影鬼の名前を返して消えていった時、笑ったんだ。
小春は兄である夏目にそう言われ『え?』と返した。
「すまなかった…って言われた」
「………」
「影鬼は全て分かってたんだと思う…俺がレイコさんじゃないのも、小春が友樹さんじゃないのも…2人がもうこの世にいないことも…全て分かってたんだと思うんだ…」
兄の言葉に小春は黙って兄を見つめ、夏目は自分を見つめる妹に小さく笑った。
小春は小さく笑う兄から顔をゆっくりと逸らし、病院特有の白すぎる布団へと目を移す。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「私、夢を見たの」
「夢…?」
自分の言葉を聞き返す夏目に小春は『うん…』と小さく頷く。
「滋さんと塔子さんに手を握られながら眠った時にね、夢を見たの……おばあちゃんとおじいちゃんと影鬼の夢を…」
「!…レイコさんと友樹さんの…?」
「うん…」
驚く兄に小春は夢の話を全て話した。
レイコとは喋れなかったことも、影鬼の言っていた事も、友樹が伝えた事も全て話した。
夏目は妹のその言葉に目を見張った後『はは…』と小さい笑い声をもらす。
俯いていた小春は兄の声に顔を上げ小首をかしげる。
「お兄ちゃん?」
「ごめん……そっか…そうだね…」
首をかしげる妹に謝りながら夏目は笑うのをやめ微笑む。
小春の手を握り、小春はその握られた手に目を移した後兄を見つめる。
「小春、長生きしよう」
「え?」
「長く生きて、ゆっくり父さん達のところに行こう…俺と一緒に…」
「お兄ちゃん…」
微笑む兄の言葉に小春は握られている兄の手を握り返し、小春も笑いかけ頷いた。
「うん…一緒にお父さん達のところにいこうね。」
頷いた小春に夏目は笑みを深めた。
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