2023/07/15(Sat)

夜の西ロマ

※西ロマ
※事後の描写あり


いくらスペインが優しく触れていても、ボトム側のロマーノの負担は大きい。だからといってセックスをしない、ということにはならない。二人の中でセックスは愛情表現の一種だという認識を、お互いにきちんと持っているからだ。
しかしボトム側の身体的な負担が大きいことは変わらぬ事実である。だからスペインはセックスを終えた後、フラフラしているロマーノをシャワールームへ連れていくことも、半分寝落ちているロマーノの体を綺麗にすることも怠らない。
スペインだって眠くない訳ではなかったが、ロマーノの体を清めてベッドまで連れていき、寝付く姿を見るまでがセックスだと思っている。というより、ロマーノと恋人になってから、そういう習慣が身についた。
事後のロマーノはすっかり脱力して、全てをスペインに預けてしまう。シャワールームへ連れて行くのも、体の隅々まで洗われることも無抵抗で、スペインのことを信頼していることがよくわかった。
まだ意識がはっきりとしている時は、普段言わないような甘い言葉を口にしたり、体を洗っている間に戯れでキスをしたりして、わかりやすくスペインに甘えてくる時間でもある。
照れ屋なロマーノは、寝惚けていただとか、何か言い訳が出来る時しかうまく甘えられない。スペインもそれをわかっているので、事後の雰囲気に乗じて甘えてくるロマーノを、好きなようにさせていた。
それにほとんど意識がない時は、本当にされるがままになっているので、甘えてくれる時間は貴重である。無下には出来ない。
体を拭いている時なんかはもうほとんど眠っていて、スペインは自身のことを後回しにして、ロマーノを寝室へと先に運ぶ。裸のロマーノをベッドに横たえ、タオルケットをかけてやり、寝る準備を整える。
その頃はまだ薄く目が開いていることもあり、スペインは眠そうにしているロマーノの額にキスを落とし、ひとりシャワールームへ戻るのがよくある流れである。当然ロマーノが元気なままの時もあるし、本当に最初から意識がない時もあるが。
「ロマーノ?」
自身の体も綺麗にし、スペインが寝室に戻ってくるころには、ロマーノは完全に眠っていた。横になっているロマーノの肩が静かに上下に動いているのを見て、スペインは起こさぬようゆっくりベッドへ上がった。
スペインもロマーノの隣で横になり、肘をついてじっと寝顔を観察する。キスマークをいくつも散らしている情事の痕と、あどけない表情で眠るロマーノのアンバランスさに愛しさを感じ、スペインは笑みを浮かべる。今のように、じっくりとロマーノの寝顔を観察することが、スペインは好きだった。
疲れ切って眠ってしまったロマーノは、そう簡単には起きない。なので舐めるように寝顔を観察していても、ロマーノに怒られることもなかった。もちろん見つめられることに照れたり、顔を真っ赤にしながら文句を飛ばしたり、コロコロと表情が変わるところも好きなのだが。
すやすやと眠るロマーノの頬を、スペインの指が優しく撫でる。起こさないように、産毛を撫でつけるような軽い触れ方で、顎まですっと伸びるラインをなぞった。そのまま首筋を通って、点々と散った赤いキスマークを辿っていく。それはロマーノに対する、スペインの執着の痕でもある。
今までスペインは、そういった衝動に駆られたことがなかった。国である以上、人間相手に強く執着することは難しい。国民を愛しているし、守るべき大事な対象ではあったが、誰か一人に特別固執したことはない。
国に対してもそうである。いずれ独立していく彼らを、強く縛り付けることはできなかった。ずっとそばで守っていたかったが、スペインは時代とともにかつての力を失ってしまい、離れていく彼らに対して手を伸ばすことは出来ない。そういうものだと、仕方がないのだと受け入れるしかなかった。
けれどロマーノは、一度離れてからもスペインの隣を望んだ。属国でなくなった後もスペインを頼ってくる姿は、随分とスペインを慰めた。彼に向けていたい愛情が、きちんと掬い上げられた気持ちになれたからだ。
そうしてようやく、スペインはロマーノを特別な意味で愛するようになった。強く彼を望んでも、ロマーノはそれに受け入れて、応えてくれる。そのたび、スペインの独占欲や執着はどんどん目に見えて現れてくるようになったが、ロマーノがそれを拒絶することはなかった。
スペインがロマーノに残した証拠を確認すると、自身がいかにロマーノを愛しているのかを、改めて実感してしまう。これはロマーノを先に寝かせる習慣が身についてから気付いたことだったが、スペインの愛を一身に受けたロマーノを前にして、少し恥ずかしさも感じつつ、誇らしさのようなものも感じてた。
スペインの愛を纏ったロマーノの寝顔を、この近さで見れるのはスペインだけ。この距離で触れることが許されているのも、素直に甘えてきてくれることも、愛した証を肌に残すことが出来るのも。
何もかもがスペインにだけだと実感し、スペインは自身が満たされていくのを感じている。
「……ん……ペ、イン……」
「ロマーノ?」
眠っているはずのロマーノの手が、ベッドを彷徨っている。起きている様子もないが、何かを探すようなその手にスペインが触れると、ロマーノは安心したように小さく笑みを浮かべ、また寝息を立て始めた。
夢の中までスペインといるのか、ただ無意識にスペインを探してしまうか。理由はわからなかったが、よくロマーノは今のように眠りながらスペインのことを探すことがあった。そしてスペインが手を握ってやると、途端に安心した表情を見せる。
スペインは一度眠ってしまうと、朝までぐっすり熟睡する性質なので、眠っているロマーノがスペインを探していることに気付いたのは、恋人関係になってからだ。先に寝落ちてしまうロマーノを見つめていて、やっとそのロマーノの癖に気が付いた。
この時間のことを、ロマーノは当然知らない。スペインは教えていないし、ロマーノの記憶には残らない行動である。だから眠っているロマーノを見て満たされているスペインも、スペインを感じて安心しているロマーノも、知っているのはスペインだけだ。
「……おやすみ。ロマーノ」
そんなロマーノを起こさないように、スペインはゆるくロマーノを抱きしめる。そしてまた額にキスをして、スペインも目を閉じた。
出来ることならスペインも、夢の中でもロマーノに会えるようにと願いながら。

小ネタ 西ロマ
前へ次へ