9話

南方への出兵命令が出た。王騎将軍という巨大な存在を失った今が好機だと考えた周辺の国々が国境付近に攻め入って来たのだ

「なんか細々した戦だねー」

「直ぐ、終わらせる」

蒙恬、現在三百人将。この戦で更に上の隊へと進む武功が挙げられそうだ。刀を持つ拳に力が入る

その頃丁度他の方で蒙恬と同じ年代の将が派手に功績をあげているという噂がこちらの方までやってきていた。私はソイツらをライバル視してしまいがちで、武功をあげたという噂が耳に入ると悔しさが込み上げてくる。蒙恬はどう彼らを捉えているのだろうか。なんにしろ私は自信を持って言えることがある

「この隊が一番強い」

「ハハ、どうしたの急に」

…声に出てた

気恥ずかしい。こういう事言うキャラじゃないのを1番知っている奴に聞かれた。思わずそっぽを向く

「まあ好敵手って思ってもしょうがないよね、同年代って」

なんだ、分かってたのか。蒙恬も彼らに興味を示しているらしく、同じ戦場になったときは声をかけてみようなんて呑気なことを呟いてた

「飛信隊は知らないけど、アイツ嫌い」

「ホント王賁と仲悪いなぁ」

エリート武家出身の王賁と戦争孤児出身の私とでは相容れない壁が高く、互いの印象は悪いままだった

「ボンは武家なのに何で、私なんかを…」

私を隊に入れることで士気が下がったかもしれない。女風情だと差別しているものもまだいるだろう。そんなこと分かりきっていたが、それを承知の上で隊に受け入れた蒙恬の心理が分からない

「俺は身分よりも実力で選ぶからさ、名前には戦の才能がある。それに…」

「それに?」

「あー、やっぱ何でもない。そろそろ頃合いだ。行こうか」

いつもスラスラとよく分からない言葉を並べている彼が変にまごついていた。変なの、とは思ったが気にならなかった。目の前に戦場が広がる。作戦どおりに進めば半日でこの場所は片付く。先に馬を進めた蒙恬の後ろを追って私も戦場へと向かった

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