勢い余って全力

楽屋の部屋をノックする音が聞こえて、私は振り返る。
扉を開けたのは、先程まで一緒に仕事をしていた和泉一織くん、私の事務所の後輩だ。
「出雲さん、今日はありがとうございました」
「わざわざ来てくれたの?ありがとう」

唇に柔らかい感触。
それはすぐに離れたものの、至近距離にある一織くんの顔に、思考が停止する。
「え…?」
「あっ…!」
ガタンと大きな音を立てて後ずさりする一織くん。
顔を真っ赤にして、唇を手で覆っている。