転校初日から仮病をつかって授業をさぼってしまった。案内するよと言ってくれた女神みたいなとっても可愛い女の子に心の中で謝る。強引に押し切っちゃってごめんなさい。


怖い顔だけど優しそうだって、思った。タイプだったのかもしれない。初めて目が合ってから気になってはいた。ずっとこっちを見てたことも、知ってる。私のこと睨んでるのかな。顔を上げて窓際の席に座ってたあの人を探す。

その時、眉を下げてちいさくちいさく笑うあなたを、とっても近くに感じたんだ。






「あの、やっぱりどこか痛いんじゃ…」


勇気を出して聞いてみると「痛くねぇ」すぐに返ってきた言葉にほっとする。
(いつまでこのままなんだろう)掴んでるところから熱が伝わってきて少し緊張してきた。

それからというもの。私も腰を下ろしていまだ項垂れてる彼を観察。髪、上から見るとふさふさしてるんだなーとか思ってるとするりと、腕が解放された。


「わり、引き止めて」
「う、ううん。むしろ嬉しかった!」
「は?」
「あ!」


なに言ってんだこいつって目で見られた。わたしも自分に言いたい。初対面なのにはずかしい言葉がよくもまぁぽんぽん出てくるもんだ。
ちがうけど本当かもって、さっきと同じことを繰り返す私に、彼は口の端をあげて「そうかよ」と笑う。あ、この顔好きだな。


「正直なんだな」
「ここまでおしゃべりな口になったのは初めてだよ………。」
「………。なぁ、アンタ、最近この町に越してきたんだろ?」
「うん。おととい来たばかり」
「今日の放課後はヒマか?」
「とくに用はないけど」
「俺との予定、入れとけ。ここら案内してやるよ」


うそだろ。耳鼻科いったほうがいいかな。だってこんな嬉しい聞き間違えあるんだなんて。診察いつにしよ。とか考えてたら「いいか?」なんて不器用に笑うから、もう、全力でうなずくしかない。
うそでもほんとでもなんでもいい。あなたとこうしていられるだけで、こころがとってもあったかいんだ。


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