SSS(超短編)Homestuck
エマの髪の毛は良いにおいがする。
彼女の髪を嗅ぐ度に、何のグラブソースシャンプーを使っているのか気になって仕方がない。俺と同じカーストに位置する彼女のことだから、低血液者達よりかはそれなりに良いやつだとは思うけど。
そのシャンプーの妖艶な香りは、まるでスライムパイを食べたみたいに俺をうっとりさせた。
だから、俺はエマの髪から鼻を引き抜くことができないんだ。
「ガムジー?」
「あとちょっと…十秒だから」
少し苛立った声色で俺の名を呼んだエマ。
対して俺は、相変わらず彼女の頭を抱いて香りを楽しんでいる。
俺とエマは家が近いからか一年前からつるんでいるリア友同士だ。
カーカットやタヴ程がっつりしてないけど、チャットは女友達の中で一番多いし、たびたびこうして二人で会っては何かしている。大半、俺はパイで気持ちよくなってるから、加えてエマの髪を嗅ぐくらいしかやることないけど。
俺の脱力した返答に、エマは深く息を吐いた。
「さっきもそう言ってたじゃん。あと十秒、あと十秒って、何回引き伸ばしてるの」
「わかんねえ。けど、そんな多くないと思うけどなあ」
どうでもいい、と俺はエマを抱き寄せる。
背の低い彼女の顔は、簡単に俺の胸板に埋まった。
エマは一瞬黄色い目玉を見開いて、「離してよ」なんて顔を藍色にするが、言う割には特に抵抗しなかった。
俺はエマが本当はこうされて嬉しいってこと、ずっと前から知ってる。
素直になれない―まるでカーカットみたいな―彼女はそんなこと絶対に言わないけど。
だからこそ、俺は彼女に積極的になってしまうのだ。
「ガムジー、もう止めようよ。タヴロスから借りたゲームしたい」
「じゃ、あと十秒だけね……」
「ほら、やっぱり!」
獣みたいに呻いてエマは表情を歪めるけれど、そっちだってやっぱり俺から離れようとしないよね。
そう言おうと思ったが、きっとエマはその瞬間に俺を引き剥がそうとするだろうから、俺はまた髪の毛を嗅ぐ作業に戻ることにした。
俺の腕の中で熱くなったエマの髪のにおいは、先ほどよりもきのせいか甘さを増したように感じた。
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