あるところに、刀剣男士と非常に仲の良い女の審神者がおりました。
どの刀も審神者によく懐き、いつも笑い声の絶えない本丸でした。
審神者は明るく、どの刀剣にも優しく、常に柔らかい笑みを浮かべておりました。
その笑顔に魅了されたのは、彼女の刀剣だけではありませんでした。
隣の本丸の審神者も、またその1人でした。
彼は彼女に会うために、沢山演練の誘いをしたり、審神者会議や会合の後に声をかけたり、時には彼女を自身の本丸に招いたりしました。
優しい彼女は彼の思いには気づかず、それでも自身の刀の忠告を受けて二人きりにはならないよう、会うときは常に数人の刀を引き連れておりました。
勿論、彼も審神者。常に誰かしらの刀を横に侍らせておりました。
しかし、それが後に悲劇となるのです。

彼女はとても魅力的な審神者でした。それは、容貌や性格だけではない、霊力の清らかさにも言えました。
そして、頻繁に会っていた審神者だけではなく、その刀をも魅了するのに、そう長い時間はかかりませんでした。
彼はそれに気づくと激昂しました。主の恋路を邪魔するとは何事だと、酷い叱咤を繰り返しました。
彼女がそれに気づいたのは、少し後のことでした。不穏な空気を感じるから様子を見て欲しいと政府に言われ、刀達を従えて、彼の本丸に訪れたときのことです。
そこで目にしたのは、折れた刃が散らばる悲惨な本丸でした。
彼は彼女に恋をした刀を、片っ端から謀反だと折っていったのです。
残った刀はもう闇堕ちしている様子。
彼女の刀は、主を庇いながら彼らと戦うことになりました。
その中で、彼女はまだぎりぎり破壊を免れていて、闇堕ちをしていない刀剣男士を見つけました。
せめてこの刀だけでも、と必死に力を送る彼女は、後ろから闇堕ちした刀が迫っていることに気づきませんでした。

彼女が死んだのは、その半年後です。
酷い怪我を負いながらも、誰1人破壊されることなく、彼女達は本丸に帰りました。
政府が後処理をしたので、その後その本丸がどうなったのかは、彼女は知らないままでした。
一緒に乗り込んだ刀が枕元で自身を責める度、彼女は「私は生きて帰って来れたから」と微笑みました。
しかし、霊力体力共に失った彼女が衰弱していくのは、誰にも止めることが出来ませんでした。
彼女は最後に、「来世で待ってるね」と言い残し、刀達の前から去ったのです。