海外アニメ

Ed, Edd N Eddy



「WD、何食べてるの」

カフェテリアで昼食をとっていたエッド―殆どの生徒にはWDの愛称で呼ばれている―は、背後から聞こえた声にサンドイッチを運ぶ手を止めた。
エッドが振り向くまでもなく、その間に彼の隣を昼食の乗ったプレートを持ったエマがとった。
笑顔を向けてくるエマに、エッドも「やあ、エマ」とぎこちなく笑い返す。
そんなエッドのプレートとサンドイッチを一瞥して、エマは声を高くした。

「わあサンドイッチ。いいなあ、一口ちょうだいっ」

「で、ですがサンドイッチは一つだけですし」

「ありがと!」と言って、エマはエッドが言い終える前に彼の手からサンドイッチを奪い取ると、大きく口を開けて真ん中からかじりついた。
しばしおおざっぱに顎を動かして飲み込んだエマに、エッドは「ちゃんと噛まないとだめですよ」と小さく注意する。
ジュースのカップに付いたストローを数回吸って、エマはやっと息を吐いた。が、表情はそっけない。

「普通って感じ。レタスをもっと少なくすればいいのに」

食べかけサンドイッチをエッドのプレートに戻しながらエマは言った。

「まったく。これは僕の昼食で、あなたのじゃないんですからね」

「だって、WDが食べてるのはなんだか美味しそうに見えるんだもん」

「僕に言わせれば、エマのジャンクフードは全てまずそうに見えます。まず、好きなものを選んだだけで、野菜などが著しく不足している点とか……」

「何よ、人の食べ物に口出さないでっ」

その言葉、そっくりそのままお返しします。エッドは呟いたが、エマは丁度フォークにミートローフを突き刺す音で聞こえなかった。
そのまま眉をひそめたエマはミートローフを口に運んでくちゃくちゃと噛み砕き、飲み込んだ。
エッドも人差し指と親指でサンドイッチをつまんでみるが、エマのつけた歯型が気になって食べようとはしなかった。

「もう、せめて千切って食べてもらいたかったですよ。エマの唾液で汚染されてます」

「見えないんだから気にしなくていいじゃない」

「不潔です。エマのせいで昼食が食べられないじゃないですか」

エッドは両手でサンドイッチを示し、エマと交互に顔を向けた。

「なら私の昼食と交換したら。これ、結構美味しいのよ」

「絶対に遠慮します。そんな殆ど油でできた食べ物なんか、僕は」

エッドが言い終える前に、またしてもエマがスプーンに掬ったポテトサラダを彼の口に突っ込んで黙らせた。
不意なことに目を見開くエッドだが、口から出た持ち手をしばし上下に動かしてから、キレイにポテトサラダの無くなったスプーンを吐き出した。そして数回舌鼓を打ち、興味深そうに唸ってみせる。

「悪くは……ないですね。塩も程よくきいているし、食感に関しても固すぎず柔らかすぎずってところでしょうか」

「良かった、WDも学食の味がわかる舌を持っていたみたいだね」

「悪くはない、と言ったんです」

「このミートローフも美味しいのよ、ほらっ」

そう言って、次にエマは一切れのミートローフが刺さったフォークをエッドに差し出した。
一瞬ためらいを見せるエッドだが、素直にそれを受け取ってミートローフの端一ミリ程をかじってみる。同様に、反応は上々だ。
学校給食が高カロリーすぎるとの苦情をPTAが提示して以来、数ヶ月前から殆どの学校が給食のメニューを見直し、味付けもエッドが好む薄味になり始めていたのだ。
結局、エッドは残りのミートローフを一口で胃におさめることとなった。
そんな彼をエマはテーブルに頬杖をついて、うっとりとした顔で見守る。そして「もう少し食べてみたら」とエッドにプレートを差し出した。
初めこそ嫌そうな目を向けていたエッドも、今となれば少しは抵抗無しに自分のプレートとエマのプレートが交換されるのを黙って見ていた。
というのも、既にエマはエッドの昼食のはずであったサンドイッチを自分のものとして食べ始めたため、結局エッドは有無を言わず彼女の昼食を食べるしかなくなったのだ。

「僕、どうしてあなたと友達なのか自分でも理解できませんよ」

「悪いけど、私への批判は聞こえない耳になってるの」

「聞こえてるじゃないですか」

エッドの突っ込みにエマはニッと歯を見せる。
そんな彼女にエッドも呆れた笑みを浮かべながら、ミートローフを口に運んだ。

Back to main Nobel list