2話

「これ!お前も雑用から逃げたようだな、蒙ごう様に拾われた身でなぜ奉公せぬ!」

「え、じーちゃんの?」

ゴツンと、あの子には容赦ない拳骨が脳天めがけて落ちた。あれは痛い。それより祖父に拾われたとはどういうことか。この子は何者なのか知りたかった

「奴は…いわゆる孤児ですな。戦の帰りに蒙ごう様が気に入って拾ったと…。使用人として働かせているのですが、これがまたサボるサボる。コラ!速く行かぬか!」

じいに怒られて仕事場に戻るよう促される。先程よりすこしムスッとしている気がした。返事もせずにその場を立ち去ろうとする。しかし、それは俺がその子の手を掴んだから阻止された

「ねぇ、名前は?な、ま、え」

「名前…名前」

単語一区切りでしか話せないようで、一つ一つ丁寧に言わないと伝わらない。そのとき俺はこの子は言葉をまだ理解していないのではないかと感じた。名前は名前。雲という言葉さえ知らなかった。なにを写しているかわからないその眼は確かに普通の人とは違う独特な感じが伝わってくる

掴んだ手を離してほしいのか、手の方に目線を向けた。慌てて離すとそのまま俺に背を向けてそそくさと走って行ってしまった。全体的に細くて十分に食べてきていないことがすぐわかる、そんな容姿だ。そんな頼りない背中は振り返ることもなく姿が見えなくなった

「なんと無礼な!全く…1から躾が必要じゃの。はぁ…」

俺の世話だけで大変だろうに、厄介事が増えたじいに少し同情する。不思議な子だと思った第一印象。これが名前との初めての出会いだった

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