」
赤月「ご、ごめんなさい。やっぱり疲れてるのかな。乗合馬車でも酔っちゃったし。」
鳳 「ほら、肩につかまって。」
赤月「あ、ごめんなさい。ありがとう。」
鳳 「…遠慮しないで。もっと体重、掛けていいから。」
赤月「た、体重って…。だって、身体が密着するもん。恥ずかしい…。」
鳳 「恥ずかしがってる場合じゃないだろう?」
赤月「う、うん…。」
  (身長差があり過ぎて、つかまりにくいってのもあるのよね…。)
鳳 「今日はもう休んだ方がいいね。この先の村で宿をとろう。…あ?あの人たちは?」

忍足「王女を連れて、ウィーンへ…。いくら鳳でも…と思うたが、賭けてみて正解やったな。」
  「せやけど、馬車を降りるときは迷うたで。岳人の見間違いやったらどないしようかと…。」
向日「言っただろ、今、追い越したの王女と鳳だったって。」
赤月「…もしかして、さっき追い越して行った乗合馬車に乗ってたの?」
芥川「おい、鳳。王女にムリヤリ迫ったりしてねぇだろうな。」

  「ははっ。鳳がそんなことするはずねぇか。」


→「実は…迫られたんです。」
鳳 「お、王女!?」
芥川「ウソ!マジ?いやらC!」
赤月「なぁんて、冗談です。そんなこと、される訳ないじゃないですか。」
鳳 「本当に王女はざれごとが過ぎます。」
赤月「ご、ごめんなさぁい…。」
→「もちろんです!」
芥川「だろうな。」

鳳 「当然です!」


鳳 「ところで、みなさん…。わざわざ追って来たんですか?いったい、なにがあったんですか?」
日吉「悪いニュースじゃない。…もっとも、あんまりいいニュースでもないが…。」
跡部「貴族の代表と民衆が、話しあって和解した。」
宍戸「革命は終わったぜ、王女。」
樺地「王も解放されて…ご無事です。」

赤月「本当?お父様はお元気なの?」
日吉「ええ。お元気です。」
赤月「よかったぁ…!お父様…。神よ、感謝します!」
  「…じゃあ、ロシアに行く必要はないんじゃないの?」
  「このまま王宮に引き返しましょうよ!」
芥川「それは…無理だよ、王女。王宮はもう…王家はもうフランスにはないんだ。」
赤月「それって、どういうことなの?ジローさん!」
日吉「フランスは共和国になったんです、王女。これからは議会が国を統治するんです。」
赤月「議会?だって、今までだって3部会があったじゃない。」
日吉「王や貴族はなく、国民から選ばれた議員による議会です。」

赤月「そんな…。」


→「帰る場所はないの?」
赤月「もう私が帰る場所はないの?フランスには私は必要ないの?」
→「どうすればいいの?」
赤月「じゃあ、どうすればいいの?私はもう王女ではないってことでしょう?」
→「しかたないことね。」

赤月「もう、しかたのないことね。起こってしまったことは元に戻せないもの…。」


跡部「王女…。」
赤月「お父様は本当の父親ではないし、共和国では、今までのような生活は出来ないんでしょう?」
忍足「…まぁ、王女もフツーの女の子として、生きるしかないやろな。」
宍戸「ロシアなら、王女として迎えてくれるはずだろ?」
赤月「ロシア…ロマノフ王朝の王女だったんだものね、私…。」
向日「今までみたいな生活は保障されてるだろーな。」
赤月「私、ロシア語なんてわからないわ。どんな国なんだろう。」
鳳 「フランス語は大抵の王家で通じますよ、王女。」
樺地「ウス。…ですが、身分がなくなっても…フランスは住み慣れた土地…です。」

赤月「ロシアでの王女の生活か、住み慣れたフランスか…。どうしよう、どうしたらいいの?」


→「王女の生活よ。ロシアに行くわ!」
赤月「でも、誰も知ってる人がいないのはさびしすぎるよ…。」
跡部「アーン?俺も一緒に行くぜ。どうやら、こいつらも同じ意見らしいな…。」
一同「おうっ!」

赤月(ロシアへ向かった私たち一行は、ロマノフ王朝に迎えられ…。)
  (私はこれまでどおり、王女として生活することになった…。もちろん、みんなも一緒に。)
(スチル)
向日「王女、ワルツを踊らないか?」
跡部「おい、抜けがけすんじゃねぇよ。王女、俺様と踊るだろ、アーン?」
鳳 「王女、合奏しましょう。俺がヴァイオリンを弾きます。」
樺地「王女…ボトルシップ…面白いですよ。」
芥川「あ〜、動くなって、王女。絵が描けないだろぉ!」
日吉「よかったら、剣術をお教えしますよ。ふらちなヤツをご自分で撃退出来るでしょう。」
宍戸「おい、日吉。ふらちってのは、誰のことだ?俺か、オラァ?」
忍足「いちいち、声をあらげんでも…。あっちで王女とワルツを踊りたがってる2人のことや。」
赤月(う〜ん、これって逆ハーレム?すっご〜い!気分いいっ!)
  (王女の生活を続けられるし、みんなもいるし…。ロシアに来てよかった!!)
→「住み慣れたフランスがいいわ!」
赤月「王女なんかじゃなくていい。フランスに戻ります!」
日吉「問題は王が幽閉されてるってことだな。王女を誰かが養ってやらないと。」
芥川「俺は無理だ。まだ師匠からひとりだちも出来てない、貧乏画家だからな。」
日吉「俺も、剣術の住み込み家庭教師で、雇い主はそこまで裕福じゃねぇ。」
赤月「じゃあ…。他のみんなは?私が頼っても平気なの?」
跡部「あーん?俺は外国の王家に顔がきく。議員になって外交をやるつもりだ。」
  「王女1人養うくらいワケねぇぜ。」
樺地「私は…軍人です。軍人としてしか…生きられません。…フランスには…残れません。」
  「イギリス海軍に…行きます。少し不自由を掛けますが…それでも…よろしければ…。」
忍足「俺は、医者になれと言われて、その勉強もしとったからな。医学の研究者になるつもりや。」
  「どこまで稼げるかわからんけど、まぁ、王女1人くらいはなんとかなるやろ。」
向日「俺か?ダンスくらいしか取り柄はねぇからな。バレエダンサーになるつもりだ。」
  「パリ・オペラ座バレエ団に入れば、王女1人くらい養えるだろ。」
宍戸「俺はデンマークへ戻る。第2王子のお妃になるってのはどうだ?」
  「遊んで暮らせるほど裕福な国じゃねぇが、国内は安定してるぜ。」
鳳 「俺はウィーンへ行きます。書きたい曲を書くために。…売れる保証はないけどね。」
  「苦労を掛けると思うけど、ピアノやヴァイオリンの生徒を持てば…王女1人くらい養えるよ。」
赤月「みんな…もう、先のことを考えていたんだ。」
  「私も、誰を頼ることになっても、なにかやってみようかな?…う〜ん、誰を頼ろう。」
芥川「王女、1個だけアドバイスだ!男は経済力だけじゃないぜ。好きな男について行けよ。」
  「なんちゃって。俺ってカッチョE〜!」
赤月「ありがとう、ジローさん。う〜ん、誰を頼ろう。(好きな男…ねぇ。)」
親密度の高い3人が選択肢に登場
→「鳳さんのお世話になろう。」 赤月「長太郎さん、開場は、もうそろそろですね。」
鳳 「うん。…どうしたの?俺より緊張してるみたいだ。」
赤月「え?そ、そう?だって、劇場でやるのはオペラが常識のこのウィーンで、コンサートだもん。」
  (長太郎さんはオーストリアに亡命して、作曲しながら生徒にピアノとヴァイオリンを教えている。)
  (これまでの実績もあるから、今回コンサートを開かせてもらえたの。すごいなぁ…。)
  (作曲してるときは声を掛けても聞こえてないし、生徒も多いからゆっくり話す時間もないくらい。)
鳳 「そうだね。本当に色々幸運に恵まれたよ。」
  「でも、このウィーンでは前例があるからね。音楽だけのコンサートって。」
赤月「あ、そうなんですか?」
鳳 「うん。俺のあこがれの作曲家がこの劇場じゃないけど、何年か前にやってるんだよ。」
赤月「へぇ〜。」
鳳 「音が1番よく聞こえる席を用意してもらったから、楽しんでくれるとうれしいな。」
赤月「は〜い。今日は…寝ちゃわないように頑張ります…。」
鳳 「いいんだよ、寝ても。俺の書いてる『古典派』の音楽は身体にいいらしいから、それで眠くなるんだ。」
  「気にいったらノッてもいいんだよ。手拍子打っても、鼻歌を歌っても。」
赤月「そ、そうなんですか?さすがに、鼻歌は周りに迷惑でしょう?」
鳳 「あと…皇帝に居眠りされたらコンサートが打ち切りになっちゃうね。」
赤月「あらら、それは大変!私がそれとなく起こしてさしあげようかしら?」
  「どこに座られるのかしら?」
鳳 「あ、大丈夫だよ。昨日の練習の時にご覧になって、居眠りはされなかったから。」
赤月「そうですか。それならよかった。」
鳳 「じゃあ、そろそろ準備に行かなきゃ。楽しんでくれよ。」
赤月「いってらっしゃ〜い!」
  (私は近所の子供たちにテニスを教えたり家事をやったり。)
  (今度、ペンネームで『フランス最後の王女』なんて本を書こうと思っている。)
  (長太郎さんに止められるかなぁ。…こんな調子で結構幸せ。)
  (オーストリアに亡命はしたけど、あのとき戻ってよかった!)
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