capriccioso.T


※3巻の小学生編より



「…ごめんなさい、お友達と、きてたんだけどはぐれちゃって…」
「ううーんどうしようね」
「日野さん、迷子センターまで案内するのはどうかな」


いや、迷子センターだけはいきたくないなぁと思う小学生高学年のわたし佐伯は、イケメン揃いのお兄さんたちとお姉さんに囲まれていた。

地元のため地形はわかるけどもはぐれた友人を探すのは…この人ごみの中ではむずかしい。よって迷子扱いに等しい。


「優香ちゃん…どこだろう」
「今日一緒に来たお友だちの名前?」
「うん、那珂優香っていうの」
「君の名前は?」
「茉莉です」


そっかー、と少し黒い赤髪のロングヘアお姉さんが少し屈んで頭をなでてくれた。えへへー可愛いお姉さんだなー。こんなお姉ちゃんほしいなー。


「フルートケースもってるんだけど…」
「へぇ、その子もフルートを吹くのかな?」
「うん!すごく綺麗なんです」


紫色の長い髪のお兄さん、あなたも全身がキラキラしてて綺麗ですね。


「ま、迷子ってワケじゃないしな。わざわざそこに連れてくのもあれだろ?この年だし」


緑色の髪の人がポンッとわたしの頭に手を置く。
あーこういう人好きだなぁー。


「お前も何か楽器やってるのか?」
「トロンボーンやってます」
「…今度、聴いてみたいですね」


ふわりと笑った金髪?少し白い髪?の少し小さいお兄さんに、なんだか照れくさくなってほっぺをかいた。まだまだ初めたばかりだから自信持って聴いてくださいなんていえないです。


「んーじゃあ私達とさがそっか。屋台見て歩いててもそのうちお友達が通りかかるかもしれないしね!」
「え、いいの?お姉さん、お兄さん」
「ま、こいつと付き合ってればこんなのは日常茶飯事だしな。今更どうってことないから気にすんな」
「なにそれー土浦くん」
「もちろんいいよ、日野さん」
「この子と一緒に回るのも楽しそうだね」
「…よろしく、お願いします」

「う、うん!ありがとうございます!」


ってことで一緒に屋台回りながら探してくれることになった。

―――にしても…優香ちゃん、どこにいるんだろう。






***







「たこ焼きゲットー!」


ハルちゃんにどどーんと目の前に見せても「立ち食いはぎょーぎが悪いから座るぞ」って近くのベンチまでひっぱられた。
ぶーいいじゃんべつにー。いいもんハルちゃんより多く食べちゃうからねーだ。
だから早く食べようと大きな口をあけて―――

「…?」

食べようとしたんだけど、いつのまにか手が止まってた。

向かい側に座る女の子と目が合ってドキり。

可愛い子だなぁ。





「おい、よだれたれるぞ」


ハルちゃんの声にハッとして慌てて口にいれれば「あっふいー!」叫んだ。
なんとか飲み込んだ頃には目尻に涙がうっすらと浮かんでた。でもおいしい。

そういえば…。
ふと顔をあげて、さっきの女の子を見る。

(あ………)

笑ってる。

ハルちゃんが何か言う前に、オレは駆け出していた。








「え、はぐれちゃったの?」
「うん…」
「迷子ってことになりますね」
「…迷子じゃないもん」


かたくなに迷子じゃないことを嫌がる女の子は俺たちと同じ小学生ぐらいの年だ。たぶん高学年。
さっきあげたたこ焼きを半分食べて、残りの半分を口にする。それを見てオレもほおばった。


「ふぉっかー。ふぉーひよっかハルふぁん」
「食い終わってから喋れよ。はしたない」
「ふぉうひよう………」
「! あなたまでそのままで喋らないでくださいよ…」


同じことを言われた女の子とお互い顔を見合わせて、一緒に笑った。

あーそれだ。


「オレ、君のその顔すき!」
「え?」
「なっ」


じーっと、オレのすきな女の子の顔を見てると。だんだんほっぺが赤くなってきて最後には手で顔をかくしちゃった。あれ?なんで?


「新!おまえ、はずかしいことを普通に言うな!」


ハルちゃんにはなぜか怒られた。


「え、恥ずかしかった?」
「〜ったく!見てみろよ、この子…困ってるだろ」

「え、あ、ええっと…!び、びっくりはした、かな?」

「うーん?そっか。でも照れた顔、可愛いかったよ?隠さなくていいのに」
「〜〜っ」
「っ、おまえなー!それが恥ずかしいんだよっ!」
「Ai!」


う、ハルちゃんにげんこつくらった!いたい!
「たこ焼きのパック捨ててくる」と、ハルちゃんまで顔を赤くして近くのゴミ捨て場まで歩いていった。両肩があがってるところをみると、すっげー怒ってる…。そんな怒るようなことしてないのに。


「ところで、君の名前は?」
「……優香」


まだ赤い顔のままぽつりと言った、優香ちゃん。

ハルちゃんも赤かったけど、べつに可愛いーとは思わなかった。でも目の前にいる優香ちゃんは、とっても可愛いって思う。女の子だから?


「優香ちゃん!オレたちと一緒にその友だちさがそ!」
「え、いいの?」
「そのほうが、早く見つかるでしょ?」
「でも、悪いよ…」
「いいのいいの!」


優香ちゃんの手をとって走り出す。
途中で合流したハルちゃんも引っ張って3人で走る走る。
女の子は笑っててハルちゃんはため息ついてるのが繋いだ手から感じる。へへっ、すっげー楽しい。

気分爽快絶好調。
今日はなんだか、いいことありそう。



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