その他

Homestuck



「カナヤあ、まだー?」

カナヤの家で下着姿になり両手を広げたユメは、そろそろ震え始めた腕をなんとか持ち上げながら、自分の体にメジャーを巻きつけたり添えたりしているカナヤに声をかけた。
カナヤは真剣な顔のままもうすぐで終わりますよとだけユメに告げた。
それを聞いてユメは深いため息をついた。先程から全く同じ答えだった。

「いつになったら終わるの?さっきから同じ場所ばかり測ってる!」

「だって貴方だけが着るドレスを作るんですもの。正確に測らないと」

「少しくらい合わなくったって気にしないよ」

「いけません!」

紙にセンチをメモしていたカナヤが、突然顔を上げてユメを睨み付けた。

「相手に満足してもらえる服を、私は作りたいんです。少しでもキツいとかユルいとか言う素人の作るような服なんて、私は贈りたくありません!」

「気持ちは嬉しいけれど…」

「ユメはジッとしているだけで良いんですよ。もうすぐで終わりますから」

ユメは呆れたように息を吹いて唇を震わせた。

「また同じ台詞!」

そう叫んで、ユメは体からカナヤの手を引き剥がすと、ふてくされた顔で床にあぐらをかいた。
カナヤは驚いた表情を見せたが、面倒な子供を見るような目でユメを見下ろした。

「ユメ、それじゃあ寸法が測れませんよ」

「私もう疲れちゃったの」

「寸法を測らないとドレスが作れないじゃないですか」

「今すぐ計らなくったって良いじゃん」

「今、すぐ、測りたいんです」

ユメは腕を組み、カナヤは両手を腰に当て、二人は睨み合った。
しかし、先に顔の力を抜いたのはカナヤだった。
しばらくのにらめっこの後、鼻から一つ儚いため息を吐いて、カナヤは口を開いた。

「じゃあ、ユメ?あと一回ずつ全体を測らせてくれれば、もう退屈な思いはさせません」

「本当に?」

「本当に、本当です」

カナヤの提案にユメはしばし考えるように天井に目をやっていたが、納得したらしい素直に体を起こすと、再びカナヤの前に両手を広げてみせた。

「いい子ですね、じっとしていてください…」

カナヤは愛娘を褒めるようにそう言って、メジャーをユメの胸元に添えた。
しかしそれ以降、カナヤは一向にそこから手を離さなかった。
異変を感じたユメがカナヤを見下ろすと、カナヤは難しい表情で丁度唸り声をあげた。

「どうしたの?」

「長さがよくわからないんです。メジャーの調子が悪いのかしら?」

もう一度唸り、片手で顎をつまむカナヤ。そんな彼女に紙一枚のアナログなメジャーに調子が良いも悪いもあるのか、なんて疑問を持てども、ユメはふうんとだけ無関心に喉を鳴らした。
するとカナヤは閃いたように表情を明るくして。

「こうすればわかるかも」

むに。
突然、ユメの13歳児の胸を鷲掴みにした。
ひいっ!と引きつった悲鳴をあげて、当然のことながらユメは大幅に一歩身を引いた。

「カ……カナヤ!?」

両手で胸を隠しながら身をよじるユメが名を呼べば、カナヤは両手で口を隠しながら小さく笑い声をあげていた。

「ユメったら、おかしい!」

「お、おかしいのはカナヤでしょ!」

「うふふ、ごめんなさい。ただの悪戯ですよ」

「悪戯にも程っていうものが…」

「ふふ、あはは。ああ、本当にごめんなさい。もうしませんから、ねえ?戻ってきてください」

カナヤの言葉を、ユメは素直に信じようとはしなかった。今だって、カナヤはまだ小馬鹿にするようにユメを笑っているのだ。
しかし疑いの目を向けながらも、結局はユメは恐る恐るカナヤに近づいていった。
恐る恐る背筋を伸ばして、恐る恐る両手を広げた。
カナヤはそんなユメにまた笑い声をこぼした。

今度はウエスト周りにメジャーが添えられた。
しばらくはカナヤの様子を凝視していたユメだが、彼女に目立った動きが無いことを確認すると、少し安心を感じて顔を上げた。
しかしその瞬間、カナヤは待っていたとばかりメジャーを放り出して、ユメの腰をくすぐり始めた。
当然、ユメは酷いくすぐったさに思わずカナヤの頭を抱きかかえながら。

「ははは、ひいっ、ひゃ、カナヤッあはは!カナ、やめ、ひはははっ!」

「ユメ、ふふ、ならどうして私から離れないんです?」

「え、ひゃひゃはは!わか、わかんないぃ!」

何故かくすぐられればくすぐられる程ユメの体は強張り、カナヤの頭を抱いて離さなかった。
それを良いことに、カナヤはさらにユメを攻め立てる。裁縫で繊細さを身に付けたカナヤの細い指達は、ユメの腰を触れるか触れないかの割合で引っ掻くように弄んだ。
肌を守るものがキャミソールの薄い布だけしかないため、刺激は恐ろしく素直に通り、ユメはその貪りに、一時たりとも笑いを止めることはできなかった。

そしてとうとうユメの体は笑いに疲労し、カナヤの頭を抱いたまま、「あ」という間に背中から床に倒れ込んでしまった。
ユメの頭は床に放られていたクッションに、カナヤの頭はユメの13歳のクッションに受け止められた。

「ユメ…?」

カナヤはゆっくりと体を起こし、ユメの顔がはっきりと見えるよう彼女の顔の横に両手をついて、上半身を乗り出した。
ユメはひいひいと喘ぎ、その表情を見た時、カナヤはさすがにやりすぎたかと反省したと同時、思わず生唾を飲んだ。
血の色に紅潮した顔で、とろんと落ち掛けた瞳。薄く涙を浮かべながら肩を大きく上下させるユメの姿は、まるで"事後"だった。加え、カナヤはユメを下に組み敷いたような格好である。
自然とカナヤの頬も、翡翠色に染まり出した。

「カナヤ…酷いよお…」

「ああ、ユメ、本当にごめんなさい」

言葉とは正反対にやましい気持ちのまま、カナヤはユメの片足をつま先までするすると撫で下ろす。
くすぐったくも先程とは違う感覚に、ユメはかたく目を閉じてカナヤから顔を逸らした。
予想通りの反応に、カナヤは含み笑った。

「本当に、ユメは体を触られると弱いんですね」

「カナヤあ…も、もう止めてよお…」

「あら、まだ測り終えていない場所があるじゃないですか!…メジャーを取りたいのですけど…」

一度後ろを向いて辺りに目をはらせるカナヤだが、先程放り出したきり、メジャーはカナヤには見えないどこかへいってしまっていた。
しかしカナヤにとってみれば、別に困る事では無いのだが。
再びユメへ顔を戻すと、カナヤは意味深な笑顔を作った。

「…生憎、素手の感覚で上手くやるしかなさそうですね」

両手を開き、カナヤが虫の脚のように指をそれぞれ不規則に動かす。
ユメの小さな心臓が、どきっ、と大きく脈打った。

「冗談だよね?ほら、カナヤさ、正確に測って正確な服を作ってくれるって…」

「ええそうしたいのですが、メジャーが無くなってしまったみたいで。それにユメは先程、少しくらい服が合わなくても気にしない、って言っていたじゃないですか、ねえ?」

その時、ユメは自身の感情に任せた発言を激しく後悔した。

大丈夫、退屈させないって言ったでしょ?
そう言って、カナヤはユメの体に手を伸ばした。
その瞬間にあげられたユメの悲鳴は、しばらくして笑い声にも似たものに変化したのだった。

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