「あの、さあ……」

震える声を発したピーニャに視線が集まる。スター団の各ボスとマジボスが揃っているこの場で、彼はなにを言い出すのか。しかもなんだか彼の様子はおかしい。
「まさか、またいじめが」誰もが最悪の未来を頭に過らせた。否応が無しに緊張感が走る。STCを始め、そこから徐々に授業の出席を再開しているとはいえ、いまだにスター団から距離を置く生徒は多い。それが各ボス相手ならばなおさら。

リーグと学園に提出するSTCのデータをまとめる会兼いつもの近況報告会。雑談を繰り返していた先ほどまでの和やかな空気は一掃され、ピーニャが発する次の言葉を全員が身構え、待つ。内容によってはSTCどころの騒ぎではないからだ。

「みんなには、言っておかなくちゃいけないって思って」
「なにを?」

マジボスもといボタンが代表して尋ねる。彼女は努めて優しい声と口調で続きを促した。ピーニャが抱えている想いを飲み込ませないように。以前は機械越しだったけれど、今回は違う。リアルで、傍らにいる『友』として彼の力になりたい。力になれると信じている。
ピーニャはボタンの眼差しを受け、覚悟が決まったのだろう。ぐっと大きく息を吸い込み、叫ぶようにして言った。

「チクマくんと、お、お、お付き合いすることになった!」

首まで真っ赤にしたピーニャの報告≠ノ彼の仲間たちは一瞬呆けた後、はじけるように「わあ! 素敵!」「これはふいうち≠ネ吉報でござるな」「え、えと、おめでと……?」と口々にそれぞれの祝いの言葉をかけた。明るい雰囲気が戻り、ピーニャ自身照れつつもどこか嬉しそうだ。しかしメロコとオルティガだけは、場にそぐわない不満そうな表情を浮かべている。

「やっとかよ」
「いまさらその報告、いる?」
「もうっ、メロコちゃんもオルくんも! おめでとうって素直に言うところだよ、ここは!」

ビワに注意され、さすがにバツが悪くなったのか二人は「でも……」と言い訳を重ねる。祝いたい気持ちは確かにあるけれど、それよりも前につい出てきてしまったのだ。気持ちを隠さない二人だから余計に。

実のところボタンとシュウメイも同じだった。実は彼女ら胸中で同じことを思っていたのだ。「やっとかぁ」と。なにしろピーニャがチクマに片想いをしているのは仲間たち、もといスター団の中では暗黙の了解で、なんなら「ピーニャくんを優しく見守りましょう」の掟だってできかけていた。つまりスター団全員からピーニャの恋は、それはもうあたたかく見守れていたというわけである。知らぬは本人ばかり。



チクマがあく組『チーム・セギン』にやってきたのはSTCが始まってすぐのこと。乱れの見えない制服を校則通りきっちりと着て、これまた汚れなく磨かれたローファーでピーニャの元に訪れた。彼も含め、制服を改造しているスター団員に囲まれたチクマは異様に浮いている。
彼女の丁寧に梳かれた髪が風で揺れるのをピーニャが思わず見惚れていると、チクマは「あの……」と小さいながらも凛とした声で、彼に話しかけた。

「ここでポケモンのトレーニングができると聞いたのですが……」
「うん。できるよ。さっそくボクと勝負する?」
「いえ、ポケモン勝負をしに来たのはではなくて……」
「ならどうしたの? STCはポケモン勝負やレッツゴーでポケモンを鍛えるのを主にしているんだよね」

いずれはそれ以外のこともできるようになるだろうけど、と付け加えながらも、ピーニャはチクマの様子を伺った。大人しそうな子だ。それが第一印象。制服以外の校則は自由な学園の中でも、彼女は全く遊び≠していないのだろう。つややかな髪は一度も染めたことが無さそうで、所在なさげに動かす指の先にある小さな爪は短く切りそろえられている。けれども少し手が荒れているように見えて、そこだけは気になった。

そんなチクマは、ようやく決意したのだろう。ぐっと身体に力を入れ――ピーニャに頭を下げた。

「お願いします! あくタイプのポケモンと仲良くなる方法を教えてください!」
「……は?」
「私、がんばりますから! 厳しくてもついていきます! お願いします!」
「ちょ、ちょっとストップ! 話を聞くから、とりあえず頭をあげてよ!」

女の子に頭を下げられるなんてこと、今までなかった。慌てながらも「立ち話もなんだから」とピーニャはチクマをベンチに座らせた。それでも小型ポケモンが興奮するかのようにパタパタと動くチクマを落ち着かせるため、ピーニャは備え付けの自販機でミックスオレを買う。

プルタブを開け「気をつけて」なんて一言を添えれば、ようやくチクマも我を取り戻したらしい。今度は羞恥でいたたまれなくなったのか、俯いてしまう。小さくお礼を言って受け取ったチクマに飲むよう促せば、今度は大人しくそれに従った。

「それで、あくタイプのポケモンと仲良くなりたいカンジ?」
「……はい」

曰く、彼女は最近ゾロアをゲットしたらしい。しかしそのゾロアとなかなか仲良くなれないとのこと。いたずらをして自室をぐちゃぐちゃにされることなんて、日常茶飯事。手を焼いているのが自分だけならまだいいが、いつか他の人に迷惑をかけたら――とチクマはずっと悩んでいた。

「どうしたらいいんでしょうか……」

荒れた手はそのいたずらの始末をしているせいかもしれない。
ピーニャは思わずチクマの手に視線を向けた。ぎゅうとミックスオレを握るその手は震え、気づけばチクマの瞳には涙がたまっている。今にもこぼれそうなそれに気づき、ピーニャの心は締め付けられた。何を言えばいいだろう。伝えればいいだろう。少しでもこの子の気持ちが軽くなるように、でも適当なことは言いたくない。ピーニャは言葉を探す。

「――ゾロアは元々臆病なポケモンなんだよね」
「おくびょう? そんな様子は全然」
「意外? ボクも初めて知ったときは驚いたよ。他のポケモンに化けているのも驚かせるためっていうより、自身の身を守るためなんだってさ」

あくタイプを手持ちにすると決めた時点でピーニャは彼らの生態を勉強していた。それがポケモンたちと向き合うために必要なものであり、ピーニャ自身ができうる最大の誠意だと思っていたからだ。ゆえに手持ちにはいないがゾロアの生態も頭に入っている。

ゾロアは意外とおくびょうな性質も持つ個体が多い。いたずらも、その隙に逃げるためわざと人間を驚かせているという説が一般的だ。
だからさ、とピーニャは続ける。

「もしかしたら、チクマくんのゾロアがいたずらするのも、なにか理由があるのかも。たとえば、キミに構ってほしいとかさ」
「……構ってほしい、あ……!」
「なにか心当たりあるカンジ?」
「私、本当はシキジカを探していたんです。でも代わりに、シキジカに化けたゾロアに会って……」

もしかしたら。もしかしたらゾロアは怯えているのかもしれない。自分はチクマの求めていたシキジカではない。けれどもずっとシキジカに化けていることもできない。だから『自分』を見てほしくて、構ってほしくて、それをいたずらという形で表現していた。

「今でも、チクマくんはゾロアよりシキジカがいい?」
「い、いえ! もうそんなことはないです! 私は、ゾロアと仲良くなりたい!」
「じゃあ、ゾロアにそれをぶつければいいっしょ! 心が繋がっている感覚は大事にしたいし、それはそれでいいことだと思うけど、やっぱり言葉にしないとわからないことや伝わらないことってあるじゃん?」

ピーニャの脳裏に浮かぶのはスター団の仲間たち。言葉にしなくとも自分たちは繋がっている。だからこそ言葉にする大切さも痛いほど知っている。

「チクマくんなら、大丈夫。ゾロアとも仲良くなれるよ。ボクに頼らなくてもさ」

安心させるようにピーニャはにこりと微笑んだ。チクマはその言葉と笑みを受け、心が軽くなっていく。あたたかくて優しい気持ちが、不安な気持ちを押し流すようだった。その感情と比例して、目じりから一筋の涙が流れる。その雫にはピーニャももちろん気づいていて。慌てて彼はポケットからたたまれたハンカチを取り出すと、彼女に差し出した。

「あのさ、よかったら」
「あ、ありがとうございます……」

ハンカチを受け取ったチクマはそっと目元に当てた。濡れたまつげが揺れ、伏せられる。その光景をなんだか自分が見てはいけないような気がして、ピーニャはつい視線をそらした。

「ハンカチ、洗ってお返ししますね」
「そ、そんな、気にしなくていいよ」
「でも、ちゃんとアイロンまでかけてあるんですから。これぐらい当たり前です」

チクマはほんのりと頬を赤らめ、控えめに微笑んだ。こっそりと内緒話をするような、淡い笑みではあったが、見たことのない甘やかさにピーニャの胸がドキリと跳ねる。

「ピーニャさんに頼ってよかったです。……あの、また来てもいいですか? まだいろいろ教わりたいです」
「も、もちろん。いいよ!」

こうして二人の交流が始まった。
彼女はほぼ毎日、チーム・セギンを訪れ、ピーニャやスター団員と共に過ごした。
チクマは涼やかな風のような存在だった。しゃんと伸びる背筋も、控えめな笑い声も、大人しく優しい性格も。時には真面目で融通が利かないところも。アクの強いスター団の中でも彼女は自然と馴染み、チーム・セギンのメンバーにとっても無くてはならない存在になっていた。

チクマも彼らの力を借りて、ゾロアともお互いの理解を深めることができた。やはりゾロアは素直になれないでいたようだ。今はいたずらに頼らなくてもチクマに甘え、大人しくしている。ただピーニャに対しては、一切いたずらが止むことはなかったが。

その度にチクマはピーニャに謝ったが、ピーニャ自身は気にしていなかった。むしろ申し訳ないと思うほど。なぜなら彼はゾロアがそういう態度を取る理由がなんとなくわかっていたからだ。
自分はチクマに恋をしている。それをゾロアは察して、チクマを取られたくないがゆえにいたずらをしているのかもしれない、と。

そう。ピーニャはチクマに惹かれ、恋をしていた。絵に描いたような片思いを。
まず気づいたのはチーム・セギンのメンバー、そして各組のボス、マジボスであるボタン。スター団総出で彼の恋を見守っていた。おさわり禁止、流れに任せましょうを合言葉に。でも多少はアシストを。主に二人きりにするとか、そういうアレで。

あいにくとピーニャの恋愛経験値は少なかった。元生徒会長ゆえの、変な真面目さが邪魔をしていたのだ。加えて「告白をするなら自分から」ともピーニャは決めていた。ビシッと決めて、かっこよく告白したい。ライムもそう歌っていたから、と。あとちょっぴりのあこがれとプライド。

今日もチーム・セギンに訪れていたチクマ。いつもは団員がいて騒がしいのに、なぜかその時ばかりは誰もいなかった。二人きり。けれど決して居心地の悪さを感じる静けさじゃない。言葉にしなくとも、二人の気持ちは同じだった。
だからこそ、ピーニャは伝えた。自分の想いを。

「……好きです」

その一言にチクマが息をのんだのがピーニャにはわかった。誰が、誰に。なんて野暮なことは言わない。今ここにいるのは自分たちだけ。ピーニャは顔だけではなく耳も首もまっかにして、いつも通る声とは正反対な潜めた声を出している。描いていたかっこいい告白ではない。チクマのことが好きでたまらない。それがわかる声だった。
けれども今。この時間が。チクマと共に過ごす時間がすごく愛おしくて、つい言葉があふれてしまったのだ。

「私も、好きです」

囁くような声量だったが、ピーニャにはしっかりと届いていた。ピーニャは驚きで目を丸くしたあと、小さく拳を握り、平静を装いながら一歩チクマに近づいた。そしていつも通りの会話をする。

「あ、のさ。新曲作ったんだけど聞かない?」
「……はい、聞きたいです」

関係は変わったけれど、自分たちはいつものペースで。
楽しそうに新曲を聞くチクマの横顔を見つめ、ピーニャは幸せをかみしめた。



「みんなにはちゃんと伝えておこうと思ったんだけど、そもそもとっくにバレてたってワケね……」

羞恥で顔を赤くするピーニャをフォローするのはビワばかり。他のメンバーは「まあ、あれだけわかりやすければ……」と思わず顔を見合わせた。

なにしろピーニャがチクマのことを好きすぎているのだ。チクマと交流を持つようになってから、ピーニャの話題には必ず彼女の名があがっていたし、チクマを見つめる眼差しはポケモンに向けるものでも、仲間たちに向けるものとも異なっていた。ただチクマだけに注がれる感情。素直なピーニャにとってそれが表に出ることは自然なことであり、彼と付き合いが長ければ長いほど、すぐにわかってしまうものだったから余計に。

「でもよかったじゃねーか」
「まあ、確かに。オレたちも二人のこと気になっていたしね」
「想いが結ばれることは喜ばしいゆえ、めでたいでござるな」
「それにうちらに教えてくれたってのもさ。結構うれしかったりして」
「チクマちゃんとピーニャくん、すっごくお似合いだもの!」

「ようやく……」といった気持ちは否めない。しかし、それよりもピーニャの想いが報われた喜びのほうが大きい。こんなに嬉しそうで幸せそうなピーニャが見られるのなら、多少の惚気も許してやろう。メロコとオルティガでさえ、そんなことを思っていた。

「それでキスぐらいはしたよね?」
「き、き、キス!?!?」
「は? そんな驚くことじゃ――まさか」

オルティガが自身の失言に表情を引きつらせる。一方でピーニャは先ほど以上に顔を赤くして、なんなら汗までかいていた。その様子から全員が察する。こいつ、全然進展していないんじゃないか!? 今までの関係のままなんじゃないか!?

「おいおい! 告白してOKもらうのがゴールじゃねーぞ!? むしろそこからがスタートだろうが!」
「だ、だって、チクマくん、ププリンみたいじゃんか!? ふわふわできゅるんってしていて……あっという間につぶれそうだよ!」
「人はそう簡単に潰れねーよ!!」

聞き出せば、手を繋ぐことしかしていないとのこと。ピーニャ曰く、どうにも照れてしまうらしい。

「好きすぎるゆえの弊害でござるな、これは」
「や、でも今時、ハグもキスも別にマストじゃないしさ」
「甘いでござるよ、ボタン殿。チクマ殿はもしかしたら先に進みたいと思っている可能性があるゆえ」

確かに今のピーニャの様子を見ると、チクマの気持ちはまだ確認していないように見える。チクマの性格上、もしかしたら言い出せないだけかもしれない。その可能性はある。

「そっか……。ちゃんと言葉にしないとわからないよね」

ぽつりとボタンが呟いた言葉はピーニャにも届いていた。
そうだ、彼女にそれを言ったのは他ならぬ自分ではないか。心で通じ合っているからこそ、言葉にする必要もあること。その大切さを、自分もチクマも知っている。
自分はこれからもチクマと一緒にいたい。そのための努力は惜しまない。

「ボク、チクマくんに確認してみるよ」
「それでキスしたいって言われたら、できんの?」
「で、でき――」

コンコン、とノック音が響く。全員がドアに注目すると、その奥から「チクマです。大丈夫ですか?」とまさに渦中のチクマの声が聞こえた。
ボタンが入るよう促すと「失礼いたします」と丁寧なあいさつの元、静かにドアが滑る。

「すみません、まだお話し中なのに」
「いや、全然。大丈夫。雑談しかしてないし」
「でも……」
「それよりもチクマちゃんはピーニャくんに会いに来たんだよね?」

途端にぽっとチクマの頬が赤みを帯びた。ビワの言うとおりだったからだ。
もう帰宅するから少しだけピーニャの顔を見られたら、と思ってチクマはスター団のミーティングに寄ったのだ。スマホロトムでメッセージを送ればよかっただけの話なのだが、今日はピーニャと会う機会が無かったのでどうしても彼の顔をチクマは見たかった。

「ピーニャ殿」
「片づけはオレたちがやっとくからよ」
「チクマさんを送っていきなって」

でも、とピーニャが躊躇いを見せる前に仲間たちは彼を小突く。いいからここは任せていけ、と。

「……みんな、ありがと」

ピーニャは荷物を手早く詰め、ボタンたちと話すチクマの元に向かう。二人も、ピーニャのためにチクマを引き留めてくれていたのだろうということは言葉を交わさずともわかった。

「チクマ、送るよ」
「でも……」
「じゃあみんな、おつかれさまでスター!」
「お、おつかれさまでスター!」

仲間たちの「おつかれさまでスター!」の声に見送られ、ピーニャとチクマは帰路に着く。
といってもピーニャが学園寮を利用しているため、学園から離れるのはチクマだけだ。彼女の自宅はテーブルシティにあるため、学園寮の利用基準を満たしていないのだ。
外はすっかり夕暮れで、テーブルシティはオレンジ色の光に包まれている。ぽつぽつと街頭に明かりが灯るのを見下ろしながら、二人は長い階段をゆっくり降りていった。

「ごめんなさい。みなさんとの時間を邪魔してしまって」
「重要なことはもうとっくに話し終わってたし、ただのおしゃべり会みたいなもんだったから、そこまで気にしなくていいよ。あと、みんなも行ってきていいって言ってくれてたし」
「そうなんですか?」
「みんななりにボクたちのこと気にかけてくれたんじゃん? 気持ちはもらっておこうよ」
「……はい。みなさん、優しくていい人ばかりです」
「ほんと、サイコーなヤツらだよね!」

その『サイコーなヤツら』に後押しをされたのだ。彼らの期待に応えなければ。
ピーニャはこほんと咳払いをして、チクマに問いかける。

「チクマくんはさ」
「はい」
「ハグとかキスとか、してみたい?」
「!」

目を丸くしたチクマは一気に赤くなる。それが夕陽のせいではないことはピーニャが一番わかっていた。自分も同じだったからだ。身体中の熱が沸騰しているかと勘違いしそうになる。
チクマは何度かまつげを震わせ、しばらくしてくちびるを動かした。

「ピーニャくんが」
「ボクが?」
「ピーニャくんが、私でいいと思ってくれるなら……」
「そ、そんなの……!」

当たり前じゃん! と叫びだすのをなんとか堪える。
チクマでなくてはいやだ。チクマとだから、手も繋ぎたいしハグだってしたい。叶うことならキスだって。でも同時にすごく大切にもしたいのだ。チクマが嫌ならしたくない。チクマのことが好きだから。自分の一番の全部はチクマで埋めたいのだ。――埋めてもらいたいとも、思うけど。

チクマは恋人の想いを聞いて「あのね」と一歩ピーニャに近づいた。わずかに肩がふれる。

「ピーニャくんがそうやって私のことを大切にしてくれるの嬉しいです」
「チクマくん……」
「でも、まだドキドキが止まらないから、ハグやキスはもう少し先でもいいですか? 代わりと言ってはなんですけど、手、繋ぎたいです」
「も、もちろん!」

そっと二人の指先が絡み、結ばれる。てのひらから伝わる熱は、いつも以上に愛おしい。

「ピーニャくんのこと、好きです」
「ボクもチクマくんのこと、好きだよ」
「私のほうがずーっともーっと好きですもん」
「ボクのほうがその何倍も好きだよ。絶対に」

二人の他愛のない、ふざけた言い合いはゾロアが勝手にボールから飛び出るまで続いた。
それでも繋がれた手は離れることはなく、チクマの家が見えるまで、お互いの熱をわかちあうのだった。



BPM:60〜70
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