5話

「マジか…」

戦況は思っていたよりも難航していた。まるで俺が出そうとしたところを読み切っているかのよう。しかし、攻め方が全くなっていなかった。上手く避けるくせに決まりとなる一手を出せずにいるのだ

「…やったことあるの?」

「ない」

俺の方なんか見向きもしないで紙の上に広がった戦場に興味津々だ。名前が一手を打つ。しかし、それは俺の予想通り。これが決め手となり俺が勝った

「意外と強いね…。此処に来るまでどうやって生きてたんだ?」

「やったこと、ないけど、見たことなら、ある」

負けて悔しいのかいつもより表情が険しい。負けて当然なのに。自分の分を片付けてしばらくは目を合わせようとしなかった

「…本物の。そこに、いた」

俯いたまま。そう言った。表情が見えないから一定のトーンで発した言葉からは感情を読み取れなかった

「蒙ゴウ…し、将軍に会ったのも戦場、だった」

名前が人の名前を覚えているとは。流石はじーちゃんだ。過去のことを話してくれるほど俺に心を開いたのだろうか。なんて言葉をかければいいのか、そのときはわからなかった。そのような境遇にあった人を今まで知らなかったから

気まずくて俺も駒を片付け始める。すると、襖を誰かが開けた

「フォッ…蒙恬。此処にいたのか」

「じーちゃん!」

それはじーちゃんだった。しばらく会えていなかったから思わず側へ駆け寄り抱きついた

「フォフォッ。蒙恬、もう名前と仲良くなったのか」

俺を抱き上げてじーちゃんと目線が同じ位になる。名前を呼ばれると名前はそろそろと傍へやって来た

「一方的なんだけどね。だけどさ、名前ってすごいんだ!軍師の才能あるよ!」

じーちゃんは名前の方を見て微笑んだ

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