FantasticIV


「―――そして、仲良く一緒のお布団で寝ましたとさ。ちゃんちゃん!」
「………」
「とまぁわたしが知ってるのはここまで。あとは朝に見たことが何よりの証拠だよ」
「………」


絶句してる彼女の隣でオレはペットボトルに入ってるお茶をひとくち。ちらりと、こっちを一瞬みた君にどういう顔をしたらいいかわからず、とりあえず今の気持ちを全面に出してにっこり笑ってみせると「卑怯だ…」そんな言葉を口にして両手で耳まで真っ赤にした顔を覆った。ええええ。卑怯ってなにさ。

元に戻った優香ちゃんとこうして肩を並べて座ってる。それだけのことなのにずいぶんと懐かしく感じてしまって。あふれ出てくるこの気持ちにのっかって今すぐにでもハグしたいけど…朝、君に怒られて反省してる身なのでがまんがまん。(キスいっぱいしただけなのにね)

昨日のお話を一通りしてくれた茉莉ちゃんは、向かいにある椅子に腰かけオレたちのやりとりをニヤニヤしながら見ていた。


「茉莉…その笑い方やだ」
「ぐふふ。小さくなった優香ちゃんと水嶋くんカップルもいいけど、やっぱこのツーショットだよねぇ」
「もぅ…。でもなんで新くんと会ってからの記憶がないんだろう」
「そりゃ一番好きな人だからこそ安心しきって、心も子どもに退化したんじゃないのかな?」
「Entendi。優香ちゃんってばそういうとこ正直者〜」
「新くんもそこ納得しないでよ…」


うなだれるように言うと、頬を赤く染めてまた両手で顔を隠す。いつも通りの君の反応にオレはまた小さく笑った。まぁその話が本当ならとっても嬉しいんだけどな。
そろそろ練習しに行くね、と茉莉ちゃんは楽器ケースを背負いはじめる。「ごゆっくり〜」そう笑顔で言い残してラウンジから去って行った。

その場に残ったオレと優香ちゃん。あらためて二人っきりになって、さっきまではなかった空気があたりをつつみこんだ。そんな中先に口を開いたのは彼女だ。


「ごめんね。迷惑かけちゃって」
「ぜーんぜん!むしろ楽しかったかな」
「…私、変なこと言ってなかった?」
「んー。”あらたくんだいすきー”って抱き着いてきたよ」
「はず!」
「オレはすっごくうれしかったけどなぁ〜」


彼女の肩に手をまわして抱き寄せる。おどろく君をよそにぎゅうぎゅう、と。大きくなった君を再確認するかのように抱きしめる。「あ、新くん…」腕の中でぼそりとつぶやいた君は、今朝のことを思い出したのか少し緊張してるように見えて。安心させるように優しくあたまを撫でた。


「あのままじゃいろいろと寂しかったんだからね」
「………寂しかったの?」
「まぁね。だって、小さくちゃできないでしょ?」
「なにを!?」
「またまた〜しらばっくれちゃって。朝のキスだけじゃたりない?」
「………じゅ、十分です」


付き合い始めてまだ日が浅い。欲を言えばずーっとハグしてたいしキスだってしたいよ?でも君はすぐに緊張してしまうから、ゆっくりと。まぁそんな歯止めがきかなかった今朝は申し訳ないとは思ってる。今はこうして君の柔らかい髪に手を通して、さらさらと流れるそれを楽しんでいる。
くすぐったいよ。そう言う優香ちゃんがホント可愛くて、たまらなく愛しくって。さっき言ってたことをすべて無視して、両手できみのほっぺをつつみこみ顔を近づける。ちゅ、と唇を放すと「…ちゅー禁止命令が台無しだよ」ぼそぼそつぶやいたのが聞こえてきた。(ちなみにその禁止命令とやらは今朝発効された)
どういう意味か聞く前に、オレの唇にさっきのやわらかい感触が。びっくりして目を閉じるのもわすれて瞬きをいっかい、にかい。さんかいめで、大好きな君の顔が見えた。

あ、ちゅーされたのか。しばらく呆然としてたらしいオレは優香ちゃんがくすくす笑う声で気が付いた。だって君からなんて片手で数えられるぐらいかの数回しかしてもらってない。あーもう不意打ち〜。こうなれば真夏でも関係なしにずっとハグしてよっと。

小さい君のお世話も楽しかったけど、やっぱり今の君が一番大好きでした!



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