「別れたい、と思ってる」
ぽつりと零した言葉は、もう戻らない。
本心か、と聞かれたら、多分違う。
今も別れたくない気持ちがぐちゃぐちゃで、涙をこらえるのに必死だ。
だけど、それ以上にもう限界だった。
大きく目を見開いた寿人が、何かを言いかけて、ぐっと飲み込むのが視界の隅に見えた。
寿人は、しばらく考え込んでから、ぽつりと呟いた。
「…少し、考えさせてくれ」
2週間前、寿人が週刊誌に撮られた。
相手は私よりもずっと綺麗な女子アナで、平均身長を少し越したくらいの私よりもずっと背が高くて、腕を寿人に絡めて歩く後ろ姿は私よりもずっとお似合いだった。
週刊誌が出る前日、寿人は電話をかけてきた。
「誤解だ。だから何も信じるな」
焦った様子でそれだけを伝えて切れた電話に、私はどうすれば良いのかもわからずにその晩を過ごし、朝のニュースで理由を知った。
寿人は見るなって言うと思ったけど、私はどうしても読まずにはいられなかった。
そこに写っていた寿人は、まるで知らない人みたいで。
高校の時、あんなに近かった距離が、今はもうこんなに遠いんだ。
そう思ったら涙が止まらなくて、別れるって言葉が頭から離れなくなった。
だから、ようやく会えた今日、私は思わず別れたいと、そう伝えてしまった。
出た言葉は本心じゃない。だけど、嘘じゃなかった。
寿人もそれを分かったから、何も言えなかったんだと思う。