wonderful


死神のゲームが行われない日が続き、ヨシュアと共に生活(常にUGに低位同調)しながら名無しはCAT活動をしていた。

とある日のコンポーザーの部屋にて。
ソファに2人が座りヨシュアは片手で本を読み、名無しはあぐらをかきながら頬杖をつき雑誌を読む普通の日常生活中。なおこの2人は夫婦である。


「RGに低位同調して、渋谷の可愛い女の子に触れ合いたい」
「可愛い女の子を助けてRGシブヤ革命を起こそうとする、の間違いじゃないの?」
「ちっ」
「やけに最近、RGを気にかけてると思ったらやっぱりね。家庭の事情等で家に帰れない10代女子。彼氏、夫のDV問題。…あげたらキリがない女の子が増えてきたからね、見てられないんでしょ?」
「………ああそうだよ。そのまんまだ。で、どうするんだ?俺を止めるのか?」
「ふふふ。そうだね」


「………。ここからは真剣な話をしようか」

「? ああ、いいぜ」


「───名無しが僕の傍にずっといてくれたら、って何度思った事か。あの手この手で考えてみたけど、君は僕から離れていく」
「え、ん?あー一応言っとくけど、必ずもどってくるぜ?それに、ヨシュアが嫌になったから、とか微塵も思ってないからな」
「ああ。それは今までの君を見てれば分かるよ。僕は名無しに愛されてる。この幸福感は今まで味わったことないね」
「それならよかった。俺も同じ気持ちだぜ?」


「そう。なら敢えて言わせてもらうよ。



…ずっとここにいてくれ」




「ヨシュア、おまえ…」

「ストーレートに伝えたよ。その方が君の心に響くだろうから」
「………。あーさっきも言ったけど、俺は必ずお前の傍に戻ってくる。俺の帰る場所はココだ。それじゃ、だめか?」
「だめ」
「………。…………はぁぁー。ずるいじゃねぇか、そういう時だけそんな顔(つら)すんの。初めて見たぜ?」
「そう?じゃあ僕が言いたいことは多分分かってると思うよ」



「………。ああ、そうか………。はぁ、タチ悪いぜほんと。変化球ばっかりかと思ったら直球勝負できやがって」





「名無し」

「たんま。ヨシュアがここまで止めようとする理由は、俺でも何となくわかったよ」

「………」

「ヨシュアの隣ってさ。絶対大丈夫っていう確信たる何とかってヤツがあるんだよな。コンポーザーだからってわけじゃない。ヨシュアのここんとこ(自身の胸元を指す)が最強なんだ。俺はそれに惚れた。俺が男に惚れるだなんてヨシュアが最初で最後だよ。………そんな奴、俺が手放すとでも思うか?いいやないね、………死んでも離さねぇよ」

「………へぇ。死んでも、ね。そしたらどう戻ってくるの?」
「んーーその話になるのか。天使が低位同調してその場で消滅した後ってどうなんだが俺にもわからねぇんだ。憶測だが最悪の場合、意識やソウルごと、俺そのものが消滅すると思うぜ」
「………。………。………だと思ったよ」
「そこでこれ、だろ?」
(左手の薬指を見せる)
「“名無しの身に異常が生じたらソウルを取り込む”とか高性能の結婚指輪渡した奴は誰だ?」
「へぇ、隠してたつもりだったけど」
「指輪がはまった瞬間からな。俺も一応強い天使なんで」


「未来の君は、僕がどんな手段を使ったとしても、必ず僕の傍から離れていく。最悪の場合を考えた結果、そうさせてもらった」
「………。なるほどな」
「その最悪の状況が……。この上なく不愉快なんだ」
「………」


「この世界の基盤を作った神様なんてものが遥か上の次元に存在してるのならば。僕は初めて神に祈ろう」



「僕の傍から消えないでくれ」








「────いや、俺消えないし、死なねぇから」


「どうしてそこまで言いきれるの?」
「さっきも言ったろ?ヨシュアは俺の夫。ヨシュアなら、そしてこの俺なら、なんとかなる、絶対的な自信がある。

“ゲームに勝ち残るなら、パートナーを信頼しろ”だろ?」




「………。………。あっはは。なるほどね、うん、いいね。名無しの人生ゲームのパートナーに僕は選ばれてるんだったね」
(ははは、と屈託のない笑いをこぼしながら前髪をかきあげる)

「そっか。ゲーム…ね。僕と名無し、コンポーザーとアレンジャーがシブヤを変えるゲーム。僕がここから動けないから、名無しが直接RGを、外側から、変えてこうとしてたってことか」
「………ああ、ヨシュアと交渉してた時から考えてたけどな。ヨシュアが作ったシブヤを俺がアレンジして最っ高なシブヤにするんだってな。………まぁ本人が気づかないうちにRGから、と思ってたけど夢のまた夢だったな。始めから何もかもお見通しっだったんだから」

「いや、名無しの行動は分かってたけど、僕もゲームの参加者になってるとは思わなかったよ」
「あぁ?ヨシュアがいなきゃゲームになんねぇじゃねえかよ。それぐらい分かれや」
「………ふふ。そうだね」


「………名無し」
「んー?」
「僕はシブヤを変えたい」
「おう」


「シブヤを変える方法を僕も…ぼんやりと考えてたんだ。けど、名無しのゲームの方が最高に楽しめそうだからね。

改めて僕も、名無しのパートナーとして参加する。

そして。信頼するよ。君の自信と、僕の絶対大丈夫っていう僕自身を、ね」


「ヨシュア………。────ってことは」


「うん、いつでも待ってるよ。

最悪、僕の力で強引にでも縛り付けようとしてたけど。それも止めた。君は自由だ。

どんなカタチでも名無しを待つから。

行っておいで。僕の大切なパートナー」