SS


雑多においてます
名前がないものからNSFWまでいろいろ
閲覧は自己責任でお願いします




0820

頼むから、


(アンヴァルゆめ)

忘れて、なんて残酷な言葉を突きつけないでほしい。これは俺の仕事のパートナーである彼女の口からこぼれた言葉に、感じた俺自身の気持ちである。落ちた言葉は、好きというただ一言。ちょうどいつものバイタルチェックを行い、その結果を伝えたその時だった。彼女に対しても、俺なりに気持ちを積み重ねていた部分もあったので、勿論その言葉を聞き逃さなかったし、目の前にいる相手自身からこぼれ出た純粋な気持ち──ふとした瞬間にときめいている、両思いであるのではないかと、自分の中で深い喜びを得ていた。
それなのに、彼女は自分の発言に責任を持てなかったのか、は、と気がつき慌てて手を振り忘れて!と。そうして今に至るのだが。頼むから、頼むから、

手遅れだということに気がついてくれ

気がついたら彼女の手首を掴んで手繰り寄せていた。普段から優しくしようと接していたつもりだというのに。もう俺自身が手遅れだということにも、この時には全く気がついていないのにも、もう遅かった。

0331

きみのかたちのゆめをみる


(ハンデッドゆめ)

きみのかたちのゆめをみる。それもかなりの回数を、ゆめにみている。その場にきみがいたことから、きみとの自己願望めいた行動まで。何から何まで、きみとのゆめを眠りの上で思い描いているのだ。
最近閲読したロストフラグメントでは、見知った人物が夢に現れることはその人に想われている、らしい。
全く、馬鹿馬鹿しい。
それならばなぜ俺の元にきみが頻繁にやってくるのか、不思議で仕方がない。
パチ、パチと″趣味の一部″である剪定をしながら、俺は黙々と考える。しかし、思えば思うほど、きみのことで頭がいっぱいだった。その内、
「っ、」
不意に指を切ってしまった。あまりにも自分の不注意な行動に、くくくと自嘲の笑みがこぼれてしまった。幸い傷は浅いもので、血もすぐに止まった。
…止まったというのに、まだ考え事が止まない自分に、俺らしくない、と心の片隅が主張する。それでもなお、きみとの空想はやめられない。そう、夢の中できみの形を思い描いていたように──

0129

その熱を、飲み下す


(ゆめなのか?たぶんゆめです)


まるでそこら中にピンク色のふんわりとした煙が部屋の一室を占めるのかと錯覚してしまうくらいには、私は彼の“フェロモン”というものにやられていた。
雄の匂い、とも言ったほうがいいのだろうか。汗臭いようなニオイではなく、雄そのものが今目の前にいる番に対して、放つような──くらくらする、淫靡な香り。そんなものにあてられていて、もはや理性が灼き切れそうだった。
それだというのに、彼は何もしてこない。キスや手を触れることすらもしない。ベットの上で、崩れた体勢で、2人でにいるというのに。
してくるのは、ただ、ただ、見つめるのみ。じっとりと、それでも私を離さない鋭い瞳で見つめてくる。その私を映す双眼が、どこか“誘っている”かにも見えた。
ごくり。思わず喉が鳴る。次の瞬間には、もうやることは決まっていた。
その熱を、飲み下す。彼の甘い誘いに負けたが最後、待っているのはとびきりの快楽のみ。

1210

刺し違えてでもお前と結ばれてやる


(誰なのか 書いた自分も わからない 575)

満足なんてできる訳がない。こんな形で恋が終わってしまうだなんて。俺自身、この恋愛にぬるま湯に浸るような、一定の安心感があったのだというのに、急な彼女からの別れに冷や水をかけられた気分になっていた。嫌な汗が珍しく、伝う。こんなことで弱気になってしまう俺自身が憎い。嗚呼、どうせなら俺なりの足掻きを見せてやろうか。俺を恋人にしたらどうなるか、最後まで骨までじっくりと味合わせてやる。そうして彼女の口から俺に向かって永遠の愛を誓うまで。俺は、

1031

足りない


めちゃくちゃハロウィンイフ×女主人公SS……

「トリック・オア・トリートォッ!!」

ハロウィンの″例の呪文″を私に向かって叫ぶイフリートに、ふと笑みがこぼれる。仮装をした彼の姿は、いつもよりなんだか非日常を感じさせるものだった。…ハロウィンだから当たり前かも知れないけども。

「いたずらは嫌だから…はい、お菓子」

そう言ってカバンの中からクッキーを取り出した私は、彼にそれを手渡した。

「……それだけか!?」

彼はムスッとしてどこか不満そうな顔で私を見つめる。

「え?クッキーじゃダメ?」
「ダメじゃねえけどよォッ…イタズラ″も″ご主人にさせてくれよなァァッ!」

そう言い抱き寄せて、彼の″イタズラ″は始まったのだった。
翌日にどうなるかなんて、今の私たちにはどうでもよかった。

0427

翁草


(ハンデッドさんっぽいの)


花の種を貰った。彼は皮肉混じりに君に育てられるかな…と言いながらもちゃんと的確に指示をしてくれたのが、思い出深かった。
花が育ってきた。育ってきたのに反比例して彼が来る日が少なくなっていった。それはそれで心配に思ったが、どうしても言い出せずにいた。そんなこともつゆ知らず、彼はまたいつも通りに茶々を入れながらもアドバイスをしてくれた。
花が咲いた。花を見せようと彼の元に行くも、彼はもうどこにもいない。遠征に行ったとの噂を聞いたが、本当かはわからない。でもこの花が翁草であること、そしてこの花の本当の意味を知ったのは4月の肌寒い冬が残る時期だった。



0427

忘れてしまった


(お相手自由、死ネタ)


俺の恋人の名前はもう忘れてしまった。いや、忘れていたかったのに、今でも俺を苦しめる。俺を庇って負傷したまま死んでいった君の名前は、君のことはもう忘れた。その方が、よかったというのに。今の俺には、それができなかった。バーカウンターにある、君の好きな酒の入ったグラスがカラリと嗤った。

診断メーカーより

0206

ホワイトサワーに溶ける恋


(イフ主2)


私とイフリートの2人きりでファミレスに来た時のことだった。私はホワイトサワーを情けなく啜りながら料理を待っていたのだが、唐突に彼から飲み物を一口交換しねえか!?と言われたのでそれに快く応じた。彼の持つ手にはフレッシュな感じのするオレンジジュース。そのグラスがぐいと私の顔めがけてやってくる。もしかしてコップ直飲み──
そんな思考を遮られ、柑橘の味覚が口の中に流れ込んでいく。あ、甘い。これは、オレンジジュースだ。
そんなことよりも、これは間接キスなのではないかと一瞬混乱してしまう。さっきイフリートはコップに飲んでたっけ、あれ?そもそもストローで飲んでたか?なんて、あれこれ考えていたら、
「ほら、大将のも飲ませてくれやぁ!」
さあさ、と勢いよく迫られた。この場の流れを乱すのも悪い気になってしまう。私は少し体温が熱くなるのを感じながら、ガラスに注がれた飲みかけのホワイトサワーに、ほんの少しの恋心をとかしながら彼の口元へと導いてやったのだった。


0206

春の訪れ


(アンヴァルさんゆめ)


「これから先、お前に俺の命を預けたいんだ」
私に重すぎる言葉の一撃を喰らわせたのは大柄の無愛想な戦闘サイボーグの彼だった。言葉の重みが深すぎて、目の前にいるというのに思わず、目を疑った。
「どうして、そんなことを?」
不意に出た言葉が疑問を紡ぐ。あんなプロポーズまがいのことを言われたら、そりゃあ誰でもそう言いたくなるだろう。彼に真相を聞いてみた。
「そうだな…お前と共に過ごしていてそう思った、それだけだ」
それだけじゃ、だめか?と言ってほんのりと顔を赤くする、無愛想だった、彼。言葉の不器用さが節々に伝わるけども、なぜか伝わるこの感じ。聞き終わった頃にはもう、私はYESの返事と共に彼の腕の中に収まっていたのだった。




0206

四十六億年の恋


(大柄でなにかありそうならお相手自由な夢)


私はあの人に恋をした。大きな身体をした、どこか影のある彼に、恋をしてしまったのだ。人を愛すること自体、初めてであったので、この気持ちをどうすればいいか分からず思わず胸に秘めているのだが、彼といるとどうしても自分が自分でない気持ちになりそうでこわい気持ちに苛まれる。でも、これが私のはじめての恋だというのに、この地球が生まれてきたよりもずっと彼を思っていたのではないかという気持ちになるし、その感情を時折わかってほしくて彼にぶつけたくなってしまう。いや、もういっそのこと、彼に自爆して愛の天体衝突でも起こしてやろうか。よし、そうだ、そうしよう。そうすればこの四十六億年越しの恋は終わるし、思っていた気持ちも、晴れていくだろう。この気持ち、どうか綺麗な超新星になって私の中で昇華しますように──

そうして彼女が、男に向かって己の愛の独白をするまで残り数十秒。その結果を知るのは、この自転する惑星だけが知っていたことであった。




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