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The Amazing World Of Gumball



「いらっしゃいませー」

エルモアのお昼過ぎ。
休日を思わせる間抜けた雰囲気のコンビニに、店員の高い声が響きわたった。それまではしばらく客が来ずガラガラだったため、その声はどこか気が入っていた。
それと同時に店内にひとりの女性が入ってくる。
女性はレジカウンターであくびをしていたお目当ての店員を見つけると、彼と向かい合うように前へ並び、口を開く。

「ラリー、私よ」

「え?ああエマ、ごめんごめん。体がパターンを生んじゃってさ」

声を上げた本人、ラリーはコンビニに入ってきたエマと呼んだ女性の言葉に、申し訳なさそうに頭を掻いた。
それを見てエマは腕を組み「もうっ」と牛のように鳴いた。

「挨拶されるのはありふれた客みたいで嫌って言ってるのに」

「そうだったね」

「どうせ私より仕事にしか興味ないんでしょ」

「そんなことないさ!」

あってたまるものか。驚いた表情でラリーは両手を上げ、何度か左右に振る。
しかしエマはまだご立腹らしく、頬を膨らましてそっぽを向いた。
そんなエマにラリーは眉を下げながらも笑顔で接する。

「…ねえ、それよりもどうしてここに来たの?何か買うため?なら僕が…」

「違うわよ」

エマはさっぱりと否定した。
そして怒った顔を哀愁に変え、俯く。

「今日、デートしてくれる約束だったじゃない」

寂しげに、しかし鬱憤してエマは告げた。
しかしラリーは特別驚くことは無く、あらかじめ予想していたと言うように「ああ」と声を漏らした。

「ごめんねエマ。だけど僕は゛予定が空いたら゛って言ったはずだよ」

「その予定もこんなちっぽけなコンビニのバイトだし」

「仕方ないだろう、誰しも大人になれば仕事を持つんだ」

「何が仕方ないよ!」

バンッ。
怒りを含んだエマの拳がカウンターの上に叩きつけられた。
ひええっ、と思わずラリーが体をそらす。
エマはそんなラリーに構わず続ける。

「いつもいつも仕事、仕事、仕事!メールをしても仕事中、電話をしても仕事中、家に行ったら何よ!?内職ときたわ!」

「あ、あの時はただ編み物してただけだよ」

「そんな女々しい事したいならショッピングに付き合いなさいよ!」

エマの怒声にラリーの体がよろめく。
コンビニ内の商品がちらほらと床に倒れ、通行人までもがその声に立ち止まり、目を向けた。

「エマ、落ち着いて…」

「何よ!」

鋭い目でラリーを睨みつけ、獣のように荒く呼吸をするエマ。
ラリーはカウンターから恐る恐る顔を出しながら、人差し指を上げて言う。

「怒らないで、お願いだから。そうだ、君に特別な物をあげる!非売品だからとても貴重だよ」

「そんな物いらない。私が欲しいのはローレンス、あなたなのに…」

「僕が欲しい、か」

ラリーは立ち上がると、天井に視線をやりながら腕を組み、考える仕草をした。
そしてまた視線をエマに合わせると。

「ならきっと気に入るよ。目を閉じて」

途端ににっこりと笑い、言った。

エマは未だに納得しない表情だが、「ほら早く」と急かすラリーに促され、一つ嘆息した後ゆっくりとまぶたを落とした。
エマの視界は黒に閉ざされ、コンビニ内の軽快な音楽だけが聴覚を刺激する。

ねえ、まだなの?
しばらくしてそう声に出そうとした時、何かが口を塞いだ。
何かと動揺する内にそれは一旦口から離れ、また角度を変えて再び触れる。

口、というよりは唇を狙う硬い感触。はむように何度も触れては離れ、また触れる物。
その正体がわかるのにそう時間はかからなかった。そしてそれに気付いた時、既にエマの腰は抜けて体がカウンターに寄りかかっていた。そこへ長いものがまわり、しっかりと抱き留められる。
とっさに開いた目に映ったのは、すぐ鼻先で目を閉じたラリー。彼が顔を少し離す度、唇の感触も離れた。

「ラリ、んっ!」

開いた口にすかさずラリーの舌が入り込もうとしたが、すんでのところでエマが彼の体を押し、阻止した。
それにラリーも気付いたらしく、石の頬を僅かに赤らめて小さな叫び声を上げた。

「わわっ、ごめん!つい夢中になって…」

「あ…う、別に…」

エマも頬を赤らめ、困惑しながらもそれを見せないよう自分の片腕を抱いた。

「…それで、あの、気に入ってくれた?」

ラリーがはにかむ。
エマはまだ赤い顔のまま、無言でニ、三回頷いて応えた。
その答えに「良かった」と笑うラリー。

「次の日曜日は開けておくよ、二人きりで今度こそデートしよう。だから今はこれで我慢してくれる?」

「う、うん…我慢する」

「エマは良い子だね」

子供を誉める母親のようにそう言葉を与え、ラリーはエマの頭を何度も愛撫した。

「じゃあ、エマの用事はこれだけかな?」

「うん…だけどラリー、あの…」

再びカウンター内に戻ろうとしたラリーを、エマが彼の服の裾を掴んで引き留めた。
なあにと微笑みながらエマに向き直ったラリーに、エマは。

「キス、あと一回だけ…今度は舌も…」

恥じらいに俯きながらそうねだった。
「もちろん」。ラリーはエマの腰に手を絡め、彼女をカウンターへ押し倒すように体重をかけたのだった。













「ダーウィン見ろよ、ラリーが彼女とキスしてる!」

「うえー!互いの唾をすすりあってるよ!」

店内にガムボールとダーウィンが残っていることに気付かないラリーは、エマが帰った後二人にいじられまくったとさ。

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