SSS(超短編)

Bloodborne



「月がきれいですね」

ヤマムラがぽつりと言った。
ヤーナムを見下ろす満月に目をやる。確かに青白く、美しい。手を伸ばせば今にも触れそうだ。

「そうね、きれいだわ」

そう言うとヤマムラはふと笑った。

「何か変なことを言ったかしら」

ヤマムラに目を丸くしてみせる。
いいや、とヤマムラは続けて。

「私の国では特別な意味をもつ」

「どんな?」

そう訊くと、ヤマムラは私を抱き寄せて耳元に優しく囁いた。

「あなたを愛しています、と」

「あら……」

その言葉に思わず頬を火照らせた。
ヤマムラが眼鏡越しに目を笑わせている。

「私も愛しているわ」

ヤマムラの肩に頭をもたれかける。
このまま幸せな時が続いてくれるなら。そう願いながら、私は月を眺めていた。

Back to main Nobel list